14 / 42
14.新しい部屋
しおりを挟む
新しい部屋はジルの私室の隣の部屋だった。
王弟妃の部屋だから、当然ではあるけれど。
以前は王弟も側妃をもてたらしいが、お父様が国王の側妃を廃止するのと同時に、
王族の側妃もすべて廃止している。
そのため、本来は王弟の私室の両隣は妃の部屋だった。
改築していたのは、側妃の部屋を無くして、執務室を作ったらしい。
「どうして執務室?」
「ここで仕事するから。ルヴィもね。
国王の宮は、今の宮とこの宮と交互に使用することになっている。
今の宮は兄上が使っているから、
俺が国王になる時はこの宮が王の宮に変わるんだ。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「兄上が国王になった時は、ルヴィは産まれてすぐだったからね。
覚えていなくても仕方ないよ。
謁見室と宰相室は別に作るとして、ここは俺だけの執務室なんだ。
あまり大きな執務室はいらないから、私室の横に作った。
これなら何かあればすぐにルヴィの所に行けるからね。」
「そうじゃないでしょ?
何かあってもすぐ対応できるから、私室の横に作ったんでしょう?」
「もちろん、それもあるよ。ルヴィは王政をよく理解してるね。」
そんなことはない。だって、お父様は王政に関わらせてくれなかったもの。
今思えば、私を女王にする気が無いから、
誰と結婚してもいいようにしてくれたんだろう。
王政に関われば、たとえば他国に嫁がせることはできなくなる。
…そういうことなんだ。私が他国に嫁ぐ可能性はあったんだ。
「お父様は、私をどうするつもりだったのかしら。」
思わず言葉がこぼれてしまっていた。
はっと気が付いて口を押えたけど、ジルには聞こえていたようだ。
ジルのことだから、私が何を考えていたのかなんて、すぐわかるだろう。
「ルヴィ、この机はルヴィのだよ。」
本棚に囲まれているような執務室の中、
ジルの机に向き合うように置いてある、ジルの机よりも一回り小さい机。
宰相の机だと思っていたけど、私の?
「私の机?」
「そう。学園の休みは俺と一緒にって、約束したよね?」
確かに約束した。隣国の留学生に休日関わらないで済むようにって。
「うん。じゃあ、ここで王妃になる勉強するの?」
「ルヴィの家庭教師に聞いたけど、もうほとんどやることないって。
俺がいない間もちゃんと頑張っていたんだね。」
「…令嬢としての勉強しかさせられていないわ。」
「うん、それが王妃の勉強だったみたいだよ。
9歳から家庭教師が何人もついていただろう?」
「え!そうなの?私、何も聞いてないわ。」
「ちょっと座って、ゆっくり話そうか。こっちにおいで。」
王弟妃の部屋だから、当然ではあるけれど。
以前は王弟も側妃をもてたらしいが、お父様が国王の側妃を廃止するのと同時に、
王族の側妃もすべて廃止している。
そのため、本来は王弟の私室の両隣は妃の部屋だった。
改築していたのは、側妃の部屋を無くして、執務室を作ったらしい。
「どうして執務室?」
「ここで仕事するから。ルヴィもね。
国王の宮は、今の宮とこの宮と交互に使用することになっている。
今の宮は兄上が使っているから、
俺が国王になる時はこの宮が王の宮に変わるんだ。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「兄上が国王になった時は、ルヴィは産まれてすぐだったからね。
覚えていなくても仕方ないよ。
謁見室と宰相室は別に作るとして、ここは俺だけの執務室なんだ。
あまり大きな執務室はいらないから、私室の横に作った。
これなら何かあればすぐにルヴィの所に行けるからね。」
「そうじゃないでしょ?
何かあってもすぐ対応できるから、私室の横に作ったんでしょう?」
「もちろん、それもあるよ。ルヴィは王政をよく理解してるね。」
そんなことはない。だって、お父様は王政に関わらせてくれなかったもの。
今思えば、私を女王にする気が無いから、
誰と結婚してもいいようにしてくれたんだろう。
王政に関われば、たとえば他国に嫁がせることはできなくなる。
…そういうことなんだ。私が他国に嫁ぐ可能性はあったんだ。
「お父様は、私をどうするつもりだったのかしら。」
思わず言葉がこぼれてしまっていた。
はっと気が付いて口を押えたけど、ジルには聞こえていたようだ。
ジルのことだから、私が何を考えていたのかなんて、すぐわかるだろう。
「ルヴィ、この机はルヴィのだよ。」
本棚に囲まれているような執務室の中、
ジルの机に向き合うように置いてある、ジルの机よりも一回り小さい机。
宰相の机だと思っていたけど、私の?
「私の机?」
「そう。学園の休みは俺と一緒にって、約束したよね?」
確かに約束した。隣国の留学生に休日関わらないで済むようにって。
「うん。じゃあ、ここで王妃になる勉強するの?」
「ルヴィの家庭教師に聞いたけど、もうほとんどやることないって。
俺がいない間もちゃんと頑張っていたんだね。」
「…令嬢としての勉強しかさせられていないわ。」
「うん、それが王妃の勉強だったみたいだよ。
9歳から家庭教師が何人もついていただろう?」
「え!そうなの?私、何も聞いてないわ。」
「ちょっと座って、ゆっくり話そうか。こっちにおいで。」
69
お気に入りに追加
1,271
あなたにおすすめの小説
婚約者に好きな人がいると言われました
みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり――――――
🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
侯爵家の令嬢ジェニエル・フィンガルドには、幼い頃から仲の良い婚約者がいた。数多くの候補者の中でも、ジェニエルは頭一つ抜きんでており、王家に忠実な家臣を父に持つ彼女にとって、セオドール第一王子との結婚は約束されたも同然だった。
年齢差がわずか1歳のジェニエルとセオドールは、幼少期には兄妹のように遊び、成長するにつれて周囲の貴族たちが噂するほどの仲睦まじい関係を築いていた。ジェニエルは自分が王妃になることを信じて疑わなかった。
16歳になると、セオドールは本格的な剣術や戦に赴くようになり、頻繁に会っていた日々は次第に減少し、月に一度会うことができれば幸運という状況になった。ジェニエルは彼のためにハンカチに刺繍をしたり、王妃教育に励んだりと、忙しい日々を送るようになった。いつの間にか、お互いに心から笑い合うこともなくなり、それを悲しむよりも、国の未来について真剣に話し合うようになった。
ジェニエルの努力は実り、20歳でついにセオドールと結婚した。彼女は国で一番の美貌を持ち、才知にも優れ、王妃としての役割を果たすべく尽力した。パーティーでは同性の令嬢たちに憧れられ、異性には称賛される存在となった。
そんな決められた式を終えて3年。
国のよき母であり続けようとしていたジェニエルに一つの噂が立ち始める。
――お世継ぎが生まれないのはジェニエル様に問題があるらしい。
水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います
黒木 楓
恋愛
伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。
異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。
そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。
「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」
そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。
これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです
天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。
魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。
薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。
それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる