はんぶんにゃんこ

ぴぴぷちゃ

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第26話 行方不明なんてなかったことにしちゃおう大作戦!

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『ガーベラさん、ただいま戻りました』
「あら、さくらちゃんおかえりなさい」
『ピンクのポーションを10個と、普通のポーションを90個作ってきました』
「あら、そんなに作ってきてくれたの? 魔力は大丈夫?」
『はい! 大丈夫です。ただ、この青いポーションのランクがわからないのですが、教えてもらってもいいですか?』
「ええ、いいわよ。1本借りるわね」
『はい』
「これは、高ランクのポーションね」
『このギルドで使う分ってありますか?』
「朝もらったポーションだけで十分よ。空き瓶10本分も頂いちゃったからね。そうそう、支払いのお金が少し大きいお金になっちゃうけどいいかしら?」
『はい』
「じゃあ、これね」
『あ、この間ガーベラさんに預けた魔法のカバンの中に入れておいてもらってもいいでしょうか?』
「そういえば預かったままだったわね。いいわよ、入れておくわね」
『ありがとうございます! そのかばんの中にはモンスターの牙とか爪が入っているのですが、今必要な物だったりしますか?』
「そうね、今は大丈夫かしら? 牙とか爪は武器を作るのに使うんだけど、あと1週間だと新規の武器を作るには、ちょっと時間が足りないのよね」
『わかりました。じゃあ、そのまま預けておいていいですか?』
「ええ、いいわよ。責任をもって預かるわね」
『ありがとうございます! それでは、ちょっと軍人さん達に売ってきますね』
「ええ、行ってらっしゃい」

 私は意気揚々と宿屋、湖の貴婦人へと向かう。湖の貴婦人は、薬師さくら行方不明事件の現場だ。本来なら、私が一番近づいてはいけない場所なんだけど、ここはあえて問題解決のために突撃することにしたのです。

 ふっふっふ~。私は思いついちゃったのです。そう、薬師さくら行方不明事件解決作戦を! 作戦名は、行方不明なんてなかったことにしちゃおう大作戦!

 作戦の概要は、ステップ1、猫ボディで部屋に忍び込みます。ステップ2、何食わぬ顔でご飯を食べに食堂に行きます。ステップ3、何か言われたら、この街がピンチだって聞いて、薬を作りにちょっとだけ外出していたと言います。現物がいっぱいあるわけだし、完璧だね! 

 一応さらに突っ込まれたことを聞かれた場合に備えて、いろいろと言い訳を考えておこうかな。宿の人に黙って出かけたことに関しては、思いついたのが夜だったからってことにしよう。それと、ドアを開けないでっていう札をかけたから、大丈夫だよね? ってことで押し通しちゃえばいいね。ふふふ、怖いくらいに完璧だね!



 屋根の上をぴょんぴょん飛べば、あっという間に湖の貴婦人へ到着だ。後は隠蔽魔法を発動して、こっそり部屋に侵入すれば、ステップ1クリアだ。私は隠蔽魔法を使って空を歩き、ベランダへと近づく。

 うん、窓から見ても部屋の中には誰もいないね。よし、サイコキネシスで窓を開けて、侵入成功! 人間ボディになると魔法のカバンが使えなくなっちゃうから、今の内にポーションを全部テーブルに出してっと。

 ぽふん!

「ん~! 久しぶりに人間ボディになると、ついつい伸びをしたくなっちゃうわね」

 私は部屋の中を軽く確認する。

「服もバッグも剣も、一応置いておいた場所にそのままあるわね。時間も丁度お昼時だし、ここはステップ2に移行するべきね」

 私は着替えをしてから部屋を出て階段を降り、何食わぬ顔で食堂へと向かう。途中宿の人に出会った時に、すんごいあぜんとした顔をされた後で、猛ダッシュで逃げられたけど、きっと私のことを報告にでも行ったのね。

 何食わぬ顔で食堂に足を踏み入れた私だったんだけど、別の店員さんが私の顔をみて固まった。席に案内してほしいんだけど、固まったまま動かない。

「あの、席に」
「は! し、失礼しました! すぐにご案内いたします!」
「ありがとうございます」

 再起動した店員さんに、なぜか個室に通された私は、メニュー表を見て注文を考える。そして、なぜか店員さんはず~っと部屋の入口にいる。あれ? 前回メニューを考えている間って、店員さんいたかしら? まあ、すぐにオーダー出来るのは便利だし、いいかな?

「ステーキセットとオレンジジュースをお願いします」
「はい、かしこまりました」

 店員さんへオーダーを済ませた私は、料理が出てくるのをただただ待つ。この時間が耐えられないのよね。日本でだったらスマホとかいじれたし、妖精の国のハンターギルドなら話し相手がいるけど、この街で人間としての私は独りぼっちだ。話しかけようにも、すでにVIP待遇なのが広まっているのか、この宿の人は従業員どころかお客さんまで私と距離がある。

 コンコンコンッ

 ノックの音で我に返る。ちょっと嫌なことを思い出しちゃってたけど、お待ちかねのご飯がやってきたみたいだね!

「どうぞ、ステーキセットとオレンジジュースになります」
「ありがとうございます」

 私は早速届いたステーキセットに舌鼓を打つ。うん、やっぱり高級宿屋さんなだけのことはあるね、妖精の国のハンターギルドの食堂の味にも負けないいい味だ。私は無言でバクバクと食べる。そして、ステーキセットを食べ終えてオレンジジュースを飲んで少しくつろいでいると。

 コンコンコンッ。

 頼んだものは全部来ているのに、誰が来たんだろう?

「さくら様、オーナーのジュディでございます。もしよろしければ、デザートをご一緒してもよろしいでしょうか?」
「はい」
「失礼いたします」

 ジュディさんはデザート共に現れ、私の正面に座る。

「こちら、オレンジのシャーベットになります。お肉の後にさっぱりと食べられる、おすすめの品になります」
「ありがとうございます」

 私は遠慮なくオレンジシャーベットをぱくぱくとたべる。うん、これは美味しい!

「美味しいです!」
「まあ、お口に合ったようで何よりですわ。ところで、少々お伺いしたいことがあるのですがいいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「先日警備部隊のバーナード隊長が、さくら様を訪ねてまいりました。その際お部屋にいらっしゃらなかったようなのですが、どちらに行ってらしたのでしょうか?」
「はい、この街がピンチだという噂を聞きましたので、追加のポーションを作っておりました」
「部屋でですか?」
「いいえ、私のポーションは、材料に新鮮な植物を使用しますので、外に作りに行きました」
「そ、そうですか。宿の物に知らせていただければ、護衛等お付けしたのですが」
「それには及びません。思いついたのが丁度夜でしたし、私一人なら隠密行動がとれますので、そのほうが安全なのです。ご迷惑をお掛けしないように、ドアを開けないでほしいという札をかけていたので、大丈夫でしたよね?」
「え、ええ」

 おお~、決まった! 私の言い訳が完全に決まったね! でも、ここで手を緩める私じゃないよ。このままたたみかける!

「そういえば、バーナードさんの予定ってわかりますか?」
「バーナード隊長の予定ですか?」
「はい、追加のポーションを売りたいので」
「そういうことでしたら、手の空いた時にさくら様の部屋に行くようにバーナード隊長に伝えておきますね」
「ありがとうございます」

 その後、ジュディさんと別れて私は部屋に戻った。

 そして、ベッドにダイブした私は、ついつい独り言を言ってしまう。

「ふふふ、完璧ね! 全部作戦通り! 怖いくらい完璧な作戦だったわ! これで旅の薬師行方不明事件は、何事もなく無事に解決ね!」


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