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第20話 すごいお宝ととってもすごいお宝

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 熊さん達に小鬼達の相手を任せて、私はエレベーターに乗って下へと向かう。最初は熊さん達とパーティーを楽しむ予定だったけれど、私のカンがいっているの。この下にあるものは、熊さん達と遊ぶよりも重要なものだって。

 といっても、熊さん達と遊びたいことに変わりはないから、早く終わらせて戻らないとね。

 ふい~ん、がこん!

 エレベーターが下まで到着したようね。ドアが開くと、上への援軍がぞろぞろと乗り込んでくるわ。無視してもいいのだけれど、私が降りるのに邪魔だからとりあえず爪を振るって切り裂いておく。

『なんだ? 何が起きた? すぐに調べろ!』
『はっ!』

 耳を澄ませて小鬼達の通信を傍受する。相変わらずステルスモードだと全然気づかれないのね。ただ、エレベーターの外にもこれでもかと小鬼達がいるわ。はあ、面倒くさいけど倒さないと歩きにくいわね。私は通り道の小鬼達をとりあえず切り裂きながら進んでいくわ。

『どうなってるんだよ!』
『わからん。いきなり隣のやつがバラバラになった!』
『誰か、なにか把握できなかったか!?』
『なにも把握できなかった!』
『こっちもだ』

 このフロアも上のフロアと同等の広さがあるようね。そしてこの直下にはテラフォーミング装置の本体があるようだけど、私の目的地はもっと下のようなのよね。穴を掘ってもいいのだけど、それは猫っぽくないから却下ね。とりあえず、壁面にある扉にでも行こうかしら。

 私の行きたい空きっぱなしの巨大な扉からは、小鬼達がどんどん出てくるわ。まあ、サクサクっと倒しながら進みましょうか。

 私は扉まで到着する。この扉から先は、雰囲気がどことなく今までのところとは違うわね。通路も広く長いようだし、この方角は他の地下基地のある方向ね。ということは、テラフォーミング装置はこの扉までで、この先は別の地下基地とテラフォーミング装置をつなぐ通路というところかしら。でも、通路自体は新しい感じじゃないから、攻め込まれてから作ったのではなく、かなり昔からそういう運用をしていたようね。奥から小鬼達がぞろぞろと並んで移動中だけど、私の行きたい先はこっちなのよね。

 小鬼達の数に、ちょっと辟易しながらも通路を少し進むと、横道が現れたわ。どうやらこっちのようね。こちらには小鬼達はいないのね。螺旋状のスロープをどんどん下へと進んでいくと、今までにない強力な隔壁が現れる。これは、今までの隔壁とは一線を画す頑丈さのようね。

 私は切り裂き王の爪で扉の破壊を試みる。

 ぎゃりりりりり!

 私の切り裂き王の爪を防ぐとは、なかなか丈夫なようね。あとでこの扉は爪とぎ用に回収しようかしら。でも、本気を出せば壊せないほどではないわ。私は何回か爪を振るい、頑丈な隔壁を破壊する。すると、扉の先から強力な宇宙パワーが噴出してくる。

 これは驚いたわね。宇宙パワーは基本的には有益なものだけど、この濃度の宇宙パワーともなると、必ずしも有益とは言えなくなるわ。私の切り裂き王なら平気だけど、小鬼達のBPSでは30m級でも耐えられないはず。なるほど、そのための無駄に頑丈な隔壁だったのね。

 扉の先には、テラフォーミング施設本体横から下にかけての、巨大な空間が広がっていたわ。人工的な部分も多少はあるけれど、基本は自然に出来た洞窟のようね。そして同時に、お宝も姿を現したわ。

 お宝の名前は、スペースマテリアル。

 宇宙パワーが濃縮して作られる特殊な金属ね。なるほど、このテラフォーミング装置は、スペースマテリアルが出来るほどの宇宙パワー濃度を持つ、この洞窟にアクセス出来るように作られていたということだったのね。

 そして内部では、50m級の小鬼のBPSがちまちまとスペースマテリアルの採掘をしている。スペースマテリアルは内包する宇宙パワーの強さによってその価値が決まるのだけれど、この洞窟ほど宇宙パワーが濃いと、すごい価値になりそうね。

 採掘しているのが小鬼達のBPSでは最強クラスの50m級ということからも間違いでしょうね。このレベルのスペースマテリアルともなれば、採掘にもとてつもないパワーが必要になるでしょうからね。

 いえ、ちょっと違うわね。BPSはバトルパワードスーツの略になるのだけれど、ここにいる50m級は、戦闘用というよりも採掘用といった雰囲気ね。最低限の武装は付いているようだけれど、これじゃあBPSというよりも、採掘用のパワードスーツ、マイニングパワードスーツとでも呼ぶのが相応しいわね。倒すのは容易いでしょうけれど、私が採掘するのも、猫っぽくないのよね。あまりしたくないわ。今は探検をメインにして、後でギルドにでも採掘してもらえばいいかしらね。

 洞窟をちょっと調べると、だいたい洞窟の中心部分に、更に下へと向かう巨大な穴が開いていた。

 すごいわね。この穴からはかなりの濃度の宇宙パワーが噴出している。この先は間違いなくこの惑星内部へと続いているのでしょうね。スペースマテリアルの品質としても、この穴の先のほうが絶対にいいわよね。

 ちょっと降りてみようかしら。

 私は穴にぴょんっと飛び込んだ。すごいわね。どんどん宇宙パワーの濃度が上がっていくわ。そして、それなりの距離下へと降りると、目の前に宇宙パワーの河といってもいい流れが現れた。

 これは絶景ね。

 上の洞窟も十分な濃さの宇宙パワーだったというのに、この河を見てしまうと、ついさっきまで私がすごいと感じていた上の洞窟の宇宙パワーが、まるでこの河から蒸発した、水蒸気のような小さな存在だったのかと思わされるわ。

 流石にこの流れに飛び込んだら、私の切り裂き王でもダメージを受けそうね。でも、この内部のほうがもっと良さそうなスペースマテリアルがありそうなのよね。ちょっとだけなら大丈夫かしら?

 そうね、ぷうの作った切り裂き王ならきっと大丈夫ね。

 念のためにミニぴぴぷちゃ号の亜空間フィールドが張られているのかも確認する。流石はミニぴぴぷちゃ号ね。ここまで宇宙パワーが濃いと、宇宙船によっては亜空間フィールドの展開が上手くできなかったりするのに、ミニぴぴぷちゃ号の亜空間フィールドはしっかりと展開されている。これで安心して潜れるわね。

 びーびーびー!

 私が切り裂き王で宇宙パワーの河に飛び込むと、いきなりダメージを知らせる警報がけたたましく鳴る。流石にここでは切り裂き王といえども長居できそうにないわね。私は河の中にあるスペースマテリアルの塊に全力で爪を立てて攻撃し、1m弱くらいの欠片を入手する。そしてそれを咥えると、大急ぎで河から出てそのまま穴を上る。

 切り裂き王は・・・・・・、無事とは言えないわね。全身にダメージがある上に、右足が上手く動かない。更に右手の爪も上手く出せなくなってるし、ステルスモードにも異常があるみたい。まいったわね。これじゃあ戻ったらぷうとはぴに怒られちゃうわ。

 私が穴を上って洞窟に戻ってくると、洞窟内のスペースマテリアルを採掘していた小鬼達がなんだか慌ただしくしているわね。

『おい、なんで扉が壊れているんだ?』
『敵襲か? もうここまで来たのか?』
『いや、まだのはずだ。テラフォーミング施設の連中の反応はまだある』
『だが今はとにかく早く運び出すぞ。テラフォーミング施設で敵を抑えられるのも、そんなに長くはないはずだ』
『ああ。今まで採掘したスペースマテリアルは、何としてでもあの御方へお届けしなければならん』
『その通りだ。俺達はここで終わりだが、あの御方さえいれば、我々の未来は明るい』
『我々の最後の仕事だ。無事に完遂するぞ』
『『『『『おう!』』』』』

 どうやらぷうと熊さん達は順調に暴れているようね。そして、どうやらここで採れたスペースマテリアルはここの小鬼が自ら使うのではなく、あの御方とかいう人に送り届けるようね。普通に考えれば、惑星アルファに未来なんてないでしょうから、何とか打ち上げて送り届けようということかしらね。

 でも、いいことを聞いちゃったわね。ここの小鬼達が今までに採掘したスペースマテリアルがどこかに集まっているなんてね。あとで頂いちゃいましょうかしら。でも今は、とりあえずここにある分を確保しましょうか。

『おい、あれは何だ?』
『なんだあの不気味な物体は、敵なのか!?』
『総員戦闘準備! イダ! お前はスペースマテリアルを運びだぜ! 残りは時間を稼ぐぞ!』
『『『『『はっ!』』』』』

 不気味な物体とは失礼ね。確かに今の切り裂き王はステルスモードが不安定で、ちょっとおかしな見た目かもしれないけれど、はぴから毎日のように美猫とか可愛いと言われてる私に向かって・・・・・・。

 本当に、失礼ね・・・・・・。

 ざしゅっ、どすっ、ぴしゅっ。

 ふん! 自業自得ね。・・・・・・因果応報だったかしら? まあ、どちらでも構わないわね。でも、確かに今の状態でのステルスモードはあまり見た目が良くないわね。この際ステルスモードはオフにしましょうか。

 すごいお宝だけじゃなくて、とってもすごいお宝まで見つけちゃったし、みんなのところに帰りましょうか。

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