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1.逃げた先

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「やだもぅ。まだ追いかけてくる!」

逃げ切れたと思ったのに、まだ遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
はしたないと思いつつ早歩きしていたのを、
周りを見渡して人がいないことを確認して走り出した。
もうすぐ授業が始まる時間だし、中庭の奥へ逃げ込めばもう追ってこないはず。
そう思って中庭の奥へ奥へと逃げ込んだ。

少し大きめの小屋を見つけ、その裏にまわって隠れようと決めた。
いくらなんでも私がそんなところに隠れているとは思われないだろう。
建物の後ろに曲がって裏へ…と思った瞬間、何かにぶつかって転んでしまった。

「えっ?」
「うわっ。」

うわっ?何?どういう状態なの、これ。
気が付いたら、知らない人のひざの上に乗ってしまっている。
正確に言うと押し倒すような形で一緒に倒れこんでしまったようだ。

「えっ?人がいた?…ご、ごめんなさいっ。怪我してないかしら?」

見るとその男性は学生のようだ。同じ学園の制服を着ている。
リアージュが乗っているのにも関わらず、そのまま起き上がろうとしている。
ふと目が合った…と思ったら、ものすごい勢いで目に手を当てている。
え?目がどうかした?もしかして怪我させちゃった?

「ごめんなさい!目をぶつけたのね?」

「…。」

「大丈夫?治癒できるから、早く見せて!」

銀色の長めの前髪を手ですくうようにあげて、目の周りを確認しようとする。
男性がなかなか手を離してくれないから、余計に心配になる。

「お願い。怪我の状態を確認させて?すぐ治すから。」

そう言うと、あきらめたのか手を離してくれた。
目の周りを確認するが、怪我をしているようには見えない。
腫れていないし、血も出ていない。紫色の両目は充血もせず、綺麗な状態だ。

「あら?怪我しているようには見えないけど、どこか痛む?」

「…平気なのか?」

「え?」

「俺の目を見ても何とも思わないのか?」


「ん?…綺麗な目ね?紫水晶みたいでとても綺麗だと思うわ?」

男性の前髪をあげたままだったことに気が付いて、手を離す。
さらさらと銀色の髪が目にかかるが、隙間から見えるのは恐ろしく綺麗な目だった。
ふと気が付いて男性の顔を見ると、
美形を見慣れているリアージュでもかっこいいと思ってしまうほど、
端正な顔立ちをしていた。

その時、遠くからリアージュを呼ぶ声が聞こえて、「ひぃ。」と変な声が出た。
まだ追いかけてくるの?信じられない!
思わず身体を固くしてしまう。

「もしかして追われてる?」

男性が聞いてくるのを無言でうんうん頷く。怖くてもう声も出せなかった。
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