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25.騎士の仕事

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「…逆に父上に殴られたよ。役立たずめと言われて。
 これも騎士としての仕事だと。

 俺にはどうしてもそう思えなかった。
 嫌がって泣いている女性を手籠めにして孕ませるのが騎士の仕事?
 そんなわけないだろうと思った。

 結局、俺は謹慎するように言われ、へき地には2番目の兄上が向かったよ。
 その女性は身ごもって男の子を生んだそうだ。」

「…それは、お兄様のお子ということ?」

「そのようだな。
 後から兄上に言われたよ。めずらしいことじゃないって。
 騎士の血が欲しい家はいくらでもある。そんなもんだって。

 俺にはどうしても納得できなかった。
 騎士が汚されたような気がしていた。

 その後すぐにキャロル嬢との婚約話が王命で来て、
 侯爵家を継ぐ俺が子種をばらまくことは許されていないって言われて、
 そういう派遣の仕事は来なくなったけどな。」

「もしかして…婚約解消した後、
 ハンドウイル家に戻らなかったのはそういうこと?」

「それもある。戻ったら、そういう仕事をさせられるだろうと思ったし、
 もう騎士という仕事に嫌気がさしてしまったんだ。
 守っていた王子はあれだし。

 魔術師になろうと思ったのは、学校長に誘われていたんだ。
 何かあれば手を貸すって言ってくれていて。
 騎士を辞めるなら、魔術師を目指してみようと思ったから。」

「そうだったのね。
 ユリアスの魔力はとても綺麗で…魔術の覚えも早いわ。
 ハンドウイル家じゃなかったら、もっと幼いころから頭角を現していたと思う。」

「…多分、ハンドウイル家にざまあみろと思ってるせいもあると思う。
 あいつらが否定している魔術師に俺がなったら口惜しがるだろうなって。」

「ふふふ。そう言う理由でも良いと思うわ。
 魔術師になった時には見返してやりましょうね。」


話が終わる頃にはスープが出来上がって、ハーブのいい匂いがしている。
かき混ぜてみると少しとろっとしていて、出来上がったのが分かる。
木の器にもってユリアスに出すと、うれしそうに笑った。


「ロージーの手料理初めてだ。」

「えっ!そういえばそうだわ!
 …あまり美味しくないと思うけど。」

「いや、美味しいよ。すごく美味しい。」

「そう?」

なんてことないスープ。野草と干し肉しか入ってないし、味付けもしてない。
そんなものが美味しいかしらと思ったけど、暗闇の中で焚火を囲んで、二人だけで食べるスープは確かに美味しく感じた。
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