まいすいーとえんじぇる

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アンヘルと一緒に、家に帰って来る。
家に着いた頃には、もうすっかり夜になっていた。


「0時まで、10秒前……
 9、8、7、6、5……」
 4、3、2……1…………0!」

「…………っ」

「莉子さん、大丈夫ですか?なんともない?」

「う、うん……平気、だと思う……」

「どこも痛くないですね? 苦しくないですか?」

「うん、平気」


――私の死の予定日を、越えた。
私は死の運命を回避する事が、できたのかな。


「……良かった」

「……うん、ありがと」

「一か八かの賭けでしたけど、上手くいって本当に良かった……」

「そうだね」

「へへ……でもね、莉子さん、私……」

「ん?」

「明日、天界へ帰らなくちゃならないんです」

「え……!?」

「そ、そんな……せっかく仲良くなれたのに、寂しいよ!」

「!? り、莉子さん、素直すぎて怖い……
 やっぱりどっかおかしいんじゃ……?」

「オイ、失礼にも程があるぞ」

「すみません……」

「で、どうして帰らなくちゃならないの?」


出来れば、ずっと一緒に居て欲しい。
私にはまだまだアンヘルが必要だ。
帰って欲しくない、別れたくない、それが本音だ。



「人間界風に言えば、ビザが切れるみたいな感じです。
 天使は必要以上に人間界に居てはいけないんです。
 莉子さんをお迎えに上がるという任務の期間は一週間ですから、私はもう帰らないと法律で罰せられてしまう」

「そう、なんだ……
 でも、アンタ、私の事はどう説明するわけ?
 死ぬはずだった私を庇って助けちゃってさ……
 その辺の法律はどうなってんの? アンタ大丈夫なの?」

「当然、罰せられるでしょうね……
 もしかしたら私はもう、天使の仕事をさせて貰えなくなるかも……」

「そんな……アンヘル……
 私のせいで、本当にごめんね」

「莉子さんのせいじゃないですよ、全て私が勝手にやった事ですから」

「でも……」

「莉子さん、私、莉子さんの事が、好きになっちゃったみたいです」

「…………もう、本当にバカだね、アンタ」




――私も大好きだよ、アンヘル。






「さ、もう寝ましょう?」

「……うん、そうだね」

ベッドに入り、部屋の電気を消す。
布団の中で、アンヘルと身体を寄せ合う。
アンヘルの身体は相変わらず柔らかくて、良い匂いがした。
この身体の温もりを感じるのは、今日で最後なんだ……
そう思うと無性に寂しかった。
涙が出そうだったけど、なんとかして泣くのは堪える。
私が泣いたら、アンヘルが帰りづらくなってしまう。
きっと私が大泣きして引き止めれば、アンヘルは帰るのを辞めて側に居てくれるんだろうな。
でもそんな訳にはいかない。
これ以上アンヘルに、天界のルールを破らせる訳にはいかない。


「莉子さん……」

「なに?」

「私が居なくても、ちゃんと生きていけますか」

「なにそれ、別にアンタなんか居なくても大丈夫だよ」

「ご両親と、ちゃんとお話できますか?
 これからの事について、ちゃんと自分と向き合えますか?」

「大丈夫だよ。アンタなんか居なくても寂しくないもん」

「さっき寂しいって言ってくれたじゃないですか」

「あれはリップサービスだよ」

「え、そんな……」

「とにかく私は大丈夫だから、アンタは安心して帰んな」

「莉子さん……」

「さ、もう寝るよ、おやすみ」

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