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37.夜会の開始
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広間にはもう王族以外の者は集まっているらしい。
シャハル王子とカミーラの姿はまだ見えない。
もしかしたら途中で入ってくるつもりなのかもしれない。
私はジルと、その後にお義父様とお義母様、
最後に陛下とサハル王子が入場する予定になっている。
緊張するけれど、ジルの婚約者として恥ずかしくないようにしなければ。
「リアちゃん、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。」
後ろからお義母様に声をかけられる。
そんなに緊張しているのがわかるくらいなんだろうか。
「すみません。夜会って緊張してしまうんです。
特に今日はジルとの婚約も発表だと思うと余計に緊張してしまって。」
「大丈夫よ。
そのドレス、リアちゃんだけの特別なドレスだし、よく似合ってるわ。
誰よりも綺麗なリアちゃんを見せびらかしたくて仕方ないの。ふふっ。
みんなに自慢しましょうね。」
にっこりそう言ってくれるお義母様も今日は地味なドレスではなく、
あでやかな赤紫色のドレスだった。
あまりふんわりとしていないドレスは身体の線がわかるだけ、
お義母様の素晴らしい曲線がはっきり見えて色っぽい。
そのお義母様にお義父様が見惚れてデレデレになっているのがよくわかって、
こんな夫婦に将来なれたらいいななんて思ってしまう。
「そうだよ、リア。そのドレスはリアにしか着こなせないね。
とても綺麗だよ。今日は俺に好きなだけ自慢させてね。」
今日のこのドレスは濃い赤で、胸元と腰にレースで出来た薔薇が咲いている。
胸はレースで隠しているが、背中が大胆に開いており、少し恥ずかしい。
濃い赤は石榴姫だけ、紫色は王族とその妻にしか使えない色だそうだ。
赤と紫、どちらの色にするか迷ったが、
今回はカミーラが紫色のドレスだと聞いたので赤にした。
少しでも揉める原因は減らしておきたい。無駄な努力かもしれないけれど。
ジルのタキシードは灰色っぽい銀色に差し色で赤を入れてもらった。
石榴姫の相手として赤を入れたかったらしい。
そのあたりのルールはよくわからないけど、
私とジルだけっていうのは特別な気がして嬉しかった。
婚約発表をするにあたって、大公家に伝わる首飾りをつけていた。
お義父様たちの婚約発表の時もつけていたそうで、大きな紫水晶が光り輝いている。
大公家の一員として夜会に出るのだと思うと、この重さも嬉しかった。
「ジルがそういう服装になると素敵すぎて…。大丈夫?
ご令嬢方が寄ってきちゃうんじゃない?」
「ふふ。大丈夫だよ。俺には近づけないって行ってるでしょ。
でも妬いてくれたならうれしい。
リアにはいっぱい令息が近づいてくると思うけど、俺が許さないからね。」
「うん。近づけないようにしてね?」
後ろでお義母様がくすくす笑っているのが聞こえて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
でもおかげで緊張していたのがほぐれたきがする。
名前を呼ばれたのが聞こえて、ジルの手を取って歩き出す。
広間に入ると光がまぶしくて、すこしだけ目を細めてしまう。
広間中にいる貴族たちの目が一斉にこちらを向いて驚いているのがわかる。
「ジルアーク様のお隣の方は誰?」
「どうして赤のドレス?他国の姫なのに石榴姫なの?」
少し声の大きい夫人が話すのが聞こえる。
私の身分は思ったよりも知られていなかったようだ。
そのままエスコートされるままに王族席について座る。
ジルの隣に座ると軽い悲鳴が聞こえた。
お義父様とお義母様が入場し、王族席に座る。
最後に陛下と一緒にサハル王子が入場するとざわめきが大きくなった。
今まで療養のために夜会に出席したことのない第一王子。
第二王子と第一王女がいないこともあるが、
いつもとは違う夜会の始まりに貴族たちの会話は止まらなかった。
「静かに。」
陛下が立って夜会の開始を宣言する。
静かにと言われて、ようやく広間が静まり返った。
「本日の夜会は特別な意味を持つ。
まず、第一王子のサハルが回復し、夜会に出席できるほどになった。
学園にも復籍することになるだろう。」
おお、という声が聞こえる。サハル王子の回復は皆が待ち望んでいたのだろう。
喜びの声があちこちから聞こえてきた。
「そして、大公家のジルアークの婚約が決まった。
レミアス国の第一王女、リアージュ王女だ。
リアージュ王女は石榴姫だったエレーナ王女の孫娘で、リアージュ王女も石榴姫だ。
再びカルヴァイン国に石榴姫が戻って、ジルアークと結ばれることになった。
これで両国の友好も深まり、カルヴァイン国はますます発展してくことになるだろう。
今日は祝いの夜会だ。さぁ、乾杯だ!」
「素晴らしい!」
「石榴姫が帰って来た!なんていう喜びだ!」
「魔王様が石榴姫と婚約!なんてお似合いですの!」
もしかしたら受け入れられない令嬢もいるだろうと思ったのに、
聞こえてくる声は祝福の声ばかりだった。
ジャニス王女のようなことも覚悟していたのに、素直に喜ばれてほっとした。
そっと手に手を重ねてきたジルを見ると、微笑んでくれている。
大丈夫だよって笑いかけてくれたのだと気が付いて、私も笑い返す。
カルヴァイン国での初めての夜会は思った以上に歓迎された。
それが王女としてなのか石榴姫としてなのかはわからないけど、
受け入れられたことがただ嬉しかった。
シャハル王子とカミーラの姿はまだ見えない。
もしかしたら途中で入ってくるつもりなのかもしれない。
私はジルと、その後にお義父様とお義母様、
最後に陛下とサハル王子が入場する予定になっている。
緊張するけれど、ジルの婚約者として恥ずかしくないようにしなければ。
「リアちゃん、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。」
後ろからお義母様に声をかけられる。
そんなに緊張しているのがわかるくらいなんだろうか。
「すみません。夜会って緊張してしまうんです。
特に今日はジルとの婚約も発表だと思うと余計に緊張してしまって。」
「大丈夫よ。
そのドレス、リアちゃんだけの特別なドレスだし、よく似合ってるわ。
誰よりも綺麗なリアちゃんを見せびらかしたくて仕方ないの。ふふっ。
みんなに自慢しましょうね。」
にっこりそう言ってくれるお義母様も今日は地味なドレスではなく、
あでやかな赤紫色のドレスだった。
あまりふんわりとしていないドレスは身体の線がわかるだけ、
お義母様の素晴らしい曲線がはっきり見えて色っぽい。
そのお義母様にお義父様が見惚れてデレデレになっているのがよくわかって、
こんな夫婦に将来なれたらいいななんて思ってしまう。
「そうだよ、リア。そのドレスはリアにしか着こなせないね。
とても綺麗だよ。今日は俺に好きなだけ自慢させてね。」
今日のこのドレスは濃い赤で、胸元と腰にレースで出来た薔薇が咲いている。
胸はレースで隠しているが、背中が大胆に開いており、少し恥ずかしい。
濃い赤は石榴姫だけ、紫色は王族とその妻にしか使えない色だそうだ。
赤と紫、どちらの色にするか迷ったが、
今回はカミーラが紫色のドレスだと聞いたので赤にした。
少しでも揉める原因は減らしておきたい。無駄な努力かもしれないけれど。
ジルのタキシードは灰色っぽい銀色に差し色で赤を入れてもらった。
石榴姫の相手として赤を入れたかったらしい。
そのあたりのルールはよくわからないけど、
私とジルだけっていうのは特別な気がして嬉しかった。
婚約発表をするにあたって、大公家に伝わる首飾りをつけていた。
お義父様たちの婚約発表の時もつけていたそうで、大きな紫水晶が光り輝いている。
大公家の一員として夜会に出るのだと思うと、この重さも嬉しかった。
「ジルがそういう服装になると素敵すぎて…。大丈夫?
ご令嬢方が寄ってきちゃうんじゃない?」
「ふふ。大丈夫だよ。俺には近づけないって行ってるでしょ。
でも妬いてくれたならうれしい。
リアにはいっぱい令息が近づいてくると思うけど、俺が許さないからね。」
「うん。近づけないようにしてね?」
後ろでお義母様がくすくす笑っているのが聞こえて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
でもおかげで緊張していたのがほぐれたきがする。
名前を呼ばれたのが聞こえて、ジルの手を取って歩き出す。
広間に入ると光がまぶしくて、すこしだけ目を細めてしまう。
広間中にいる貴族たちの目が一斉にこちらを向いて驚いているのがわかる。
「ジルアーク様のお隣の方は誰?」
「どうして赤のドレス?他国の姫なのに石榴姫なの?」
少し声の大きい夫人が話すのが聞こえる。
私の身分は思ったよりも知られていなかったようだ。
そのままエスコートされるままに王族席について座る。
ジルの隣に座ると軽い悲鳴が聞こえた。
お義父様とお義母様が入場し、王族席に座る。
最後に陛下と一緒にサハル王子が入場するとざわめきが大きくなった。
今まで療養のために夜会に出席したことのない第一王子。
第二王子と第一王女がいないこともあるが、
いつもとは違う夜会の始まりに貴族たちの会話は止まらなかった。
「静かに。」
陛下が立って夜会の開始を宣言する。
静かにと言われて、ようやく広間が静まり返った。
「本日の夜会は特別な意味を持つ。
まず、第一王子のサハルが回復し、夜会に出席できるほどになった。
学園にも復籍することになるだろう。」
おお、という声が聞こえる。サハル王子の回復は皆が待ち望んでいたのだろう。
喜びの声があちこちから聞こえてきた。
「そして、大公家のジルアークの婚約が決まった。
レミアス国の第一王女、リアージュ王女だ。
リアージュ王女は石榴姫だったエレーナ王女の孫娘で、リアージュ王女も石榴姫だ。
再びカルヴァイン国に石榴姫が戻って、ジルアークと結ばれることになった。
これで両国の友好も深まり、カルヴァイン国はますます発展してくことになるだろう。
今日は祝いの夜会だ。さぁ、乾杯だ!」
「素晴らしい!」
「石榴姫が帰って来た!なんていう喜びだ!」
「魔王様が石榴姫と婚約!なんてお似合いですの!」
もしかしたら受け入れられない令嬢もいるだろうと思ったのに、
聞こえてくる声は祝福の声ばかりだった。
ジャニス王女のようなことも覚悟していたのに、素直に喜ばれてほっとした。
そっと手に手を重ねてきたジルを見ると、微笑んでくれている。
大丈夫だよって笑いかけてくれたのだと気が付いて、私も笑い返す。
カルヴァイン国での初めての夜会は思った以上に歓迎された。
それが王女としてなのか石榴姫としてなのかはわからないけど、
受け入れられたことがただ嬉しかった。
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