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18.夜会に行く準備
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待ち望んでいないのに、一日一日と時間は過ぎていき、夜会の日になってしまっていた。
着ていくドレスは卒業を祝うパーティと同じ乳白色のドレスだった。ここ数年の人気の色で、形もよくあるもの、夜会に参加している令嬢が良く着ているようなものだった。
目立たないような化粧をし、眼鏡をかけ、髪の色をくすませる腕輪をつける。
その状態で学校長室に入ると、すぐさま注意を受けた。
「あぁ、その腕輪は無理だね。
姿を変える類の魔術具は夜会には持ち込めないことになっている。
身分を誤魔化されたり、偽られると困るからね。」
そう言われると確かにその通りで、陛下が主催の夜会で姿を偽るのは無礼に当たると思いあたった。
だがしかし、認識阻害の魔術や、目の色を見せない眼鏡はかまわないのだろうか?
「わかりました。腕輪は外します。
でも、眼鏡はこのままでいいのですか?」
「その眼鏡は厳密には魔術具ではないだろう。
入り口の検査で引っかからなければいいんだ。
俺が今からかける認識阻害の魔術も、俺の魔力だから検知されない。
王族の魔力は制限がかからないようになっているから。
だから、俺がかけるっていったのだけどね?
おそらく認識阻害の魔術だけなら、ユリアスでも使えるよ。
ユリアスは王宮に慣れているから、
俺がかけるって言った意味をわかってると思うけど。」
「そうなのですね。
王宮へはほとんど行きませんので、わかりませんでした。
参加した夜会も王族が参加していないものでしたし。
王妃様のお茶会の際には検査もありませんでしたから。」
「本来はお茶会でも検査するのだけどね。
それだけ王妃は法を無視してるってことでもある。」
そう言うと学校長は深くため息をついた。王妃とは仲が良くないと聞いたことがあるが、それは本当らしい。いつもの学校長は銀色の髪で青目だが、本来は金色の髪で光属性なのを知っている。同じ属性の者同士はなんとなく感じ取れるので、最初に会った時から学校長が変化しているのに気が付いていた。それは学校長も同じで、変化しているロージーに気が付いて話しかけてきたのだった。
それが今日は見慣れない金色の髪の姿で礼服を着ている。さすがに陛下主催の夜会に出る際には本来の髪の色に戻すらしい。こうしてみると確かに王族であるのがわかる。いつも髪色を銀色にしているのは、陛下が銀色であるかららしいが、その理由までは知らないでいる。
「失礼します。」
同じように準備を整えてきたユリアスが学校長室に入ってきた。正式な騎士服を身にまとったユリアスの髪色もまた金色も戻っている。なるほど。こちらもまた色を本来の色に戻しているらしい。学校長と並んだユリアスを見て、なにか違和感があった。長身で鍛えているユリアスと違って細身の学校長ではあるが、顔つきが似ている。親子と言われてもおかしくないほどに。
じろじろと見ているのに気が付かれたようで、学校長に面白そうに聞かれる。
「ロージーは思ってることが意外と顔に出るよね。
俺とユリアスが似てるなーとか思ってるんだろう?」
「ええっ。顔に出てます?
そんなはずはないんですけど…。
はい、似てるなと思ってました。」
王太子妃教育のせいで顔に出ることは無いはずなのだけど…?でも、王弟殿下だし、普通の貴族と違ってごまかされにくいのかもしれないと思った。
「俺とユリアス、というかロージーも似てるんだよ。
知らなかっただろうけど、光属性って言うのは王家の血をひいてる証でもあるんだ。
ユリアスやロージーは直接王族から生まれていないけれどね。
まぁ先祖返りみたいなものだ。
光属性の場合だけ結婚に身分が必要ないって言うのは、そういうことなんだ。
散らばった王家の血をまた王族の近くに集めるためにそうなっているんだ。」
「王家の血、ですか?」
今の王族で光属性なのは王弟殿下だけだった。そんなことが皆に伝わったら、王弟殿下が陛下になるのがふさわしいとか言い出す貴族が出てくるんじゃないだろうか…。
「今、ロージーが考えた通りだよ。」
え。また考えを読まれた!?
「光属性が王家の血って言うのは、秘密にされている。
これを知っているのは王族と公爵家だけだ。
…ロージーもユリアスも、自分が王家の血だと知っても他に言わないだろう?
でも、知っておかないと利用されてしまうことがありうる。
だから教えたんだ。普段から髪色を隠してる二人なら、大丈夫だと思うけどね。」
「…わかりました。教えてくださってありがとうございます。
今後も人に見られないようにします…。」
うう…光属性ってそういうことだったんだ。
だけど、一つだけ納得できたこともあった。
光属性が清廉な魂って言う話は嘘だったんだ。
今まですごく疑問だった。
私があれほど王族を恨んだり、王太子を奪った令嬢に対してどす黒い感情を持っているのに、どうして光属性なんだろうって思ってた。そんなことは全く関係なかったんだ。
ある意味、今まで以上に気を付けて生活しなければいけなくなったというのに、そのことに気を取られていた。
ユリアスと並んで学校長に認識阻害の魔術をかけてもらうと、王家の馬車に乗せられて王宮へと向かった。さすがに王族用の馬車着き場に乗り入れるわけにはいかないので、学校長とは違う馬車に乗り、ユリアスと共に一般貴族用の馬車着き場へと降りた。
着ていくドレスは卒業を祝うパーティと同じ乳白色のドレスだった。ここ数年の人気の色で、形もよくあるもの、夜会に参加している令嬢が良く着ているようなものだった。
目立たないような化粧をし、眼鏡をかけ、髪の色をくすませる腕輪をつける。
その状態で学校長室に入ると、すぐさま注意を受けた。
「あぁ、その腕輪は無理だね。
姿を変える類の魔術具は夜会には持ち込めないことになっている。
身分を誤魔化されたり、偽られると困るからね。」
そう言われると確かにその通りで、陛下が主催の夜会で姿を偽るのは無礼に当たると思いあたった。
だがしかし、認識阻害の魔術や、目の色を見せない眼鏡はかまわないのだろうか?
「わかりました。腕輪は外します。
でも、眼鏡はこのままでいいのですか?」
「その眼鏡は厳密には魔術具ではないだろう。
入り口の検査で引っかからなければいいんだ。
俺が今からかける認識阻害の魔術も、俺の魔力だから検知されない。
王族の魔力は制限がかからないようになっているから。
だから、俺がかけるっていったのだけどね?
おそらく認識阻害の魔術だけなら、ユリアスでも使えるよ。
ユリアスは王宮に慣れているから、
俺がかけるって言った意味をわかってると思うけど。」
「そうなのですね。
王宮へはほとんど行きませんので、わかりませんでした。
参加した夜会も王族が参加していないものでしたし。
王妃様のお茶会の際には検査もありませんでしたから。」
「本来はお茶会でも検査するのだけどね。
それだけ王妃は法を無視してるってことでもある。」
そう言うと学校長は深くため息をついた。王妃とは仲が良くないと聞いたことがあるが、それは本当らしい。いつもの学校長は銀色の髪で青目だが、本来は金色の髪で光属性なのを知っている。同じ属性の者同士はなんとなく感じ取れるので、最初に会った時から学校長が変化しているのに気が付いていた。それは学校長も同じで、変化しているロージーに気が付いて話しかけてきたのだった。
それが今日は見慣れない金色の髪の姿で礼服を着ている。さすがに陛下主催の夜会に出る際には本来の髪の色に戻すらしい。こうしてみると確かに王族であるのがわかる。いつも髪色を銀色にしているのは、陛下が銀色であるかららしいが、その理由までは知らないでいる。
「失礼します。」
同じように準備を整えてきたユリアスが学校長室に入ってきた。正式な騎士服を身にまとったユリアスの髪色もまた金色も戻っている。なるほど。こちらもまた色を本来の色に戻しているらしい。学校長と並んだユリアスを見て、なにか違和感があった。長身で鍛えているユリアスと違って細身の学校長ではあるが、顔つきが似ている。親子と言われてもおかしくないほどに。
じろじろと見ているのに気が付かれたようで、学校長に面白そうに聞かれる。
「ロージーは思ってることが意外と顔に出るよね。
俺とユリアスが似てるなーとか思ってるんだろう?」
「ええっ。顔に出てます?
そんなはずはないんですけど…。
はい、似てるなと思ってました。」
王太子妃教育のせいで顔に出ることは無いはずなのだけど…?でも、王弟殿下だし、普通の貴族と違ってごまかされにくいのかもしれないと思った。
「俺とユリアス、というかロージーも似てるんだよ。
知らなかっただろうけど、光属性って言うのは王家の血をひいてる証でもあるんだ。
ユリアスやロージーは直接王族から生まれていないけれどね。
まぁ先祖返りみたいなものだ。
光属性の場合だけ結婚に身分が必要ないって言うのは、そういうことなんだ。
散らばった王家の血をまた王族の近くに集めるためにそうなっているんだ。」
「王家の血、ですか?」
今の王族で光属性なのは王弟殿下だけだった。そんなことが皆に伝わったら、王弟殿下が陛下になるのがふさわしいとか言い出す貴族が出てくるんじゃないだろうか…。
「今、ロージーが考えた通りだよ。」
え。また考えを読まれた!?
「光属性が王家の血って言うのは、秘密にされている。
これを知っているのは王族と公爵家だけだ。
…ロージーもユリアスも、自分が王家の血だと知っても他に言わないだろう?
でも、知っておかないと利用されてしまうことがありうる。
だから教えたんだ。普段から髪色を隠してる二人なら、大丈夫だと思うけどね。」
「…わかりました。教えてくださってありがとうございます。
今後も人に見られないようにします…。」
うう…光属性ってそういうことだったんだ。
だけど、一つだけ納得できたこともあった。
光属性が清廉な魂って言う話は嘘だったんだ。
今まですごく疑問だった。
私があれほど王族を恨んだり、王太子を奪った令嬢に対してどす黒い感情を持っているのに、どうして光属性なんだろうって思ってた。そんなことは全く関係なかったんだ。
ある意味、今まで以上に気を付けて生活しなければいけなくなったというのに、そのことに気を取られていた。
ユリアスと並んで学校長に認識阻害の魔術をかけてもらうと、王家の馬車に乗せられて王宮へと向かった。さすがに王族用の馬車着き場に乗り入れるわけにはいかないので、学校長とは違う馬車に乗り、ユリアスと共に一般貴族用の馬車着き場へと降りた。
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