まいすいーとえんじぇる

粒豆

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ゲームで遊んだ後、お母さんが仕事に行く前に用意していってくれた昼食に手をつける。
美味しくもまずくもない野菜炒めを、ご飯と一緒に口へ運ぶ。

「美味しそうですね」

「天使って飯食うの?」

「食べれますよ。食べなくても死にませんけどね」

「へぇ。ウンコとかすんの?」

「そういう質問にはお答えできません。イメージが崩れますので」

「するんだ……?」

「本当に美味しそう。一口ください」

「えー、別に普通だよ」

「天界にはあまりない食べ物です。一口ください」

「仕方ないな……」


野菜炒めを箸でつまんで、アンヘルの口元へ運ぶ。
アンヘルは戸惑いなく、差し出されたそれを口へ入れた。

「美味い?」

「まずくはないんですけど、特別美味しくはない……普通ですね」

「なんか自分で言うのはいいけど、他人に言われるとむかつくな」

「でも暖かい味がします。これがいわゆる『おふくろの味』なのですね? もう一口ください」

「やだよ。私の分がなくなるだろ。 
 腹が減ったなら米でも食ってろよ! 炊飯器に入ってるから」

「おかず無しでですか? それはちょっと……」

「とにかくもう駄目ー。これは私の野菜炒めー」

「ちぇ。あ、そうだ。
 じゃあ莉子さんが私の分作ってくださいよ」

「は? なんでそうなるの?」

「学校へも行かず、働きもしないなら、家事くらいやったらどうですか?って事ですよ」

「えー、やだよぅ。めんどくさい。料理は嫌いじゃないけどさ」

「はぁー……莉子さんってクズですね」

「ぐへへ」

「ぐへへ、じゃないですよ。
 最期の一週間なんですよ?
 お母様、お父様へ恩返しするとかそういう気持ちはないんですか?」

「おー、遺書は書いとくよ」

「もう……」

――恩返しか……。
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