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59.承諾

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「さてと…こんな朝早くから来るとは…何かな~。
 なんて、だいたいはわかってるけどね。
 ようやく告白できたのかな?ユリアス。」

休み明けの朝に二人で学校長室に訪ねていくと、
優雅に紅茶を飲みながら学校長が待っていた。
特に連絡もしないで訪ねてきているのに、
なぜかこちらの事情はわかっているようだった。

「朝からすみません。
 急いでお願いしたいことがありまして…。
 王弟殿下、いえエバーリング公爵様、
 ロージー・エバーリング様と結婚の許可をいただけますか?」

「…え?報告よりも先に、そっち?」

「…すみません。早く結婚したくて焦ってました。」

「ああ、いい。大丈夫だよ。」

学校長はそう言うと、立ったままの私たちにまず座るように言った。
座ると、学校長はユリアスに一枚の紙を渡している。
それを見たユリアスの動きが止まった。
何だろうと思って、ユリアスの手からその紙をとって読んでみて、驚いた。


「…学校長?これって…。」

「うん、婚姻の届け出の書類。
 二人が署名して届け出れば終わるようになってる。」

婚姻の届け出だったことも驚いたが、もう一つ驚いたのは…

「どうしてお父様の署名まで…。」

もう公爵家の養女になっているはずなのに、学校長の署名だけではなく、
ベルファイン子爵、お父様の署名までしてあった。

「うん、本当は必要ないけれど、子爵だって娘の結婚は見守りたいだろう。
 だから父親の署名欄を一つ増やしてもらったんだ。特別にね。」

「いつ署名を?」

「…怒らないでね?ここでロージーにユリアスを紹介してすぐ、だよ。
 話を聞いたらユリアスは以前からロージーが好きだって言うし、
 ロージーに無理強いするような奴でもない。
 護衛としての腕はこれ以上いないし、ロージーが苦手な高位貴族でもない。
 これは…可能性あるんじゃないかと思って子爵に話したんだ。
 子爵夫妻が喜んでね。ロージーが幸せになれるんじゃないかって。

 ロージーが前世を思い出してから、
 どうしても親子の感覚が薄くなってしまったように思う。
 だが、それでも大事な娘には変わりない。
 ロージーが幸せになってくれるならこれ以上嬉しいことは無い、とね。

 その時に署名して俺に託してくれたんだ。
 子爵領は遠い。署名をもらいに来ると時間がかかるだろうから、
 俺が判断して婚姻させてほしいと。」

「…お父様がそんなことを…」

「それだけ心配していたんだよ。
 急に性格が変わって、高位貴族に見初められたくない、
 卒業後は手に職つけて働くって言い出した娘に。
 貴族令嬢としての幸せはもう望めないと思っていたそうだ。
 だから、二人が結婚するって聞いたら、喜ぶだろうな。
 そのうち長期休みの時にでも会いに行ってあげなさい。」

「はい!」


「で、ユリアスも、手紙くらいは書いてあげなさい。
 伯爵夫人が泣いていたそうだよ。ユリアスを守れなかったって。
 帰るのは難しくても、報告の手紙くらいは出せるだろう?」

「…わかりました。」

「うん、じゃあ、二人とも署名して。
 あぁ、一応ロージーが俺の養女になっているから、
 ユリアスは婿に入ることになるから。
 それでいいね?」

「「はい。」」

「よし。」

二人で署名すると、
学校長はお付きの者に書類を渡して王宮へ届けるように言った。
この書類が王宮で受理されれば、もう私たちは結婚したことになる。

「明日には証明書が届くと思うよ。
 それで、二人には話しておきたいんだ。
 公爵家を継ぐものとして。」

目の前に新しいお茶が出され、人払いがされる。
それを確認して学校長は話し始めた。
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