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12.義妹

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「どうして、どこにもお義姉さまがいないのよ!」

近くにいた侍女に飲みかけのお茶をカップごとぶつけた。
カップは侍女にぶつかって床に落ちたが、厚めの絨毯の上で割れずに転がっている。
侍女はお茶で濡れた服をそのままカップを拾って、頭を下げて部屋から出た。
閉められた扉にクッキーがならべてあった大皿をぶつけると、
今度は重い音をたてて割れた。
あぁ、何もかもが面白くない。イライラする。

いつもなら義姉への嫌がらせで発散していたのに、ここ何日も義姉が見当たらない。
学園にも屋敷にもいなかった。
義姉への嫌がらせは今に始まったことじゃない。
今更どこかに義姉を避難させたというのだろうか。ありえない。

この私から逃げるなんて許さない。

知っているはずのお義父様やお義兄様は、私の言うことを聞いてくれない側の人間だ。
執事なら知っているだろうか…いや、学園で誰か貴族に探らせたほうが早いか?

言うことを聞いてくれる側の人間を総動員して探したらいいんだわ。
そう思ったら楽しくて楽しくて、
義姉を見つけた後どうしてやるかあれこれ考え始めた。

「獲物が逃げたら追えばいいんだわ。
 追うのも楽しいし、見つけた後のお仕置が楽しみだもの。ふふっ。」



義姉の行き先を見つけたのは、学園で一緒にいる男爵家の令息だった。
商家として有名な彼の家は隣国でも商売をしている。
その商売先であるカルヴァイン国に義姉が留学しているという。
しかも、王太子になるかもしれない王子と婚約したという話だった。

「はぁ?お義姉さまが王太子妃に?
 何それ。じゃあ、将来は王妃になるとでもいうの?」

「このままだとそうなりますね。
 婚約破棄はめったにないでしょうし、その王子はとても優秀だそうですから。」

「…あのお義姉様が王妃になっていいわけ無いでしょう?」

「ですが、もう婚約しているみたいですし…。」

「いいの?お義姉様が王妃になったら、
 あなたたちがやった嫌がらせも罪に問われるかもしれないわよ?」

「えっ。…それは…。」

「お義姉様の婚約なんて絶対に認めないんだから。
 私をカルヴァインまで連れて行きなさい。
 婚約話なんて、今までと同じように潰してしまえばいいのよ。
 そうよ、私が王太子妃になればいいじゃない。
 それならあなたたちが罪に問われることも無いわ。
 ねぇ、わかるでしょう?
 私の可愛いあなたたちが牢に繋がれるのなんて見たくないのよ?」

「…っ。わ、わかりました。
 うちの店がカルヴァインに商品を運ぶ時に、一緒に馬車を出すように手配します。
 少し時間はかかりますが、必ず。」

「ふふっ。わかってくれたのね。」

王太子妃になどさせてなるものですか。
お義姉さまは最後までみじめでいればいいのよ。
カルヴァイン国には興味ないけど、仕方ないわね。
王妃になってあげるわ。
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