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第113話 盤外戦術
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「明日以降の予定を決めたいんだが、いいか?」
「ええ」
「はい」
熊さん達との毛並み勝負を終えたその日の夜、私達は全員で集まって明日以降の予定をきめることにした。
ジェームズさんの機嫌も、毛並み勝負が良かったのか、お夕飯を食べたのが良かったのかはちょっと不明だけど、今ではすっかり元通りだ。あの男みたいな敬語モードは、精神的にこたえるものがあるから、本当によかったよね。
「俺達はさくらさんの護衛だからな、さくらさんとしては何したいんだ?」
「私もこの島ではさくらさんに合わせる予定だったから、さくらさんに合わせるわ」
私のこの島でやりたいことって言ったら、もちろん美味しい海の幸を食べることだよね。美味しい海産物を食べて、さらに普通の海産物より美味しいとされる海のモンスターを食べることこそ私の目的だから、ここはハンターギルドで聞いたように、ダンジョンの下層を目指すことが私のやりたいことになるのかな?
「私の目的は美味しい海産物と海のモンスターを食べることなので、ハンターギルドで聞いた、ダンジョン下層の海のモンスターを狩りに行きたいです!」
「あら? 普通の海産物はいいのかしら?」
「はい。普通の海産物は狩りに行かなくても、この街のご飯屋さんでいっぱい食べられますし、市場でいくらでも買い物できるので大丈夫です!」
イーヅルーの街にいたころは、海産物も釣りとかで大量にゲット~! とかそんなことを想像していたんだけど、お姫様の船での釣りで、私に釣りの才能がないことには嫌というほど気付かされたからね。もう釣りはいいのです。
「ってことは今後の予定はダンジョン攻略か! く~、燃えてきたぜ!」
「ああ・・・・・・」
「護衛とか表向きの理由は一応あるが、俺達としちゃあ本命はダンジョンだしな!」
「だな! 今から楽しみだぜ」
「望んでいたこととはいえ、緊張しますね」
ジェームズさん達は私の護衛という名目でこの鬼が島に来たけど、出来れば実戦をして成長したいっていう裏の目的があったもんね。ここはジェームズさん達のためにも、釣りよりダンジョンにいる海のモンスターだね!
「ふふふ、それじゃあ明日はダンジョンにもぐるための準備になるかしら?」
「そうですね。そうしましょう!」
「ああ、俺達もそれで構わない。それで、何日くらいもぐるんだ? いきなり長期間もぐったりはしないだろ?」
「そうね、私達はお互いの戦い方も実力も詳しく知らないから、最初は様子見を兼ねて一泊くらいにしましょうか?」
「はい!」
「わかったぜ。じゃ、明日は買い出しなんかをするとして、出来れば7人でどう戦うのかの打ち合わせもしたいな。俺達は見ての通り前衛3人、弓1人、ヒーラー1人のパーティーなんだが、俺達のパーティーにどうやってさくらさんとゼニアさんを組み込むのがいいのか、考えたいんだ。ゼニアさんはソロハンターって話だったから遊撃役で好きに動いてもらってもいいんだが、護衛対象のさくらさんの実力はちゃんと把握しておきたいからな」
それは大事だよね。いくら私達の目的が海のモンスターとはいっても、ダンジョンに行く以上、モンスターとの戦闘は想定しないとだもんね。そうなると当然みんなの連携が大事になるよね。
でも、護衛対象の私の実力うんぬんの下りは納得できない。それじゃあまるで私の戦闘能力が低いみたいな言い方だよね。確かに純粋な私の戦闘能力は低いけど、ハロルドスレイヤーに毒煙玉のある今の私の実力は、ハンターランク4なんですからね!
「ええ、もちろん構わないわ。ハンターギルドには訓練場があるから、そこで軽く手合わせしましょうか」
ゼニアさんは私の心情を察してくれたのか、単に戦い方を教えあうとか、実力を見せあうっていう方法じゃなくて、手合わせを提案してくれる。
「いいな、そうするか! お前達もいいだろ?」
「「「「もちろんだ」」」」
そしてジェームズさん達もその提案を快諾する。強さを求めるジェームズさん達にとって、ハンターランク6のゼニアさんと勝負出来る機会はまたとないチェンスだもんね。断らないと思ったよ!
「私も当然おっけいです! 私の実力、楽しみにしててくださいね! 私とハロルドスレイヤーは、ジェームズさん達にも負けませんよ!」
「ほほう、俺個人ならまだしも、俺達に負けないってか?」
「もちろんです。私はこれでもハンターランク4ですからね。世間一般では中堅ハンターなんですよ!」
ハンターのランクは1が初心者、2が半人前、3でようやくなんとか一人前っていう扱いをされて、ランク4ともなると中堅、あるいはベテラン扱いされるのみたいだからね。いくら軍人さんのジェームズさん達が相手でも、中堅ハンターとして、ただ守られるだけの存在になるわけにはいかないのです。
それに、ジェームズさん達は軍人さんとはいえ、まだ新兵扱いだったはず。なので、ハンターランク4の中堅ハンターとして、そもそも簡単に負けられないのです! もちろん1対5だと私のほうが圧倒的に不利だけど、私には毒煙玉があるからね。範囲攻撃の前に、数的不利はそこまで問題じゃないのです! というか、1対1を5回するような勝負のほうが、対策をされそうで怖いよね。
「いいだろう。さくらさんの剣の腕前、俺達が確かめてやるぜ!」
「ふっふっふ、受けて立ちますよ!」
しめしめ、ジェームズさんってば、私がハロルドスレイヤーだけで戦うと思いこんでるよね? 私が毒煙玉のことを一切発言しなかったのは、毒煙玉こそが本命だからなのです。そう、これは盤外戦術っていうやつなのですよ! 本命が毒煙玉だって分かった時のジェームズさん達の顔が、今から楽しみです。ふ~っふっふっふ!
「ええ」
「はい」
熊さん達との毛並み勝負を終えたその日の夜、私達は全員で集まって明日以降の予定をきめることにした。
ジェームズさんの機嫌も、毛並み勝負が良かったのか、お夕飯を食べたのが良かったのかはちょっと不明だけど、今ではすっかり元通りだ。あの男みたいな敬語モードは、精神的にこたえるものがあるから、本当によかったよね。
「俺達はさくらさんの護衛だからな、さくらさんとしては何したいんだ?」
「私もこの島ではさくらさんに合わせる予定だったから、さくらさんに合わせるわ」
私のこの島でやりたいことって言ったら、もちろん美味しい海の幸を食べることだよね。美味しい海産物を食べて、さらに普通の海産物より美味しいとされる海のモンスターを食べることこそ私の目的だから、ここはハンターギルドで聞いたように、ダンジョンの下層を目指すことが私のやりたいことになるのかな?
「私の目的は美味しい海産物と海のモンスターを食べることなので、ハンターギルドで聞いた、ダンジョン下層の海のモンスターを狩りに行きたいです!」
「あら? 普通の海産物はいいのかしら?」
「はい。普通の海産物は狩りに行かなくても、この街のご飯屋さんでいっぱい食べられますし、市場でいくらでも買い物できるので大丈夫です!」
イーヅルーの街にいたころは、海産物も釣りとかで大量にゲット~! とかそんなことを想像していたんだけど、お姫様の船での釣りで、私に釣りの才能がないことには嫌というほど気付かされたからね。もう釣りはいいのです。
「ってことは今後の予定はダンジョン攻略か! く~、燃えてきたぜ!」
「ああ・・・・・・」
「護衛とか表向きの理由は一応あるが、俺達としちゃあ本命はダンジョンだしな!」
「だな! 今から楽しみだぜ」
「望んでいたこととはいえ、緊張しますね」
ジェームズさん達は私の護衛という名目でこの鬼が島に来たけど、出来れば実戦をして成長したいっていう裏の目的があったもんね。ここはジェームズさん達のためにも、釣りよりダンジョンにいる海のモンスターだね!
「ふふふ、それじゃあ明日はダンジョンにもぐるための準備になるかしら?」
「そうですね。そうしましょう!」
「ああ、俺達もそれで構わない。それで、何日くらいもぐるんだ? いきなり長期間もぐったりはしないだろ?」
「そうね、私達はお互いの戦い方も実力も詳しく知らないから、最初は様子見を兼ねて一泊くらいにしましょうか?」
「はい!」
「わかったぜ。じゃ、明日は買い出しなんかをするとして、出来れば7人でどう戦うのかの打ち合わせもしたいな。俺達は見ての通り前衛3人、弓1人、ヒーラー1人のパーティーなんだが、俺達のパーティーにどうやってさくらさんとゼニアさんを組み込むのがいいのか、考えたいんだ。ゼニアさんはソロハンターって話だったから遊撃役で好きに動いてもらってもいいんだが、護衛対象のさくらさんの実力はちゃんと把握しておきたいからな」
それは大事だよね。いくら私達の目的が海のモンスターとはいっても、ダンジョンに行く以上、モンスターとの戦闘は想定しないとだもんね。そうなると当然みんなの連携が大事になるよね。
でも、護衛対象の私の実力うんぬんの下りは納得できない。それじゃあまるで私の戦闘能力が低いみたいな言い方だよね。確かに純粋な私の戦闘能力は低いけど、ハロルドスレイヤーに毒煙玉のある今の私の実力は、ハンターランク4なんですからね!
「ええ、もちろん構わないわ。ハンターギルドには訓練場があるから、そこで軽く手合わせしましょうか」
ゼニアさんは私の心情を察してくれたのか、単に戦い方を教えあうとか、実力を見せあうっていう方法じゃなくて、手合わせを提案してくれる。
「いいな、そうするか! お前達もいいだろ?」
「「「「もちろんだ」」」」
そしてジェームズさん達もその提案を快諾する。強さを求めるジェームズさん達にとって、ハンターランク6のゼニアさんと勝負出来る機会はまたとないチェンスだもんね。断らないと思ったよ!
「私も当然おっけいです! 私の実力、楽しみにしててくださいね! 私とハロルドスレイヤーは、ジェームズさん達にも負けませんよ!」
「ほほう、俺個人ならまだしも、俺達に負けないってか?」
「もちろんです。私はこれでもハンターランク4ですからね。世間一般では中堅ハンターなんですよ!」
ハンターのランクは1が初心者、2が半人前、3でようやくなんとか一人前っていう扱いをされて、ランク4ともなると中堅、あるいはベテラン扱いされるのみたいだからね。いくら軍人さんのジェームズさん達が相手でも、中堅ハンターとして、ただ守られるだけの存在になるわけにはいかないのです。
それに、ジェームズさん達は軍人さんとはいえ、まだ新兵扱いだったはず。なので、ハンターランク4の中堅ハンターとして、そもそも簡単に負けられないのです! もちろん1対5だと私のほうが圧倒的に不利だけど、私には毒煙玉があるからね。範囲攻撃の前に、数的不利はそこまで問題じゃないのです! というか、1対1を5回するような勝負のほうが、対策をされそうで怖いよね。
「いいだろう。さくらさんの剣の腕前、俺達が確かめてやるぜ!」
「ふっふっふ、受けて立ちますよ!」
しめしめ、ジェームズさんってば、私がハロルドスレイヤーだけで戦うと思いこんでるよね? 私が毒煙玉のことを一切発言しなかったのは、毒煙玉こそが本命だからなのです。そう、これは盤外戦術っていうやつなのですよ! 本命が毒煙玉だって分かった時のジェームズさん達の顔が、今から楽しみです。ふ~っふっふっふ!
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