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51.消えたジラール公爵家(アンドレ王太子)
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精霊との契約を破棄したジラール公爵を捕まえろと騎士に命じたら、
公爵はひょいっと窓から飛び降りた。
しかも、ルシアンとニネットを連れて。
「馬鹿な!ここはかなりの高さだぞ!」
かなりの高さがあるために油断して窓が開けられたままだった。
まさかこんなところから飛び降りるなんて思うわけがない。
窓から下を覗けば、三人の姿はない。
「……消えた?」
「アンドレ様!あそこです!飛んでいます!」
「なんだと!」
少し離れた場所で三人が浮いているのが見えた。
そのまま公爵家の馬車のところまで行って降りている。
なんだ、あれは。
精霊の力であんなことができるのか。
呆然としていたが、父上の言葉で正気に戻る。
「アンドレ!何をしているんだ!あいつらを捕まえないと!
公爵家が独立してしまったら、どうなると思っているんだ!」
「そうだ……お前たち、後を追うんだ!」
騎士たちに指示を出したが、動きがにぶい。
何をもたついているのかと思えば、騎士隊長が叫ぶ。
「陛下、アンドレ様!精霊術が使えません!
これでは下の階の者に指示が出せません!」
「……っ。走れ!走って指示を伝えるんだ!」
精霊との契約が本当に破棄されている。
試しに自分も使ってみようとしたが、何もできない……。
これからずっと精霊術が使えない?
そんなことになれば、この国はどうなるのか。
父上を見ると、真っ青な顔をしている。
「……アンドレ、急いで精霊教会にも伝えるんだ」
「父上、精霊の力が使えない状態の精霊教会に伝えて、
何ができるというんですか」
「だが……」
父上もよく考えてみれば、精霊教会は役に立たないとわかったらしい。
それ以上は何も言わなかった。
今は精霊教会に関わっている場合じゃない。
むしろ、伝えたことで騒ぎになるのが想像できる。
面倒なことは後回しでいいだろう。
「公爵家の屋敷に押しかけて捕まえてきます。
あそこは私兵がいるでしょうから、抵抗されるかもしれません。
場合によっては火をつけますが、いいですよね?」
「ああ。逃がす方がまずい。
あいつらを公爵領に行かす前になんとかしろ。
私兵が何人いようと、全員殺してしまってかまわない」
「わかりました」
まだバタついている騎士隊長に、公爵家に向かう騎士を準備させろと伝える。
殺し合いになることを想定して警備の者を抜いた全員を連れて行く。
追いかけている騎士たちが捕まえられればいいが、
そうじゃなかった場合、徹底的に叩く必要がある。
そのためにもしっかりとした戦力を用意しなければいけない。
騎士たちがそろったのは三時間後だった。
公爵家の屋敷から公爵家の馬車が出て行ったという報告は来ていない。
あいつらは屋敷の中に立てこもっているらしい。
「騎士隊長、いいか。一気に攻めろ」
「つ、捕まえるのですよね?」
「父上は抵抗するようなら殺せと」
「っ!……わかりました。
お前たち、屋敷の中にいるものは全員確保だ!行け!」
騎士隊長の号令で騎士たちが屋敷内に突入していく。
門番がいないのか、鍵もかかっていなかった鉄扉は簡単に開いた。
おかしいと思いながらも屋敷の中に入る。
そこには誰もいなかった。
「どこかに隠れているはずだ!探せ!」
「「「「はっ!」」」」
屋敷中を探しても、人ひとりいなかった。
荷物も貴重品は持ち出されている。
重い家具以外は見当たらない。
まるで人の気配がない……逃げられたと言うのか?
「どこかに抜け道はないのか?
王都から出る検問にひっかる者がいなかったか調べろ!」
検問に聞きに行かせたものが戻ってきたが、
貴族が大量の荷物を持って出て行った形跡はなかった。
大人数が一度に行動していれば目立つはずと思ったのに、
そういう目撃情報は一つもなかった。
「どうやって逃げたんだ?
もしかして、他の場所に隠れているのか?
……すべての貴族家の屋敷に通達しろ。
ジラール公爵家の者を見つけた場合はすぐに報告するようにと」
とりあえず暗くなってきたし、屋敷内を探すのはあきらめた。
それでもどこかに隠れている可能性を考え、
屋敷には火をつけてすべて燃やすように指示を出した。
王宮に戻ると、精霊教会の者たちが押しかけてきていた。
皆、真っ青な顔をして、慌てふためいている。
「アンドレ様!精霊術が使えなくなりました!
何か災いが起きたのでしょうか!?」
精霊教会でも知らなかったのか。
ジラール公爵家の当主が精霊の愛し子だった時には、
精霊との契約を破棄できると。
もし、知っていれば警戒したのに。
当主になることを認めずに利用するとか、考えようもあったのだ。
だが、もう遅い。
精霊たちは自由になってしまった。
きっと、精霊教会も王族も貴族も、二度と精霊術が使えない。
公爵が契約を破棄したと言えば、王族の責任になると思い、
精霊教会の者には原因を調べるようにと命令しておいた。
調べられるわけはないが、王族の責任にならなければいい。
そのうち、役に立たない精霊教会のせいにして、教会ごとつぶしてしまおう。
それから三日ほど王都内を探させたが、
公爵家の者どころか使用人すら見つからなかった。
ルシアンの母と異父妹が何が知っているかと思い連れてこさせたが、
きつめの尋問をしても何も聞き出せなかった。
父上はイラつくばかりで何も指示をしないくせに文句だけうるさい。
だが、公爵家をなんとかしなければまずいのは事実だ。
念のためジラール公爵領に騎士を行かせて確認させるかと思っていた矢先、
ジラール公爵家から独立宣言が出された。
この王宮だけでなく、それは他国へも送られたようだ。
「……認められるわけないだろう。
ジラール公爵領が我が国から消えたら、この国の食料は足らなくなる」
公爵はひょいっと窓から飛び降りた。
しかも、ルシアンとニネットを連れて。
「馬鹿な!ここはかなりの高さだぞ!」
かなりの高さがあるために油断して窓が開けられたままだった。
まさかこんなところから飛び降りるなんて思うわけがない。
窓から下を覗けば、三人の姿はない。
「……消えた?」
「アンドレ様!あそこです!飛んでいます!」
「なんだと!」
少し離れた場所で三人が浮いているのが見えた。
そのまま公爵家の馬車のところまで行って降りている。
なんだ、あれは。
精霊の力であんなことができるのか。
呆然としていたが、父上の言葉で正気に戻る。
「アンドレ!何をしているんだ!あいつらを捕まえないと!
公爵家が独立してしまったら、どうなると思っているんだ!」
「そうだ……お前たち、後を追うんだ!」
騎士たちに指示を出したが、動きがにぶい。
何をもたついているのかと思えば、騎士隊長が叫ぶ。
「陛下、アンドレ様!精霊術が使えません!
これでは下の階の者に指示が出せません!」
「……っ。走れ!走って指示を伝えるんだ!」
精霊との契約が本当に破棄されている。
試しに自分も使ってみようとしたが、何もできない……。
これからずっと精霊術が使えない?
そんなことになれば、この国はどうなるのか。
父上を見ると、真っ青な顔をしている。
「……アンドレ、急いで精霊教会にも伝えるんだ」
「父上、精霊の力が使えない状態の精霊教会に伝えて、
何ができるというんですか」
「だが……」
父上もよく考えてみれば、精霊教会は役に立たないとわかったらしい。
それ以上は何も言わなかった。
今は精霊教会に関わっている場合じゃない。
むしろ、伝えたことで騒ぎになるのが想像できる。
面倒なことは後回しでいいだろう。
「公爵家の屋敷に押しかけて捕まえてきます。
あそこは私兵がいるでしょうから、抵抗されるかもしれません。
場合によっては火をつけますが、いいですよね?」
「ああ。逃がす方がまずい。
あいつらを公爵領に行かす前になんとかしろ。
私兵が何人いようと、全員殺してしまってかまわない」
「わかりました」
まだバタついている騎士隊長に、公爵家に向かう騎士を準備させろと伝える。
殺し合いになることを想定して警備の者を抜いた全員を連れて行く。
追いかけている騎士たちが捕まえられればいいが、
そうじゃなかった場合、徹底的に叩く必要がある。
そのためにもしっかりとした戦力を用意しなければいけない。
騎士たちがそろったのは三時間後だった。
公爵家の屋敷から公爵家の馬車が出て行ったという報告は来ていない。
あいつらは屋敷の中に立てこもっているらしい。
「騎士隊長、いいか。一気に攻めろ」
「つ、捕まえるのですよね?」
「父上は抵抗するようなら殺せと」
「っ!……わかりました。
お前たち、屋敷の中にいるものは全員確保だ!行け!」
騎士隊長の号令で騎士たちが屋敷内に突入していく。
門番がいないのか、鍵もかかっていなかった鉄扉は簡単に開いた。
おかしいと思いながらも屋敷の中に入る。
そこには誰もいなかった。
「どこかに隠れているはずだ!探せ!」
「「「「はっ!」」」」
屋敷中を探しても、人ひとりいなかった。
荷物も貴重品は持ち出されている。
重い家具以外は見当たらない。
まるで人の気配がない……逃げられたと言うのか?
「どこかに抜け道はないのか?
王都から出る検問にひっかる者がいなかったか調べろ!」
検問に聞きに行かせたものが戻ってきたが、
貴族が大量の荷物を持って出て行った形跡はなかった。
大人数が一度に行動していれば目立つはずと思ったのに、
そういう目撃情報は一つもなかった。
「どうやって逃げたんだ?
もしかして、他の場所に隠れているのか?
……すべての貴族家の屋敷に通達しろ。
ジラール公爵家の者を見つけた場合はすぐに報告するようにと」
とりあえず暗くなってきたし、屋敷内を探すのはあきらめた。
それでもどこかに隠れている可能性を考え、
屋敷には火をつけてすべて燃やすように指示を出した。
王宮に戻ると、精霊教会の者たちが押しかけてきていた。
皆、真っ青な顔をして、慌てふためいている。
「アンドレ様!精霊術が使えなくなりました!
何か災いが起きたのでしょうか!?」
精霊教会でも知らなかったのか。
ジラール公爵家の当主が精霊の愛し子だった時には、
精霊との契約を破棄できると。
もし、知っていれば警戒したのに。
当主になることを認めずに利用するとか、考えようもあったのだ。
だが、もう遅い。
精霊たちは自由になってしまった。
きっと、精霊教会も王族も貴族も、二度と精霊術が使えない。
公爵が契約を破棄したと言えば、王族の責任になると思い、
精霊教会の者には原因を調べるようにと命令しておいた。
調べられるわけはないが、王族の責任にならなければいい。
そのうち、役に立たない精霊教会のせいにして、教会ごとつぶしてしまおう。
それから三日ほど王都内を探させたが、
公爵家の者どころか使用人すら見つからなかった。
ルシアンの母と異父妹が何が知っているかと思い連れてこさせたが、
きつめの尋問をしても何も聞き出せなかった。
父上はイラつくばかりで何も指示をしないくせに文句だけうるさい。
だが、公爵家をなんとかしなければまずいのは事実だ。
念のためジラール公爵領に騎士を行かせて確認させるかと思っていた矢先、
ジラール公爵家から独立宣言が出された。
この王宮だけでなく、それは他国へも送られたようだ。
「……認められるわけないだろう。
ジラール公爵領が我が国から消えたら、この国の食料は足らなくなる」
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