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「ううん、違う。王族に振り回されて婚約破棄された仲間。」
「は?」
これはもうきちんと話しておかないと誤解されるだけだと思って、前世持ちだということ、前世であった出来事、だから高位貴族と関わらないように生きてきたことを話した。
話が進むにつれて、ユリアスの顔がどんどん歪んでいく。
最後にこの姿を隠していた理由まですべて話すと、ユリアスは大きなため息をついた。
「悪かった。前世持ちの話は知っている。
たまに思い出した記憶が辛すぎて、
それまでとは違う人格になってしまう者がいるというのも。
ロージーが生き方を変えたというなら、
それほどまでに前世の記憶が辛かったということだろう。
無理に話させてしまったようですまない。」
「ううん、いいの。
ずっと生活していく中でバレてしまうのはわかっていたし、
話さなきゃいけないとは思ってたの。
だけど暗い話でしょう?言い出しにくくって。
話してしまってすっきりしたわ。」
「それならいいけど。」
「本当はここで働くときにはこの姿に戻る予定だったの。
だけど、あの婚約破棄を見てしまったら怖くなって。
王族が結婚して落ち着くまではおとなしくしていようと思ったの。
心配し過ぎだとはわかっているんだけどね。」
「いや、心配し過ぎじゃない。
姿を偽ってたのは正解だよ。
その姿で学園にいたら、間違いなく揉め事に巻き込まれていただろう。
しかも子爵家では誘われても断りにくいだろうしな。」
「そうなのよね。子爵家では何も歯向かえないわ。」
会話の途中だったけど、食事が届いて、ユリアスが受け取りに行ってくれる。
私が受け取ろうとしたら、この姿で人に会うのはまずいと止められてしまった。
受け取った食事をテーブルに並べて席に着く。
今日はスープにサラダに鳥を焼いたものにバゲットがついていた。
いつも美味しいけど、今日のは格別に美味しそうに見える。
食べているとユリアスが思い出したように話し始めた。
「俺、ロージーのことは学園時代から知っていたんだ。」
「え?どうして?目立たないようにしていたでしょう?」
「普段はね。」
「ん?」
「俺が魔術の授業の間、剣技の授業に振り替えられてたの知ってるだろう?
魔術演習場の奥にある個人演習場を借りて受けていたんだ。
いつも授業受けた後にシャワー浴びて着替えてから戻るんだけど、
その時に魔術演習場の横を通るんだ。
もう遅いから残ってる人なんて普通はいないはずなんだけど、
ロージーが残って練習しているのを何度か見た。」
「えー見られていたの?恥ずかしい。
家ではなかなか練習できないから、残って練習していたの。」
「うん、それはいいんだけど、誰も見ていないと思ってただろう?
そうするとロージーの所作が恐ろしく綺麗なんだ。
いつもはわざと汚く大雑把に動こうとしてなかったか?」
「うん。子爵家令嬢の所作が公爵家令嬢みたいじゃおかしいでしょう?」
「学園にはマリージュ様以外の公爵家の令嬢はいないはずだし、
王女でもないし他国からの留学生でもない。調べたら子爵家の令嬢だった。
どうして子爵家の令嬢が誰も見ていない時だけ優雅に歩くのか。
ずっと不思議だったのが、これで疑問が解けたよ。
ここでの食事のマナーも、どんどん綺麗になっていくのも。
普通は慣れてくると雑になっていくものだけど、ロージーは逆だ。
今ならわかるよ。気を抜くと綺麗になっちゃうんだろう?」
「そうなの…わかっているからあまり人前では食事しないようにしているの。
前世の礼儀作法の先生が厳しくて。公爵令嬢な上に王子妃教育もあったでしょう?
もう骨の髄まで浸み込んじゃっているというか…直せないのよ。」
「…普通は逆なんだろうけど、それはそれで大変だったな。
俺はもう事情が分かったから楽にしていいぞ。
気を遣ってたら美味しくないだろう。」
「うん、ありがとう。
だからかな。今日のご飯がとっても美味しいの!」
そうか。気が楽になったから、食事が美味しいんだ。
ずっと一緒に生活しているのに、気を遣って生活していた。
もうユリアスに隠さなくていいと思うと、重い荷物を降ろせたような気がした。
「もっと早くに聞いていればよかったな。」
「私も早く話しておけば良かった。これからは居住区ではこの姿でいるわ。
この姿のロージーもよろしくね?」
「ああ、こちらこそ。」
にっこり笑ってくれるユリアスも、
学園時代の表情が変わらない鬼騎士だった時とは全く違う。
こんなに表情豊かな人だったんだなって思う。
ユリアスを縛っていたものがフレッド様なのか家なのかわからないけど、
そこから抜け出せたのなら良かったなと思う。
「は?」
これはもうきちんと話しておかないと誤解されるだけだと思って、前世持ちだということ、前世であった出来事、だから高位貴族と関わらないように生きてきたことを話した。
話が進むにつれて、ユリアスの顔がどんどん歪んでいく。
最後にこの姿を隠していた理由まですべて話すと、ユリアスは大きなため息をついた。
「悪かった。前世持ちの話は知っている。
たまに思い出した記憶が辛すぎて、
それまでとは違う人格になってしまう者がいるというのも。
ロージーが生き方を変えたというなら、
それほどまでに前世の記憶が辛かったということだろう。
無理に話させてしまったようですまない。」
「ううん、いいの。
ずっと生活していく中でバレてしまうのはわかっていたし、
話さなきゃいけないとは思ってたの。
だけど暗い話でしょう?言い出しにくくって。
話してしまってすっきりしたわ。」
「それならいいけど。」
「本当はここで働くときにはこの姿に戻る予定だったの。
だけど、あの婚約破棄を見てしまったら怖くなって。
王族が結婚して落ち着くまではおとなしくしていようと思ったの。
心配し過ぎだとはわかっているんだけどね。」
「いや、心配し過ぎじゃない。
姿を偽ってたのは正解だよ。
その姿で学園にいたら、間違いなく揉め事に巻き込まれていただろう。
しかも子爵家では誘われても断りにくいだろうしな。」
「そうなのよね。子爵家では何も歯向かえないわ。」
会話の途中だったけど、食事が届いて、ユリアスが受け取りに行ってくれる。
私が受け取ろうとしたら、この姿で人に会うのはまずいと止められてしまった。
受け取った食事をテーブルに並べて席に着く。
今日はスープにサラダに鳥を焼いたものにバゲットがついていた。
いつも美味しいけど、今日のは格別に美味しそうに見える。
食べているとユリアスが思い出したように話し始めた。
「俺、ロージーのことは学園時代から知っていたんだ。」
「え?どうして?目立たないようにしていたでしょう?」
「普段はね。」
「ん?」
「俺が魔術の授業の間、剣技の授業に振り替えられてたの知ってるだろう?
魔術演習場の奥にある個人演習場を借りて受けていたんだ。
いつも授業受けた後にシャワー浴びて着替えてから戻るんだけど、
その時に魔術演習場の横を通るんだ。
もう遅いから残ってる人なんて普通はいないはずなんだけど、
ロージーが残って練習しているのを何度か見た。」
「えー見られていたの?恥ずかしい。
家ではなかなか練習できないから、残って練習していたの。」
「うん、それはいいんだけど、誰も見ていないと思ってただろう?
そうするとロージーの所作が恐ろしく綺麗なんだ。
いつもはわざと汚く大雑把に動こうとしてなかったか?」
「うん。子爵家令嬢の所作が公爵家令嬢みたいじゃおかしいでしょう?」
「学園にはマリージュ様以外の公爵家の令嬢はいないはずだし、
王女でもないし他国からの留学生でもない。調べたら子爵家の令嬢だった。
どうして子爵家の令嬢が誰も見ていない時だけ優雅に歩くのか。
ずっと不思議だったのが、これで疑問が解けたよ。
ここでの食事のマナーも、どんどん綺麗になっていくのも。
普通は慣れてくると雑になっていくものだけど、ロージーは逆だ。
今ならわかるよ。気を抜くと綺麗になっちゃうんだろう?」
「そうなの…わかっているからあまり人前では食事しないようにしているの。
前世の礼儀作法の先生が厳しくて。公爵令嬢な上に王子妃教育もあったでしょう?
もう骨の髄まで浸み込んじゃっているというか…直せないのよ。」
「…普通は逆なんだろうけど、それはそれで大変だったな。
俺はもう事情が分かったから楽にしていいぞ。
気を遣ってたら美味しくないだろう。」
「うん、ありがとう。
だからかな。今日のご飯がとっても美味しいの!」
そうか。気が楽になったから、食事が美味しいんだ。
ずっと一緒に生活しているのに、気を遣って生活していた。
もうユリアスに隠さなくていいと思うと、重い荷物を降ろせたような気がした。
「もっと早くに聞いていればよかったな。」
「私も早く話しておけば良かった。これからは居住区ではこの姿でいるわ。
この姿のロージーもよろしくね?」
「ああ、こちらこそ。」
にっこり笑ってくれるユリアスも、
学園時代の表情が変わらない鬼騎士だった時とは全く違う。
こんなに表情豊かな人だったんだなって思う。
ユリアスを縛っていたものがフレッド様なのか家なのかわからないけど、
そこから抜け出せたのなら良かったなと思う。
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