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38.ジルバード
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俺、ジルバード・ベルンシアが産まれたのは、
兄上のヒューレッド・ベルンシアが12歳の時だった。
兄上はリガーレ国の王女である王妃から生まれたが、
王妃はその時にはもうすでに正気を無くしていた。
数年後それに気が付いたリガーレ国から刺客が送り込まれるようになった。
王妃が国を乗っ取れないのであれば、他の王族をすべて殺して、
第一王子を傀儡に育てるつもりだったようだ。
実際には祈りの塔によって王妃は無害化され、
送り込まれた刺客もすべて始末された。
一見ベルンシアには被害が無いように思われるが、
王妃が何もできないまま10年が過ぎ、
国王が王妃の仕事を代理するにも限界が来ていた。
その王妃の代わりを務めるために選ばれたのが、
ジルバードを産んだ側妃ミレーニアだ。
侯爵家の二女で当時17歳だった。
金色の髪と碧眼が愛らしく、誰からも求められるような容姿だったが、
結婚するよりも騎士になることを目指していた令嬢だった。
選ばれた時も、自分に側妃は務まらないと固辞していたらしい。
それでも侯爵家の当主は議会の決定に逆らえず、
ミレーニアは18歳になるのを待って側妃として娶られた。
王妃の仕事をするための形だけの側妃になるのかと思われたが、
初夜の儀で身ごもりジルバードを産んでいる。
その後のミレーニアは王妃の代理として側妃を務め、30歳の若さで亡くなった。
11歳の息子、ジルバードとはほとんど会うことも無かった。
当時のことを知るのはハンスくらいだった。
国王になることが決まってから、当時の国王の話も聞くことになった。
忌まわしき王家の呪いともいう話と共に。
先代国王には心というものが存在しなかった。
ベルンシア国の王族としては、そうめずらしいことではないらしい。
心を持つものは、生涯一人だけを娶り、
心を持たないものは議会によって娶る相手が決められる。
先々代も心を持たないものだった。
そのため誰も求めなかったが、議会がそれを心配して後宮を作っている。
薬を使わなければ妃を抱くことすらなかったようだ。
先代国王も、薬を使って初夜の儀を行っていた。
王妃、側妃どちらも閨を共にしたのは、初夜の儀だけだったそうだ。
初夜の儀だけはごまかしがきかないので、仕方なく薬を使ったと聞いた。
兄上は心を持つものだ。
だから、王妃と愛し合い、王妃以外は薬を使っても無理だった。
俺は、心を持たないものだと思われていた。
何の感情も無い薬を使った初夜の儀は、母上にとって屈辱だったのだろう。
俺を産んだ後は乳母と女官に任せたまま、顔を見ることも無かった。
思い出すのが苦痛だったのか、父上とも公務以外は会わなかったらしい。
普通の子どもなら、母上を求めて泣いたのだろう。
だけど、俺は心を持たない。
泣くこともなく、母上のことを聞くこともなく育った。
15歳になって閨教育が始まったが、俺は相変わらず女に興味が無かった。
女にというか、すべてに対して興味が無かった。
王子教育されたことは頭に入っているし、礼儀作法や剣技も問題なかった。
ただ無気力で、自分から何かをすることは無かった。
閨教育が始まった最初の日、
いつもより長く湯あみをさせられたと思ったら、甘苦い薬を飲まされた。
身体が熱くて、皮膚の感覚が鋭くなったような状態だった。
その先はすべてが不快だった。
寝台に寝かされたと思ったら、女官が裸になって乗り上げてきた。
身体のあちこちを舐め回され、下半身をつかまれたが反応しなかった。
2刻ほど我慢したが、さすがに嫌になって女官に去るように言った。
その後、ハンスがやってきて、あれこれ聞かれたが眠くて仕方なかった。
兄上のヒューレッド・ベルンシアが12歳の時だった。
兄上はリガーレ国の王女である王妃から生まれたが、
王妃はその時にはもうすでに正気を無くしていた。
数年後それに気が付いたリガーレ国から刺客が送り込まれるようになった。
王妃が国を乗っ取れないのであれば、他の王族をすべて殺して、
第一王子を傀儡に育てるつもりだったようだ。
実際には祈りの塔によって王妃は無害化され、
送り込まれた刺客もすべて始末された。
一見ベルンシアには被害が無いように思われるが、
王妃が何もできないまま10年が過ぎ、
国王が王妃の仕事を代理するにも限界が来ていた。
その王妃の代わりを務めるために選ばれたのが、
ジルバードを産んだ側妃ミレーニアだ。
侯爵家の二女で当時17歳だった。
金色の髪と碧眼が愛らしく、誰からも求められるような容姿だったが、
結婚するよりも騎士になることを目指していた令嬢だった。
選ばれた時も、自分に側妃は務まらないと固辞していたらしい。
それでも侯爵家の当主は議会の決定に逆らえず、
ミレーニアは18歳になるのを待って側妃として娶られた。
王妃の仕事をするための形だけの側妃になるのかと思われたが、
初夜の儀で身ごもりジルバードを産んでいる。
その後のミレーニアは王妃の代理として側妃を務め、30歳の若さで亡くなった。
11歳の息子、ジルバードとはほとんど会うことも無かった。
当時のことを知るのはハンスくらいだった。
国王になることが決まってから、当時の国王の話も聞くことになった。
忌まわしき王家の呪いともいう話と共に。
先代国王には心というものが存在しなかった。
ベルンシア国の王族としては、そうめずらしいことではないらしい。
心を持つものは、生涯一人だけを娶り、
心を持たないものは議会によって娶る相手が決められる。
先々代も心を持たないものだった。
そのため誰も求めなかったが、議会がそれを心配して後宮を作っている。
薬を使わなければ妃を抱くことすらなかったようだ。
先代国王も、薬を使って初夜の儀を行っていた。
王妃、側妃どちらも閨を共にしたのは、初夜の儀だけだったそうだ。
初夜の儀だけはごまかしがきかないので、仕方なく薬を使ったと聞いた。
兄上は心を持つものだ。
だから、王妃と愛し合い、王妃以外は薬を使っても無理だった。
俺は、心を持たないものだと思われていた。
何の感情も無い薬を使った初夜の儀は、母上にとって屈辱だったのだろう。
俺を産んだ後は乳母と女官に任せたまま、顔を見ることも無かった。
思い出すのが苦痛だったのか、父上とも公務以外は会わなかったらしい。
普通の子どもなら、母上を求めて泣いたのだろう。
だけど、俺は心を持たない。
泣くこともなく、母上のことを聞くこともなく育った。
15歳になって閨教育が始まったが、俺は相変わらず女に興味が無かった。
女にというか、すべてに対して興味が無かった。
王子教育されたことは頭に入っているし、礼儀作法や剣技も問題なかった。
ただ無気力で、自分から何かをすることは無かった。
閨教育が始まった最初の日、
いつもより長く湯あみをさせられたと思ったら、甘苦い薬を飲まされた。
身体が熱くて、皮膚の感覚が鋭くなったような状態だった。
その先はすべてが不快だった。
寝台に寝かされたと思ったら、女官が裸になって乗り上げてきた。
身体のあちこちを舐め回され、下半身をつかまれたが反応しなかった。
2刻ほど我慢したが、さすがに嫌になって女官に去るように言った。
その後、ハンスがやってきて、あれこれ聞かれたが眠くて仕方なかった。
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