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番外編4(END)
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日が暮れた頃に、恋の家に帰って来る。
今はもうすっかり見慣れてしまった、恋の部屋。
物が少なくて、生活感がまるでない部屋。
「ボクお風呂入って来るね」
「あ! 風呂と言えばお前、リンスのボトルの中に洗剤入れただろ!
髪の毛ギシギシになったじゃねーか! どうしてくれる」
「? ボク、石鹸とシャンプーの違い分からないよ」
「石鹸ですらなかったぞ! 食器用洗剤だったぞアレ!
こんな生活してる癖になんでお前はそんな髪の毛サラサラなんだよ。
めちゃくちゃ腹立つなー」
「ボクの髪は生まれつきサラツヤだよ」
「家の事は俺がやるから、お前は弄らなくていいから!」
「ボク、家事出来ないからやって貰えるなら助かるよ」
「俺も別に得意じゃないけどお前よりはマシだからな」
「そうだね。あ、お風呂一緒に入る?」
「入らねーよ」
「そう。残念。あ、今日はデートしてくれてありがとうね。とっても楽しかったよ!」
「――ッ」
……俺も、楽しかったよ。
照れ臭くって、その言葉は口に出せなかった。
素直じゃなくてごめん。
恋が風呂に入ってる間、俺は買って貰ったギターを開封していた。
包装を解きながら、歌の詞とメロディを考えていた。
恋が言うように、とりあえず今の自分に合った曲を作ろうと思った。
この曲の主人公は、俺自身だ。
ネオンサイン。派手な色。東京。歌舞伎町。風俗店。猫。
新宿。人混み。池袋。カラス。駅。タクシー。電車。雑踏。
恋。サイコパス。変なやつ。頭おかしい。アホだけど、哲学的。
にぎやかだけど、寂しい街。ろくでもない街。
恋に似合う街。まるで恋そのもののような、街。
ネオン街に立つ恋の姿を、簡単に頭に思い浮かべる事ができる。
――好きじゃないけど、嫌いじゃない。
愛してるわけないけど、居なくなったら寂しい。
恋が死んでも多分泣かないけど、俺はまた一人になる。
愛しいような、ムカつくような。
そのくらいの、距離感。
恋と、俺……。
恋との非日常が、俺の日常になった。
異常と正常の狭間で、意味もなくだらだら過ごした。
恋の異常性に甘えて、かろうじて生きていた。
どんなに思考しても、恋のことなんか何一つとして分からない。
――恋のこと、曲に書いたら、恋は、笑うかな。
馬鹿にされるかな。からかわれるかな。
そしたら恥ずかしいな。
だけど今の俺を主人公にするならば、恋の存在は必須なわけで。
今の俺はもう、恋抜きでは語れない。
恋の異常性が、俺を生かしているのだから。
恋に対して恋愛感情を抱いてるわけじゃないけど、
――でも、なんだか……
恋の事を曲にしたらさ、
ちょっと良い歌が、書ける気がするんだ。
……なんとなくだけどさ。
今はもうすっかり見慣れてしまった、恋の部屋。
物が少なくて、生活感がまるでない部屋。
「ボクお風呂入って来るね」
「あ! 風呂と言えばお前、リンスのボトルの中に洗剤入れただろ!
髪の毛ギシギシになったじゃねーか! どうしてくれる」
「? ボク、石鹸とシャンプーの違い分からないよ」
「石鹸ですらなかったぞ! 食器用洗剤だったぞアレ!
こんな生活してる癖になんでお前はそんな髪の毛サラサラなんだよ。
めちゃくちゃ腹立つなー」
「ボクの髪は生まれつきサラツヤだよ」
「家の事は俺がやるから、お前は弄らなくていいから!」
「ボク、家事出来ないからやって貰えるなら助かるよ」
「俺も別に得意じゃないけどお前よりはマシだからな」
「そうだね。あ、お風呂一緒に入る?」
「入らねーよ」
「そう。残念。あ、今日はデートしてくれてありがとうね。とっても楽しかったよ!」
「――ッ」
……俺も、楽しかったよ。
照れ臭くって、その言葉は口に出せなかった。
素直じゃなくてごめん。
恋が風呂に入ってる間、俺は買って貰ったギターを開封していた。
包装を解きながら、歌の詞とメロディを考えていた。
恋が言うように、とりあえず今の自分に合った曲を作ろうと思った。
この曲の主人公は、俺自身だ。
ネオンサイン。派手な色。東京。歌舞伎町。風俗店。猫。
新宿。人混み。池袋。カラス。駅。タクシー。電車。雑踏。
恋。サイコパス。変なやつ。頭おかしい。アホだけど、哲学的。
にぎやかだけど、寂しい街。ろくでもない街。
恋に似合う街。まるで恋そのもののような、街。
ネオン街に立つ恋の姿を、簡単に頭に思い浮かべる事ができる。
――好きじゃないけど、嫌いじゃない。
愛してるわけないけど、居なくなったら寂しい。
恋が死んでも多分泣かないけど、俺はまた一人になる。
愛しいような、ムカつくような。
そのくらいの、距離感。
恋と、俺……。
恋との非日常が、俺の日常になった。
異常と正常の狭間で、意味もなくだらだら過ごした。
恋の異常性に甘えて、かろうじて生きていた。
どんなに思考しても、恋のことなんか何一つとして分からない。
――恋のこと、曲に書いたら、恋は、笑うかな。
馬鹿にされるかな。からかわれるかな。
そしたら恥ずかしいな。
だけど今の俺を主人公にするならば、恋の存在は必須なわけで。
今の俺はもう、恋抜きでは語れない。
恋の異常性が、俺を生かしているのだから。
恋に対して恋愛感情を抱いてるわけじゃないけど、
――でも、なんだか……
恋の事を曲にしたらさ、
ちょっと良い歌が、書ける気がするんだ。
……なんとなくだけどさ。
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