私は貴方を許さない

白湯子

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第10章

193話

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エリザベータside


「ビ、ビアンカ!?どうしてここに…」


月明かりが微かに届く、薄暗い奈落の底。
予期せぬ再会に驚いた私は、はしたなくも口をあんぐりと開け、南の領地に居るはずのビアンカを指差した。


「あんらぁ~?よく見たら蛙ちゃんじゃない。あんまりにも重いから藁俵だと思ってたわ。」
「藁俵ですって…!?」


失礼極まりのない発言に憤慨する私を余所に、ビアンカはユリウスの顔を覗き込んだ。


「ちょっとミルクちゃん?話が違うじゃない。どうして蛙ちゃんがここに居るのよ。安全な場所に避難しているんじゃなかったの?」
「それについては僕にとっても予定外の事です。」
「ふぅん…?」


ビアンカは舐めるような視線でユリウスを見下ろしたのち、私に視線を戻した。


「どういうことなのかしら?蛙ちゃん。」


ビアンカに問われ、私は一瞬戸惑った。だがすぐに、当初の目的を思い出す。


「私はそこの彼に会いに来たのよ。」
「…。」


真っ直ぐに。はっきりと。
柔らかな前髪に隠れたユリウスの瞳が、微かに揺れたように見えたのは気のせいだろうか。


「しばらく見ない間に、いい目をするようになったじゃない。」
「え、ちょっ…」


突然、ビアンカは脇に抱えた私をぐいっと上に持ち上げ、視線の高さを合わせた。


「ちょぉーっと前までは迷子の子豚ちゃんみたいな目をしてたのにね!」
「ビアンカ。そろそろ怒るわよ。」
「もう怒っているじゃない。膨れ赤蛙ちゃん♡あ、あと鼻血出てるわよ。」
「ビアンカ!」


鼻血を拭い、ビアンカと絶対勝ち目のない攻防戦を繰り広げていると、隣から控えめな咳払いが聞こえてきた。


「…ベック卿。姉を揶揄うのはそこまでにして、そろそろ降ろしてくれませんか。」


感情を全く表に出さないその冷静なユリウスの口調に、カッカと燃えていた憤怒の炎が呆気なく鎮火する。その一方で、ビアンカの内なる炎はメラメラと燃え上がっていた。


「やだもぉ~ミルクちゃんったら!そんなだっさい呼び方じゃなくて、いつもビアンカって呼んでって言っているじゃな~い!」


鼻息荒く、ビアンカは本能の赴くままにユリウスに頬ずりをしようと迫る。だが、ユリウスはそれを許さない。彼は両手でビアンカの額と顎を押しのけ、頑なに自身の領域への侵入を拒んでいる。

会話から察するに、この2人は以前からの知り合いなのだろう。ユリウスは父の跡を継ぐ為、幼い頃から父の仕事を手伝っていた。きっと、その仕事を通じて南の領主代理人をしているビアンカと知り合ったのだろう。

そんなことを考えている間に、ユリウスの頬にビアンカの頬…ではなく、彼女の長く尖らせた分厚い唇が徐々に徐々に確実に近づいていた。その距離、あと数センチ。だがそこで。


「ベック卿。」


静かながらも、有無を言わせぬユリウスの口調に、唇を尖らせたままのビアンカは「わかったわよ~。」と言いながら、しぶしぶ顔を引っ込めた。


「相変わらず、つれないんだから。でも、そこがまた堪らないのよねぇぇ♡」


独り言にしては大きすぎる独り言を垂れ流しながら、ビアンカは脇に抱えていた私たちをゆっくりと地面に降ろした。
だが私の膝はガクガクと震えだし、その場にへたり込んでしまった。


「あらやだ、大丈夫?」


ビアンカが私に大きな手を差し出した。私はその手に掴まろうとして、自身の手が小刻みに震えていることに気付く。高いところから落下した恐怖が、遅れてやってきているのだ。

いつもの癖で自身を抱きしめようとする両手をぐっと抑え込む。こんな所で震えている場合ではない。私にはやるべきことがあるのだ。
古い殻から外へ出るように、私は差し伸べられた手を掴んだ。生まれたての小鹿のように震える両足に力を込めて、のろのろと立ち上がる。両足がしっかり地面に付いて、肺に溜まった空気を一気に吐き出す。

以前の私なら、一人で立てない自分自身を出来損ないだと卑下していただろう。正直、その考え方が完全に消えたわけではないが、カモミールの少女の言葉や自分の心に正直なビアンカの姿をみて、私の中にある理想の自分がゆっくりとカタチを変えているのを感じていた。

正しくなければならない、美しくならなければならない。皆が望む完璧な淑女。そう見せることが強さだと信じていた。だが、本当の「強さ」はそういうことではないのだろう。その証拠に、理想を追いかけていた私は、脆くて崩れやすい存在だった。

けれど今は。

ビアンカの手を借りて立ち上がった自分が、ほんの少しだけ強くなった気がしたのだ。
誰かの手を取る。それは、弱くて情けない自分を晒したくないというプライドが邪魔をして、今までできなかったこと。自分の弱さを認め、誰かに手を伸ばすこともまた、強さなのだ。

ビアンカと繋いだ手を見て、私は思った。
人は、人を生かし、人に生かされて、この先何十年、何百年、何千年と繋がっていく。

いつか…私も、この手のように。
誰かを生かし、その誰かを未来に繋げることができるのだろうか。もし、それが出来たのならば、きっと今まで見てきた世界とは、また違った景色を見ることができるかもしれない。


「助けてくれありがとう。ビアンカ。」


不格好ながらも精一杯の笑みの向けると、ビアンカは一瞬ぱちくりとつぶらな瞳を瞬かせたのち、茶目っ気たっぷりなウィンクで応えてくれた。


「どういたしまして。蛙ちゃん。」


その変わらぬ優しさと仕草に、短い時間であったが南の領地で過ごした日々が蘇り、何だが鼻の奥がつーんと熱くなった。ビアンカの頼もしさにじんわりと安堵したのもつかの間、私はハッと今の状況をを思い出す。


「そうよビアンカ!貴女どうしてここに居るの!?あと今大変なことになってて聖女が…いたっ!」


突然、ビアンカから容赦のないデコピンをくらい、説明を強制終了させられた。私はじんじんと痛む額を両手で押さえ、涙目でビアンカを見上げた。


「はいはい落ち着いて。話は私をここに呼んだミルクちゃんから聞いているわ。」
「ミルクちゃん…」


先程から何度も耳にする可愛らしい愛称。もしかして…いや、もしかしなくとも、十中八九、彼のことだろう。
私は隣に居るユリウスにちらりと視線をおくった。


「何か?」


私と目が合ったユリウスは綺麗な眉間にぐっと皺を寄せる。そのやや好戦的な態度に、私の口調にも思わず棘が生える。


「いえ。随分可愛らしい愛称をつけてもらったのね、と思って。」


私と違って。
ビアンカの独特の愛称にやや贔屓を感じるのは気のせいではないだろう。


「実際、僕は可愛いですからね。」
「……。」


ユリウスにしれっと自身の容姿を肯定され、私は一瞬呆気にとられる。彼が可愛らしい容姿の持ち主であることは、周知の事実ではあるが、こうして肯定してきたのは今回が初めてだ。今までは容姿を褒められるたびに謙遜し、いじらしく恥じらっていたというのに。
猫を被るのやめた彼は、随分とふてぶてしい。
私は呆気にとられていた自分を誤魔化すように小さく溜息をこぼし、再び言葉に棘を添えた。


「…そういうところは可愛くないわね。」
「どうせ謙遜しても、貴女から見れば可愛くないのでしょう?」
「謙遜していた時の方がまだ可愛げがあったわよ、貴方の場合。」
「おや、姉上は以前の僕がお好みなんですね。では次からはご希望に沿えて愛らしく謙遜して差し上げましょう。」
「あら残念。その鼻につく態度を改めないと、次なんてものは永遠に来ないわ――」
「アタシの前でイチャイチャしてんじゃないわよーー!!!」


野太い叫びと共に、ビアンカが私とユリウスの間に割って入った。ドン!と突進され、よろけた私はちょうど手前にあった腰ぐらい高さの石に掴まることができ、何とか転ばずに済んだ。


「ちょっとビアンカ。危ないじゃない。」


振り返りながら睨みつけると、ビアンカは腕を組み、つーんとそっぽを向いた。


「墓場でイチャつく蛙ちゃんのほうが悪いわっ。」
「…墓…?」


その言葉にハッと周りを見渡す。どうして今まで気付かなかったのだろうか。僅かに届く月明かりに照らされた奈落の底には、中心に立つ私たちを囲うかのように、ずらりと墓石が並べられていた。そして、今、私が支えにしている石もその中の墓石のひとつであるわけで…。
私は声にならない悲鳴を上げながら、咄嗟に両手を上げた。
300年前、お后教育を受けていた頃。地下聖堂には聖人や高位の聖職者たちの墳墓があるという話を聞いたことがある。

ユリウスは固まる私を一瞥したのち、ビアンカに向き直った。


「ベック卿。外の様子は如何ですか?」


ユリウスの一言により、場の空気にぴりっと緊張が走る。ゴクリと喉を鳴らした私は両手を胸の前で固く握り、ビアンカの話に耳を傾けた。


「帝国民の避難は無事に完了よ。心配だった北の領民もゲシュテーバー大公が受け入れてくれたわ。」


まさかの大物の名前に目を瞠る。
ゲシュテーバー大公。父が治める領地よりも更に北、極寒の地を治めている大公爵だ。
雪山に囲われた大公城は一年中吹雪いており、難攻不落の氷の城と呼ばれている。雪に慣れていないヴェステン軍やオステン軍は手を出すどころか、城にさえ辿り着かないだろう。


「ヴェステンとオステン、両国をよく思っていない堅物の彼ならしっかり守ってくれるでしょう。戦況は?」
「オステン軍が皇宮に攻め込んでいるけど、予定通り陛下がおひとりで赤子の手をひねるように対処して下さっているわ。」


オステンといえば、人外の国とも呼ばれ、1人1人が圧倒的な戦闘力を保持している危険な国だ。そのオステン軍を陛下がたった1人で相手をしているなんて。
上等な青の魔力を保持する陛下の想像を遥かに超える戦闘力に驚いていると、ビアンカは突然バキボキと葉巻のように太い指を鳴らし始めた。


「本来、皇宮を守るはずの皇室騎士団がまったく機能していない上に、前線に陛下をおひとりで立たせているなんて、騎士として情けない話しよ!アイツら正気に戻ったら、ハードなお仕置きをたぁーぷりプレゼントしてやるわぁ~!」


凶悪な笑みを浮かべるビアンカの迫力に思わず後ずさりをする。ビアンカは元騎士団所属だ。ここに集まっている人々の中にはビアンカの知り合いも含まれているのであろう。


「…父や他の交戦区域の様子はいかがです?」


顎に手を当てながらビアンカの話を聞いていたユリウスが発した言葉に、私はビクリと反応した。胸の前で握っている両手にぐっと力を入れ、固唾の飲んでビアンカの話を待つ。


「各区域、頑張って耐えているけど、ここに人が取られている分、何処も人手不足で苦戦を強いられているわ。それに夜っていうのが厄介ね。月明かりがあるとはいえ、夜目が効く敵さんの方が有利よ。」
「……。」


ユリウスは表情を全く変えず黙ってビアンカの話を聞いているが、私は戦地に居る父や皆が心配で心配でどうにかなりそうになっていた。
父にもしものことがあったら、私はどうすれば良いのだろうか。その前に今の戦況を打破する方法はないだろうか。私にできることは?何か、何か…

纏まらない思考が頭の中を駆け巡り、呼吸が乱れ、心臓も激しく脈打つ。
どうしようどうしよう…
気持ちばかりが先走り、冷静さが欠けていく。手を強く握りすぎて、爪が甲にくい込み血が滲んでいることも気付かないぐらいに。


「そんなに心配しなくて大丈夫よ。」


ビアンカにくしゃりと頭を撫でられ、びくりと肩を震わす。反射的に見上げると、ビアンカは先程と同じようにお茶目なウインクをおくってきた。


「ちゃーんと手は打ってあるわ☆」





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