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赤い夢
しおりを挟む「姉様、姉様。」
可愛らしい天使は私の着物の袖を引っぱる。そして、この上目遣い。ご馳走様です。
「なぁに?」
「姉様には、この赤い着物の方が似合います。」
天使は真っ赤な着物を勧めてきた。
天使には悪いが私には赤は似合わない。
「ごめんねぇ。お姉ちゃん、こっちの着物がいいなぁ。」
私が選んだのは無難な紺色の着物だ。地味な私にはこれぐらいが丁度いい。
「……………姉様は赤です。」
何故、ここまで赤にこだわるのだろう。不思議だ。
プイッと顔を逸らしてしまった天使。拗ねてしまったようだ。しかし、そんな姿すら愛らしい。
「フフフ。陽がそこまで言うなら、いつか着てみたいわねぇ。」
機嫌をとるためにハニーブラン色の髪を優しく撫でる。天使は頭を撫でられるのが好きらしい。目を細めて、ふにゃりと笑うのだ。あぁ、気持ちよさそう可愛い堪らない。
「いつかっていつですか?」
「そうねぇ。もう少し大きくなってかしら?」
きっと大きくなっても赤い着物は似合わないだろう。
「本当?」
「えぇ。」
「ふふふ。約束ですよ?姉様。」
ふわりと微笑む天使。こんな笑顔が見れるなら、いつか着てみたいと思うようになった。
しかし、私は死んでしまったのだ。
あの子は覚えていないかもしれないけど、約束を守れなかった。もし、赤い着物を着たら喜んでくれただろうか。少しでも喜んでくれるなら……………。
今となってはわからない。
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