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47.俺が助けるんだ
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「ロージー!」
湖の中に引きずりこまれたロージーを追って飛び込んだが、
あっという間に引き離された。
どんどん遠くなるロージーに追いつけない。
水が綺麗だから底まで見えて、
ロージーが何か膜のようなものに包まれて底に寝かされているのが見える。
精霊のいたずらか?
だとしたら、ロージーの命や身体は無事なはずだ。
そう思って少しだけほっとしたが、次の瞬間もう一つの心配に気が付いた。
これが精霊のいたずらだとしたら、ロージーを帰してもらえないかもしれない。
精霊とは時間の感覚が違う。
何を考えてロージーをさらったのかはわからない。
だけど、その目的が済むまでは帰してもらえない可能性が高い。
その期間が数日ならまだましだ。数百年ということだってありえる。
ロージーにもう二度と会えない?
そう思ったら、全身の血が凍るように感じた。
嫌だ。そんなのは絶対に嫌だ。
湖面に戻って息を整えて潜り、限界まで行ってまた湖面に戻る。
今まであまり意識せずに使っていた身体強化を限界まで高める。
水の中ではあまり役に立たない風も、湖面から潜る時に後ろから力を加えさせる。
すべての魔力を力にかえて、何度も何度も潜り続ける。
ロージーを包む膜に近付くと、ロージーが俺に手を伸ばしているのが見えた。
俺に助けを求めている?
ロージーが俺の助けを待ってる。あと少し。もう一回。
いや、ロージーを取り戻すために、何度だって。
繰り返し潜って、ようやくロージーまで手が届くと、
最後の力を振り絞ってロージーの腕をつかんで引き上げた。
湖面の上に顔を出したロージーを見たら、もう抑えが聞かなかった。
抱きしめて、ロージーの無事を確認して、
冷え切ってしまったロージーの身体を温めるようにしっかりと抱えて。
水から上がったら、ロージーの薄手のドレスが濡れて透けていて。
身体の線がはっきりと見えてしまって、あわてて風を起こしてドレスを乾かした。
ついでに自分の服も乾かして、今見たのを頭から追い出そうと必死になる。
「ユリアス、認識阻害が切れているわ。いいの?」
「え?」
「…いつもかけてる認識阻害、今は切れてるから素顔になってるわよ?」
何を言われているのか、さっぱりわからなかった。
ロージーに指摘され、話をしているうちにようやく理解できた。
俺、ずっと素顔を見せていなかったんだ。
同じ光属性だし、王家の血を持つ者同士だから、
完全に阻害できていたとは思えないけれど、
それでも素顔ではなかったのだろう。
目の色を初めてみたと言われ、ものすごく恥ずかしくなった。
俺…ロージーの素顔を見れるのは俺だけなんて思って喜んでたのに、
ロージーには素顔を見せもせずに告白しようとしてたのか?
いや、ありえないだろう。
ロージーが気を遣って聞かないでくれてたとしても、
それだけ心に距離があったってことだよな。
もしロージーが俺のことを好きで、独占したいって思ってたなら聞いてたと思う。
そして、自分には素顔を見せてほしいと願ったはずだ。
それが無かったってことは、今俺が告白してもうまくいくはずがない。
綺麗な景色を見て、ゆっくり話して、ロージーに告白するつもりだった。
できれば…婚約を申し込んで、俺のものにしてしまいたかった。
だけど、俺はまだスタート地点にも立っていなかった。
まずは素顔を見せて、俺のことをちゃんと見てもらって、それからだ。
…来週には帰国するというのに。
ようやく始まるところだったなんて。
湖の中に引きずりこまれたロージーを追って飛び込んだが、
あっという間に引き離された。
どんどん遠くなるロージーに追いつけない。
水が綺麗だから底まで見えて、
ロージーが何か膜のようなものに包まれて底に寝かされているのが見える。
精霊のいたずらか?
だとしたら、ロージーの命や身体は無事なはずだ。
そう思って少しだけほっとしたが、次の瞬間もう一つの心配に気が付いた。
これが精霊のいたずらだとしたら、ロージーを帰してもらえないかもしれない。
精霊とは時間の感覚が違う。
何を考えてロージーをさらったのかはわからない。
だけど、その目的が済むまでは帰してもらえない可能性が高い。
その期間が数日ならまだましだ。数百年ということだってありえる。
ロージーにもう二度と会えない?
そう思ったら、全身の血が凍るように感じた。
嫌だ。そんなのは絶対に嫌だ。
湖面に戻って息を整えて潜り、限界まで行ってまた湖面に戻る。
今まであまり意識せずに使っていた身体強化を限界まで高める。
水の中ではあまり役に立たない風も、湖面から潜る時に後ろから力を加えさせる。
すべての魔力を力にかえて、何度も何度も潜り続ける。
ロージーを包む膜に近付くと、ロージーが俺に手を伸ばしているのが見えた。
俺に助けを求めている?
ロージーが俺の助けを待ってる。あと少し。もう一回。
いや、ロージーを取り戻すために、何度だって。
繰り返し潜って、ようやくロージーまで手が届くと、
最後の力を振り絞ってロージーの腕をつかんで引き上げた。
湖面の上に顔を出したロージーを見たら、もう抑えが聞かなかった。
抱きしめて、ロージーの無事を確認して、
冷え切ってしまったロージーの身体を温めるようにしっかりと抱えて。
水から上がったら、ロージーの薄手のドレスが濡れて透けていて。
身体の線がはっきりと見えてしまって、あわてて風を起こしてドレスを乾かした。
ついでに自分の服も乾かして、今見たのを頭から追い出そうと必死になる。
「ユリアス、認識阻害が切れているわ。いいの?」
「え?」
「…いつもかけてる認識阻害、今は切れてるから素顔になってるわよ?」
何を言われているのか、さっぱりわからなかった。
ロージーに指摘され、話をしているうちにようやく理解できた。
俺、ずっと素顔を見せていなかったんだ。
同じ光属性だし、王家の血を持つ者同士だから、
完全に阻害できていたとは思えないけれど、
それでも素顔ではなかったのだろう。
目の色を初めてみたと言われ、ものすごく恥ずかしくなった。
俺…ロージーの素顔を見れるのは俺だけなんて思って喜んでたのに、
ロージーには素顔を見せもせずに告白しようとしてたのか?
いや、ありえないだろう。
ロージーが気を遣って聞かないでくれてたとしても、
それだけ心に距離があったってことだよな。
もしロージーが俺のことを好きで、独占したいって思ってたなら聞いてたと思う。
そして、自分には素顔を見せてほしいと願ったはずだ。
それが無かったってことは、今俺が告白してもうまくいくはずがない。
綺麗な景色を見て、ゆっくり話して、ロージーに告白するつもりだった。
できれば…婚約を申し込んで、俺のものにしてしまいたかった。
だけど、俺はまだスタート地点にも立っていなかった。
まずは素顔を見せて、俺のことをちゃんと見てもらって、それからだ。
…来週には帰国するというのに。
ようやく始まるところだったなんて。
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