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44.当主の交代
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「ルシアン、どういうことだ。
当主になるための条件を知らないわけじゃないだろう?
まさかニネットを孕ませたとか言うんじゃないだろうな!」
やっぱり、すぐに謁見を許されたのは誤解していたから。
多分、誤解させるようなこと書いてを送ったのだろうけど。
「陛下、まずは紹介させてください。
隣にいるのは私の叔父です」
「新しい護衛かと思ったら、叔父?
なんのことだ?ジラール公爵は一人っ子だっただろう」
「実は生まれてすぐに死にかけ、その後も病弱だったせいで、
他国で療養していて公爵家の籍に入っていなかったようです」
「なんだと?」
「それが先日、父上が落馬して足が動かなくなりまして、
すぐに当主を交代しなくてはいけなくなったため、
叔父を呼び戻したそうです。
私も今回のことで叔父がいると初めて知りました。
父上も古くからいる使用人から聞くまで知らなかったそうです」
「公爵も知らなかった?前公爵と公爵夫人が勝手にしたということか?」
公爵家の人間なのに籍に入れていなかった。
しかも、王家には報告すらない。
そのことに国王の顔がみるみるうちに赤くなる。
これはかなり怒ってる。
「一度本当に心臓が止まったために、
祖父母も死んだと思い込んでいたようです。
あとから報告するのは咎められると思っていたのかもしれません」
「そんな理由で処罰を免れるとは思うな!」
「それはそうでしょう。
爵位を下げるなり、領地を没収するなり。
処罰を受ける覚悟はできております」
「ふむ」
国王はまだイライラしているのか、
ひじ掛けを軽く指で叩きながら処罰を考えている。
「それと、もう一つ隠されていたことがありまして」
「隠されていた?」
「叔父上、元の姿に戻ってください」
「ああ」
ルシアン様に言われ、父様が姿を戻す。
銀色の髪と紫目に戻ったのを見て、国王は目を丸くする。
「……まさか」
「叔父上は精霊の愛し子です」
「本当なのか!力は使えるのか!?」
国王が父様に話しかける。
父様はにこりともしないで、答えた。
「この国の精霊術というのはよくわかりません。
ですが、精霊は私のために働いてくれます」
「精霊術が使えないのに、力は使えるのか」
「療養していた場所が精霊の森だったので、自然に使えるようになりました」
「ふむ……」
父様は病弱だったため、精霊の力を借りて生かされ、
精霊の森で療養されていたということになっている。
国内にいたということにすれば、公爵が知らないのはおかしいからだ。
「どうでしょうか、陛下。
叔父上ならこの国のお役に立てると思います」
「うむ。認めよう。
今後の働き次第では処罰はなしにする」
「ありがとうございます」
機嫌がよくなった国王はすぐに書類を持って来させた。
公爵の当主を交代すると言っておいたからか、書類は署名をするだけになっていた。
そこに父様が署名をする。
「うむ。新しいジラール公爵よ。
この国のために力を尽くすように」
「努力いたします」
「うむ」
私が謁見室にまでついていったことに何か聞かれるかと思ったけれど、
何も言われなかった。
婚約者としてついてきたとでも思われたのだろうか。
父様がどうして私を連れて行ったのかはわからないけれど、
何か考えがあったからだと思う。
帰りの馬車の中、うまくいったことでほっと息をつく。
「案外すんなりいったな。
もう少しもめるようなら、ニナとエマのことも出すつもりだった」
「私たちのことを?」
「ああ。俺の妻と子を虐げていたのだからな。
その責任を取ってもらおうかと思っていたんだが。
それについてはまた今度だな」
「そうだったの」
母様は国外に逃げたことになっている。
いずれ、私が父様の実の子だと公表した時に、
母様のことも話すつもりらしい。
国王と精霊教会がその時にどんな言い訳をするのか。
保護していたとでも言うのかな。
精霊の愛し子の母親だったから大事に守っていたとか平気で言いそう。
父様がジラール公爵になったことはすぐに公表され、
次の夜会でお披露目することになった。
心配していた公爵家への処罰はなかった。
表屋敷のほうにルシアン様の母と異父妹が押しかけてきていたけれど、
私兵が門の中には入れずに帰したと報告がきた。
「兄上の元妻と再婚先で産んだ娘か。
とんでもない妻だったが、別れた後も本当にめんどくさいな。
ルシアンが継いだら戻ってこようと思っていたんだろうが、
俺が継いだのでは無理だから騒いでいるのだろう」
「そういう意味では叔父上に継いでもらえてよかった。
夜会でも何か言ってくるでしょうね」
「何を言われても問題ないよ。
表屋敷にあの女が住んでいた時、うるさかったんだよね。
兄上はあの女の我がままに振り回されて困り果てていたし。
母上が早くに亡くなったのもあの女のせいで悩み過ぎたせいだと思う。
俺は出ていけなかったから、何もできなかった。
ようやくやり返せると思うと楽しみだよ」
「父様、何をする気なの?」
「ふふふ。夜会までは内緒」
それ以上は言う気がないらしく、母様と散歩に行ってしまった。
ようやく夫婦として過ごせるからか、ずっとべったりしている。
それを止める気はないけれど、真面目な話は後回しにされてしまう。
ルシアン様と私は顔を見合わせて笑った。
どうなるんだろうという不安よりも、父様ならなんとかなりそうだと思うから。
当主になるための条件を知らないわけじゃないだろう?
まさかニネットを孕ませたとか言うんじゃないだろうな!」
やっぱり、すぐに謁見を許されたのは誤解していたから。
多分、誤解させるようなこと書いてを送ったのだろうけど。
「陛下、まずは紹介させてください。
隣にいるのは私の叔父です」
「新しい護衛かと思ったら、叔父?
なんのことだ?ジラール公爵は一人っ子だっただろう」
「実は生まれてすぐに死にかけ、その後も病弱だったせいで、
他国で療養していて公爵家の籍に入っていなかったようです」
「なんだと?」
「それが先日、父上が落馬して足が動かなくなりまして、
すぐに当主を交代しなくてはいけなくなったため、
叔父を呼び戻したそうです。
私も今回のことで叔父がいると初めて知りました。
父上も古くからいる使用人から聞くまで知らなかったそうです」
「公爵も知らなかった?前公爵と公爵夫人が勝手にしたということか?」
公爵家の人間なのに籍に入れていなかった。
しかも、王家には報告すらない。
そのことに国王の顔がみるみるうちに赤くなる。
これはかなり怒ってる。
「一度本当に心臓が止まったために、
祖父母も死んだと思い込んでいたようです。
あとから報告するのは咎められると思っていたのかもしれません」
「そんな理由で処罰を免れるとは思うな!」
「それはそうでしょう。
爵位を下げるなり、領地を没収するなり。
処罰を受ける覚悟はできております」
「ふむ」
国王はまだイライラしているのか、
ひじ掛けを軽く指で叩きながら処罰を考えている。
「それと、もう一つ隠されていたことがありまして」
「隠されていた?」
「叔父上、元の姿に戻ってください」
「ああ」
ルシアン様に言われ、父様が姿を戻す。
銀色の髪と紫目に戻ったのを見て、国王は目を丸くする。
「……まさか」
「叔父上は精霊の愛し子です」
「本当なのか!力は使えるのか!?」
国王が父様に話しかける。
父様はにこりともしないで、答えた。
「この国の精霊術というのはよくわかりません。
ですが、精霊は私のために働いてくれます」
「精霊術が使えないのに、力は使えるのか」
「療養していた場所が精霊の森だったので、自然に使えるようになりました」
「ふむ……」
父様は病弱だったため、精霊の力を借りて生かされ、
精霊の森で療養されていたということになっている。
国内にいたということにすれば、公爵が知らないのはおかしいからだ。
「どうでしょうか、陛下。
叔父上ならこの国のお役に立てると思います」
「うむ。認めよう。
今後の働き次第では処罰はなしにする」
「ありがとうございます」
機嫌がよくなった国王はすぐに書類を持って来させた。
公爵の当主を交代すると言っておいたからか、書類は署名をするだけになっていた。
そこに父様が署名をする。
「うむ。新しいジラール公爵よ。
この国のために力を尽くすように」
「努力いたします」
「うむ」
私が謁見室にまでついていったことに何か聞かれるかと思ったけれど、
何も言われなかった。
婚約者としてついてきたとでも思われたのだろうか。
父様がどうして私を連れて行ったのかはわからないけれど、
何か考えがあったからだと思う。
帰りの馬車の中、うまくいったことでほっと息をつく。
「案外すんなりいったな。
もう少しもめるようなら、ニナとエマのことも出すつもりだった」
「私たちのことを?」
「ああ。俺の妻と子を虐げていたのだからな。
その責任を取ってもらおうかと思っていたんだが。
それについてはまた今度だな」
「そうだったの」
母様は国外に逃げたことになっている。
いずれ、私が父様の実の子だと公表した時に、
母様のことも話すつもりらしい。
国王と精霊教会がその時にどんな言い訳をするのか。
保護していたとでも言うのかな。
精霊の愛し子の母親だったから大事に守っていたとか平気で言いそう。
父様がジラール公爵になったことはすぐに公表され、
次の夜会でお披露目することになった。
心配していた公爵家への処罰はなかった。
表屋敷のほうにルシアン様の母と異父妹が押しかけてきていたけれど、
私兵が門の中には入れずに帰したと報告がきた。
「兄上の元妻と再婚先で産んだ娘か。
とんでもない妻だったが、別れた後も本当にめんどくさいな。
ルシアンが継いだら戻ってこようと思っていたんだろうが、
俺が継いだのでは無理だから騒いでいるのだろう」
「そういう意味では叔父上に継いでもらえてよかった。
夜会でも何か言ってくるでしょうね」
「何を言われても問題ないよ。
表屋敷にあの女が住んでいた時、うるさかったんだよね。
兄上はあの女の我がままに振り回されて困り果てていたし。
母上が早くに亡くなったのもあの女のせいで悩み過ぎたせいだと思う。
俺は出ていけなかったから、何もできなかった。
ようやくやり返せると思うと楽しみだよ」
「父様、何をする気なの?」
「ふふふ。夜会までは内緒」
それ以上は言う気がないらしく、母様と散歩に行ってしまった。
ようやく夫婦として過ごせるからか、ずっとべったりしている。
それを止める気はないけれど、真面目な話は後回しにされてしまう。
ルシアン様と私は顔を見合わせて笑った。
どうなるんだろうという不安よりも、父様ならなんとかなりそうだと思うから。
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