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22.ジルの初恋
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新しい学年が始まったが、午前中はもう試験が終わっている科目だけだった。
他の者たちへの影響が少なくなるように、授業は必要な時だけ出ていた。
教室の一番隅に座り、誰とも話さずに一日が終わる。
人前ではどうしても眼鏡をかけていなくてはならず、
軽いめまいや頭痛はいつものことだった。
図書館も控室も周りに誰かがいる。ずっと眼鏡をかけているのはさすがに辛かった。
中庭の奥の小屋の裏側。ここなら誰も来ない。
一人になりたい時、眼鏡を外したい時はいつもここに来ていた。
だからその日も芝生の上に座ると眼鏡を外し、本を開いて勉強を始めた。
あまりに集中していたのか、足音に気が付いたのが遅かった。
「えっ?」
「うわっ。」
何かが飛び込んできた。と思ったら、ふわっと座っていた身体が浮いた気がした。
身体が吸い寄せられたみたいに、しがみついてきたものを受け止めていた。
…柔らかい。さっき、軽く頬をかすめたのはなんだ?
「えっ?人がいた?…ご、ごめんなさいっ。怪我してないかしら?」
俺の上に天使がいた。
銀色のふわふわの髪が乱れて、頬は上気して桃色に染まっている。
両目は深い赤で、キラキラと光が反射しているように見えた。
着ている服は学園の制服のようだが、こんな綺麗な令嬢が学園にいたのか?
顔をよく見ようと起き上がろうとしたところで、眼鏡を外していたことに気がついた。
しまった!この令嬢を狂わせたくないのに。
完全に視線を合わせてしまった。
目を手で隠したけど、多分間に合ってない…。なんてことをしてしまったんだ。
「ごめんなさい!目をぶつけたのね?」
「…。」
「大丈夫?治癒できるから、早く見せて!」
…おかしい。普通に話している?
ぼーっとしたり、騒ぎ始めたり、奇声をあげたりしない。
どういうことだ?
「お願い。怪我の状態を確認させて?すぐ治すから。」
確実に視線は合ったのにおかしくならないのなら、この令嬢には魅了眼が効かない?
いや、本当に?もしかして?
そういえば、この令嬢は俺にさわったままだ。
ひざの上に乗っているのに、気持ち悪くないのか、そのままになっている。
俺は一縷の望みをかけて、手を離して令嬢を見つめた。
「あら?怪我しているようには見えないけど、どこか痛む?」
「…平気なのか?」
「え?」
「俺の目を見ても何とも思わないのか?」
「ん?…綺麗な目ね?紫水晶みたいでとても綺麗だと思うわ?」
間違いない。俺の運命の相手だ。探していた人がやっと見つかった。
俺の目を心配そうにのぞき込んでくる姿がいじらしくて、
今すぐ家に連れて帰りたくなった。
遠くから誰かを呼んでいる声がした。
そしたら一瞬で彼女の顔色が変わり、「ひぃ。」と小さな悲鳴が聞こえた。
何かを怖がっている?
「もしかして追われてる?」
確認すると無言でうなずいている。聞こえてくる声から想像すると厄介な相手だな。
「わかった。じっとしていろ。」
中途半端な状態で俺の上に乗っていた彼女を抱き寄せて抱え込む。
外から完全に見えない位置まで連れて、一緒に隠れた。
ここにいればわからないと思うし、万が一見つかっても、
俺が声をかけて追い払えば済む話だ。
「静かにしていて。見つかっても助けるから安心していい。」
身を固くしながらも素直に俺の腕の中でじっとしている彼女を見つめる。
耳が赤いのはこの体勢が恥ずかしいからだろう。
初対面だけど、もう離してあげられそうになかった。
運命の相手に反発していた頃もあった。
自分の運命を勝手に決められるのはごめんだと。
でも、なんだろう。運命だとかもうどうでもよくなった。
守りたい、助けたいだけじゃない。
俺以外に彼女をさわらせたくない。俺だけを見ていてほしい。
シャハルから助けるために婚約話を持ち掛けたけど、
最初から逃がす気なんて無かった。
だけど、リアには運命だからだと思ってほしくない。
俺だから選んでほしい。
運命の相手だってわかった上で思うのはずるいかもしれないけど。
抱きしめて、頭を撫で、髪にキスする。
距離を縮めていくように、心も近づいてほしくて。
お願いだから、運命じゃなく、俺を選んでくれないか?
他の者たちへの影響が少なくなるように、授業は必要な時だけ出ていた。
教室の一番隅に座り、誰とも話さずに一日が終わる。
人前ではどうしても眼鏡をかけていなくてはならず、
軽いめまいや頭痛はいつものことだった。
図書館も控室も周りに誰かがいる。ずっと眼鏡をかけているのはさすがに辛かった。
中庭の奥の小屋の裏側。ここなら誰も来ない。
一人になりたい時、眼鏡を外したい時はいつもここに来ていた。
だからその日も芝生の上に座ると眼鏡を外し、本を開いて勉強を始めた。
あまりに集中していたのか、足音に気が付いたのが遅かった。
「えっ?」
「うわっ。」
何かが飛び込んできた。と思ったら、ふわっと座っていた身体が浮いた気がした。
身体が吸い寄せられたみたいに、しがみついてきたものを受け止めていた。
…柔らかい。さっき、軽く頬をかすめたのはなんだ?
「えっ?人がいた?…ご、ごめんなさいっ。怪我してないかしら?」
俺の上に天使がいた。
銀色のふわふわの髪が乱れて、頬は上気して桃色に染まっている。
両目は深い赤で、キラキラと光が反射しているように見えた。
着ている服は学園の制服のようだが、こんな綺麗な令嬢が学園にいたのか?
顔をよく見ようと起き上がろうとしたところで、眼鏡を外していたことに気がついた。
しまった!この令嬢を狂わせたくないのに。
完全に視線を合わせてしまった。
目を手で隠したけど、多分間に合ってない…。なんてことをしてしまったんだ。
「ごめんなさい!目をぶつけたのね?」
「…。」
「大丈夫?治癒できるから、早く見せて!」
…おかしい。普通に話している?
ぼーっとしたり、騒ぎ始めたり、奇声をあげたりしない。
どういうことだ?
「お願い。怪我の状態を確認させて?すぐ治すから。」
確実に視線は合ったのにおかしくならないのなら、この令嬢には魅了眼が効かない?
いや、本当に?もしかして?
そういえば、この令嬢は俺にさわったままだ。
ひざの上に乗っているのに、気持ち悪くないのか、そのままになっている。
俺は一縷の望みをかけて、手を離して令嬢を見つめた。
「あら?怪我しているようには見えないけど、どこか痛む?」
「…平気なのか?」
「え?」
「俺の目を見ても何とも思わないのか?」
「ん?…綺麗な目ね?紫水晶みたいでとても綺麗だと思うわ?」
間違いない。俺の運命の相手だ。探していた人がやっと見つかった。
俺の目を心配そうにのぞき込んでくる姿がいじらしくて、
今すぐ家に連れて帰りたくなった。
遠くから誰かを呼んでいる声がした。
そしたら一瞬で彼女の顔色が変わり、「ひぃ。」と小さな悲鳴が聞こえた。
何かを怖がっている?
「もしかして追われてる?」
確認すると無言でうなずいている。聞こえてくる声から想像すると厄介な相手だな。
「わかった。じっとしていろ。」
中途半端な状態で俺の上に乗っていた彼女を抱き寄せて抱え込む。
外から完全に見えない位置まで連れて、一緒に隠れた。
ここにいればわからないと思うし、万が一見つかっても、
俺が声をかけて追い払えば済む話だ。
「静かにしていて。見つかっても助けるから安心していい。」
身を固くしながらも素直に俺の腕の中でじっとしている彼女を見つめる。
耳が赤いのはこの体勢が恥ずかしいからだろう。
初対面だけど、もう離してあげられそうになかった。
運命の相手に反発していた頃もあった。
自分の運命を勝手に決められるのはごめんだと。
でも、なんだろう。運命だとかもうどうでもよくなった。
守りたい、助けたいだけじゃない。
俺以外に彼女をさわらせたくない。俺だけを見ていてほしい。
シャハルから助けるために婚約話を持ち掛けたけど、
最初から逃がす気なんて無かった。
だけど、リアには運命だからだと思ってほしくない。
俺だから選んでほしい。
運命の相手だってわかった上で思うのはずるいかもしれないけど。
抱きしめて、頭を撫で、髪にキスする。
距離を縮めていくように、心も近づいてほしくて。
お願いだから、運命じゃなく、俺を選んでくれないか?
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