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50.竜族の国との関係

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「本当に最悪な家族ね……ラディ、これで終わらせるの?」

納得いかなかったクレアがラディに怒っている。
ラディはクレアの頬を撫でながらにやりと笑った。

「竜族は全員追い出すって言っただろう。
 税なんて払ったって無駄なんだ」

「どういうこと?」

「あの家族は三人分なら支払えるかもしれない。
 だが、屋敷の使用人はどうなる?」

「あ!」

竜族の貴族なら屋敷に大勢の使用人がいる。
屋敷を維持するのなら、その人数分の税を支払わなくてはいけない。

「どうやったって、払えるわけがない。
 家族三人だけで竜王国に残っても生活していけるわけがない」

「それはそうだわ。貴族が一人で生活できるわけないもの」

「結局、あの金額を払ってまで竜王国に残れるのは、
 五家と分家十二家、その分家の主人と家族くらいだろう。
 分家の分家以下は主人ですら残れない。
 となると、早々にこの国から出ていくはずだ」

「早々に?どうして?」

「竜族の国だってそこまで広いわけじゃない。
 竜王国にいる竜族すべてを受け入れられるわけがない。
 だったら、早い者勝ちだと賢いものは考えるだろう。
 身軽な下の身分の者から先に出ていく」
 
「早い者勝ちか。だから急ぐんだ……」

竜王国から追い出されるとわかっていたら、
これからのことを考える方が建設的かもしれない。
いつまでも今までの地位にしがみついているより、
新しい場所でやり直したほうがいい。

「だが、上にいる者たちは違う。
 しがみついてでも今の地位を捨てたくない。
 竜王国にいる竜族が他の三国を支配していたようなものだからな」

「地位を捨てたくないのはわかるわ。でも、支配って何?」

「私もその辺はわからないわ」

「クレアとリディがわからないのは仕方ない。
 まだ竜王国に来たばかりだからな。
 俺とクライブ様も把握するのに何年もかかっている。
 竜王国の周りに竜族の国があるのは知っているな?」

「ええ」

「わかるわ」

竜王国は三国の竜族の国で囲まれている。
もとは竜王国は竜人とその番しか住めなかった。
竜族が番として選ばれることが多いから、
竜王国は竜族の国を保護する形だったと聞いている。

それが先代竜王が戦争を起こし、多数の国を属国にした。
その物資などを運ぶために人出が必要になり、
五家と分家十二家に竜王国で暮らすことを許可した。

五家と分家十二家は竜族の国から選ばれている。
その関係がまだ続いているのはわかるけど、支配?

「五家と分家十二家は属国からの金と食料を運んでいた。
 それはすべて竜王国に運ばれた後、竜族の国に分配される」

「竜族の国に分配?なぜ?」

「戦争をするのに、竜族から戦士を出させていたからだ」

「あぁ、褒賞ってことなのね」

「そうだ。たくさんの金も食料も竜人はそれほど欲しくない。
 先代竜王が求めていたのはアーロン様の情報だけだったしな」

アーロン以外のことはどうでも良かったんだろうな。
私にとっては何代前の先祖なのかわからないけれど、
クレアにとってはお祖父さまになる。
そのうち隠れ里から下りてくるだろうと言われたけど、
会いたくなさそうな顔している。

「戦争が始まった頃には竜族の戦士が必要だったんだろうけど、
 それ以降は属国から戦士を出させていたから竜族は関係ない。
 だから竜族の国に褒賞を渡す必要はもうないんだ。
 それでも五家と分家十二家は竜族の国へ配分するのを止めなかった」

「それは竜族の国にお願いされていたから?」

「それもあるし、権力を持ったから手放したくなかったんだろう。
 竜族の国は金と食料が欲しいがために五家と分家十二家に頭が上がらない」

「竜族の国からしたら食料が手に入らなくなるのは困るものね」

「五家と分家十二家が好き勝手にしていたのはそれだけじゃない。
 許可がないものを竜王国に呼んで住まわせていた。
 今、こんなに竜族が増えているのはそのせいだ」

侍女四人の家族の問題が終われば、
五家と分家十二家の当主を呼ぶ予定になっている。
そこで税の徴収について正式に言い渡すのだけど。

「ねぇ、下の者たちが出ていくのはわかったけど、
 五家と分家十二家は税を払うくらいできるのでしょう?
 これからも竜王国に住まわせていいの?」

「その辺は考えてある。呼び出すのを楽しみにしておいて」

「楽しみにって、ラディだけ知ってるのはずるいわ」

クレアが拗ね始めたら、ラディが慌てる。
このままクレアが聞き続けたら話すかもと思ったら、
隠し部屋のドアが開く。呆れた顔のルークだった。

「いつまでここにいるんだ。あいつらもう帰ったぞ?」

「え?あ、本当だ」

ラディと話している間にジーナの家族は消えていた。
話が終わったから追い出されたのかもしれない。

「侍女の家族たち、他のはもう話をしなくてもいいよな?
 ジーナの家族は見てみたかったけど、
 他はもうどこも同じような感じだろう。
 税の書類見せて、払うかどうか聞けば帰ると思うし」

「それがいいと思う。
 さっさと五家と分家十二家を呼んでしまおうぜ」

「じゃあ、外宮に対応するように言っておく。
 リディ、お腹すいただろう。行こうか」

「うん」

ラディが何する気なのか気になっていたけれど、
お腹もすいていたので後でにすることにした。

どっちにしても数日後にはわかるんだし。


それから呼び出し状を作成し、三日後に五家と分家十二家の当主を呼び出し、
先代の当主が生きている場合はそれも連れてくるようにと命じる。

用意された部屋は夜会で使われた広間。
何もない広い場所に、当主たちは案内される。

「おい、椅子はないのか?」

「ありません。そのままお待ちください」

イライラしている当主たちだが、顔色は悪い。
ちなみにここにはアヒレス家の当主はいない。

他の四家と分家十二家の当主たち。
数名の老人は先代の当主。
急に呼び出されたせいか不機嫌そうな顔をしている。

全員がそろった後、少しして竜王様が入室する。
私とクレアは姿を見せないようにと言われているため、
広間のはじに置かれた衝立の裏側に隠れて様子を見ている。

当主たちは竜王様に向かって礼をする。
全員が頭を下げるのを待って、竜王様が声をかけた。

「顔をあげろ」
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