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30.この国の未来のために
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何が起きたのか理解できなくて、身体の震えが止まらない。
どうしてフランツ様は私の手にふれられたの。
弾いたはずなのに、そんな様子はみじんにも感じられないのはどうして。
「…アンジェ、落ち着いて。
陛下にちゃんと気持ちを伝えるんだ。
無理に結婚させるようなこと、陛下はしない。」
「そうだ。アンジェ、しっかりするんだ。
ジョーゼルと結婚するのだろう?
ここで王妃の策略に負けてどうするんだ。」
抱きしめられたままの状態で、ゼル様とハインツ様の声を聞く。
負けてどうする…そうよ、王妃に負けるのだけは嫌。
大きく息を吸うと、ゼル様の匂いに包まれる。
大丈夫、ゼル様といる未来のためにも頑張れる…。
「ゼル様…落ち着きました。
もう大丈夫です。」
「立てるか?手をつないだままにしようか?」
「…お願いします。」
ゼル様と手をつないだまま、陛下と王妃へと向き直る。
まだ何かフランツ様が言いたそうだったが、陛下に止められている。
「まず確認させてくれ。
アンジェ、フランツは運命の相手なのか?」
「…いいえ。違います。
私の感覚では間違いなく弾いていました。」
「嘘だわ。
だって、手にふれられたじゃない。
あれをどう説明するの?」
私の発言にかぶせてくるように王妃が言う。
どうしてもフランツ様が運命の相手だというつもりなのだろう。
にっこり笑って近づいてくる王妃に、後ろに下がりたくなる。
琥珀色の瞳が細くなるように微笑まれると、背筋が凍り付くように感じる。
ずっと王妃のこの表情が怖かった。
何を言われても黙ってしまいそうになるのが怖かった。
…勇気を振り絞り声を出す。
口が渇いて、声がかすれて、それでも自分の気持ちを伝えようとする。
「…それは、理由はわかりません。
ですが、他の方を弾いた時と同じ感覚がありました。
間違いありません。」
「アンジェ、よく聞きなさい。
この国の貴族として生まれたからには、
国の利益、国民の幸福を第一に考えなくてはいけません。
自分の思うように嫁ぎ先を選べないのは、貴族に生まれたものとして当然、
そうよね?」
「それは…そうです。」
確かにそれはその通りだ。
政略結婚が当たり前の貴族が、嫁ぎ先を嫌がるようなことはあってはならない。
だからこそ、婚約者を大事にしなかったミリア様はあんなにも責められたのだから。
私も貴族に生まれたものとして、公爵令嬢として、
お父様や陛下が王太子妃になれというなら従わなければいけない。
それが…相手がフランツ様だったとしても。
この国のために嫁げと言われたら受け入れなければいけないのは理解している。
それでも…今ここで頷くわけにはいかない。
「じゃあ、問題ないわよね。
フランツと婚約しなさい。」
「それはできません。」
「いい加減にしなさい!
そのようなわがままが通ると思うのですか!
潔く、この婚約を受け入れなさい!」
「嫌です!これは…わがままではありません!」
王妃の怒鳴る声に負けないくらい大きな声で反論すると、
陛下や周りが驚いているのがわかった。
今までこんなに大きな声を出したことは無い。
しかも、王妃へ反論するような真似もしたことがなかった。
さすがに私に言い返されたことが面白くないのか、
王妃がまた何か怒鳴ろうとした時だった。
「やめよ。」
陛下の一声で、王妃も黙って扇子で口元を隠す。
まだ言いたいことがあったという不満を表しているようだ。
どうしてフランツ様は私の手にふれられたの。
弾いたはずなのに、そんな様子はみじんにも感じられないのはどうして。
「…アンジェ、落ち着いて。
陛下にちゃんと気持ちを伝えるんだ。
無理に結婚させるようなこと、陛下はしない。」
「そうだ。アンジェ、しっかりするんだ。
ジョーゼルと結婚するのだろう?
ここで王妃の策略に負けてどうするんだ。」
抱きしめられたままの状態で、ゼル様とハインツ様の声を聞く。
負けてどうする…そうよ、王妃に負けるのだけは嫌。
大きく息を吸うと、ゼル様の匂いに包まれる。
大丈夫、ゼル様といる未来のためにも頑張れる…。
「ゼル様…落ち着きました。
もう大丈夫です。」
「立てるか?手をつないだままにしようか?」
「…お願いします。」
ゼル様と手をつないだまま、陛下と王妃へと向き直る。
まだ何かフランツ様が言いたそうだったが、陛下に止められている。
「まず確認させてくれ。
アンジェ、フランツは運命の相手なのか?」
「…いいえ。違います。
私の感覚では間違いなく弾いていました。」
「嘘だわ。
だって、手にふれられたじゃない。
あれをどう説明するの?」
私の発言にかぶせてくるように王妃が言う。
どうしてもフランツ様が運命の相手だというつもりなのだろう。
にっこり笑って近づいてくる王妃に、後ろに下がりたくなる。
琥珀色の瞳が細くなるように微笑まれると、背筋が凍り付くように感じる。
ずっと王妃のこの表情が怖かった。
何を言われても黙ってしまいそうになるのが怖かった。
…勇気を振り絞り声を出す。
口が渇いて、声がかすれて、それでも自分の気持ちを伝えようとする。
「…それは、理由はわかりません。
ですが、他の方を弾いた時と同じ感覚がありました。
間違いありません。」
「アンジェ、よく聞きなさい。
この国の貴族として生まれたからには、
国の利益、国民の幸福を第一に考えなくてはいけません。
自分の思うように嫁ぎ先を選べないのは、貴族に生まれたものとして当然、
そうよね?」
「それは…そうです。」
確かにそれはその通りだ。
政略結婚が当たり前の貴族が、嫁ぎ先を嫌がるようなことはあってはならない。
だからこそ、婚約者を大事にしなかったミリア様はあんなにも責められたのだから。
私も貴族に生まれたものとして、公爵令嬢として、
お父様や陛下が王太子妃になれというなら従わなければいけない。
それが…相手がフランツ様だったとしても。
この国のために嫁げと言われたら受け入れなければいけないのは理解している。
それでも…今ここで頷くわけにはいかない。
「じゃあ、問題ないわよね。
フランツと婚約しなさい。」
「それはできません。」
「いい加減にしなさい!
そのようなわがままが通ると思うのですか!
潔く、この婚約を受け入れなさい!」
「嫌です!これは…わがままではありません!」
王妃の怒鳴る声に負けないくらい大きな声で反論すると、
陛下や周りが驚いているのがわかった。
今までこんなに大きな声を出したことは無い。
しかも、王妃へ反論するような真似もしたことがなかった。
さすがに私に言い返されたことが面白くないのか、
王妃がまた何か怒鳴ろうとした時だった。
「やめよ。」
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まだ言いたいことがあったという不満を表しているようだ。
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