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33.騎士団長

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全ての騎士に治癒をかけ終わると、騎士団長から声をかけられた。
お礼にお茶でもというお誘いに、私とユリアスとマリージュ様でお邪魔することにした。

騎士団長室は思ったよりもこじんまりとしていて、
出されたお茶が甘いミルクティだったのも意外だった。

「疲れていると甘いものを飲みたくなるのですよ。
 菓子もありますので、どうぞ。」

添えられた焼き菓子は騎士団長の奥様の手作りだという。
熊のような大男の騎士団長が小さなクッキーをシャクシャク食べているのが面白くて、
ついつい見ていてしまう。
それをマリージュ様に見つかり、笑われてしまった。


「こう見えても騎士団長は愛妻家らしいわ。
 とても可愛い奥様なのよ。ふふふ。」

「いや…お恥ずかしいです。」

騎士団長と奥様の馴れ初めを聞きながら、ゆったりとお茶をしているうちに、
先ほどの出来事を忘れていたことに気が付いた。
王女様に絡まれるって、本当だろうか。

「先ほど、王女様にお会いしましたが、あの方が王女様で間違いないのですよね?」

「ええ。そうよ。」

「王女様…15歳って言ってませんでした?」

「ええ。小柄な上、言動があれなので、15歳には見えませんでしょう?」

「…答えにくいですね。」

12,3歳にしか見えなかったけれど、王女様で間違いなかったのか。
王女様の話題になった途端に顔をしかめたユリアスと、
曇った表情になった騎士団長に、思い切って聞いてみることにした。

「ユリアスが王女様に絡まれているって本当?」

「…そうだ。初日から絡まれたんだ。あれは強烈だった…。
 初対面なのに、待ってたわ、私の騎士、って。」

「は?」

初対面なのに、待ってたっておかしくない?
そう思って騎士団長とマリージュ様をみると、同意するように頷かれた。

「王女様は…ご自分のことを聖女だと思われています。
 そのため、いつか騎士が迎えに来るはずだと、
 小さいころからおっしゃっていました。」

「私もこの国に来た当初は驚いたわ。
 15歳にもなって、このアホは何を言ってるんだろうって。」

「マリージュ様…アホって。」

「だって、アホでしょう。
 どうみても土属性なのに、髪の色をぬいて光属性だって言い張って。
 この国の王族で光属性なんてうまれたら、
 どう考えたって王妃の不貞を疑うでしょうに。
 そんなことも考えないようなアホなのよ?」

「それは確かにそうですね…。
 亡くなられた王妃様が可哀そうです。」

自分の娘が不貞を疑われるようなことを言ってると知ったら泣くだろう。
それを聞いた陛下は何も思わないのだろうか。

「国王陛下はそのことについては?」

「言ったらしいわ。馬鹿なこと言うなって。
 それで大ゲンカして、それ以降は話をしていないそうよ。」

…この国、大丈夫なのかしら。
ああ、そうか。だからマリージュ様を王妃にするのね。
おそらく王子にも王女にもこの国をまかせられないのだろう。

「ユリアス、今日は何を言われたの?」

「いいかげん偽聖女は国に帰して、自分の専属騎士になれと。」

「…なるほど。私も帰れって言われたわ。」

「演習場に来るとまた王女と会うことになると思うけど、大丈夫?
 毎回のように押しかけてきて、命令されるけど、俺は全部無視してる。
 その分、ロージーに何か言いに行きそうで怖いんだけど。」

確かにその可能性は高いと思う。
ユリアスに相手にされなければ、私に文句を言いに来るだろう。
あんな王女様だとは言え、一応は他国の王族。失礼なことを言うわけにもいかない。
さぁ、どうしようか。

「私とお茶をした後だから、演習場までは私が一緒についてくるわ。
 その後は騎士団から騎士をつけてくれる?
 いくらなんでも毎回ロージーだけで治癒かけて歩くのは大変よ。
 二人くらいは当番制にして残して、
 治癒補佐としてロージーの手伝いをするように。」

「わかりました。明日以降はそういたします。」



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