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#26 準備②

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 食材を買い終え、同じ市場にある以前鉱石屋があった場所に匠真達はやって来た。

 いたらいいなという程度の考えだったが、そこには以前と同じ店主に佇まいの屋台があった。


「おはようございます」

「おう、いらっしゃい……って、この前の兄ちゃんじゃねぇか!」

「ご無沙汰してます。 今は営業中ですか?」

「ああ、もちろんだ。 なんか買ってくかい? うちの商品は量も質もしっかりしてるぜ!」


 店主の名前を聞いたところ、この人はジストンさんと言うそうだ。 

 今後もお世話になるかもしれないので、聞いておく事にした。


「そういえば、鉱石とかってどこから仕入れてるんですか? あ、もちろん言いたくなかったら結構ですよ」

「いや、別に言っても問題はないぞ。 鉄鉱石とか銀とか金、珍しいところだとミスリルはそれぞれの鉱山から採掘出来るから、その辺りから仕入れてるぞ。 ただ、鉱山だけじゃなくてダンジョンからも鉱石は採掘出来て、鉄鉱石とかも取れるがダンジョンでは魔石関連も採掘出来るから、そういうのが取れるダンジョンは重宝されてるな」

「そうなんですね。 このお店だけでもかなりの量と種類ありますけど、枯渇したりしないんですか?」

「鉱山は枯渇する事もないことはないが、ダンジョンの鉱石が枯渇したって話は聞いたことないな。 それに、そういうダンジョンには魔物の鉄やらミスリルとかで出来たゴーレムもいるらしいから、この世界から鉱石が無くなるなんて事はないんじゃないか?」


(鉄で出来たゴーレムなんているのか。 ひょっとしたらダイヤモンドで出来たゴーレムとかもいるのだろうか? 地球で出たら争いが起きそうだな)


「なるほど、いい事を聞かせてもらいました。 ところで、この鉱石はなんですか?」

「それは浮空石だな。 魔力を込めると宙に浮くんだよ」


 ジストンはそう言うと、浮空石を手に取り、魔力を流して宙に浮かせてみせた。

「こんな感じで魔力を操作すれば上下左右に割と自在に動かせるぞ。 魔力を込めた量で飛ばせる時間とかスピードが増やせるが、俺ぐらいの魔力量だと全力で魔力を込めて10分くらいが限界だな」

「面白いですね。 用途としてはどんなものがあるんですか?」

「それがなー、この鉱石が発見されたのはここ最近…… と言っても数年前だかの話なんだが、まだこれといった使い道は発見されてないんだよ。 武器にするにしても鉄より脆いし、仮に武器にしたとしても動かすのにはそれなりの魔力がいるから、魔法使いじゃないととてもじゃないが使えない。 魔法使いも使うなら杖で十分って感じでなぁ。 魔道国家の研究者や鉱山国家のドワーフが試行錯誤するために大量に買うが、最近見つけられたダンジョンでそれ以上の量が採れるもんで、需要が追いついてなくて売れ残っているのが現状だな」


(武器として使えないか…… 本当にそうなんだろうか? 僕の中では色々とアイデアが浮かんできたんだけどな)


「ジストンさん、その浮空石買いたいんですけど、おいくらですか?」

「お、なんだ興味が出たのか? 兄ちゃんは相変わらず用途が無いようなもんばっかり欲しがるなぁ。 値段は鉄鉱石の半分でいいのか。 全部買うのか?」

「はい、買わせてもらいます。 あ、こっちの鉱石はなんですか?」

「それは色石つって、主にアクセサリーとかに使われるもんだな。 これも買うかい?」

「んー、それでは、1つずつください」

「それなら、浮空石と合わせて金貨2枚でいいぞ!」


 僕はお金を払い、かなりの量の浮空石と色石を手に入れた。 

 ちなみに色石の色は赤、橙、黄、緑、青、黒、紫の7色だ。 

 武器の色付けとか出来ないかと思い買ってみた。 

 
(分離スキルで色素だけ分離させて、武器に合成すれば、無駄な成分を入れずに色付け出来るだろう)


「まいど! 何に使うかは知らないが、なんか面白そうなもんが出来たら見せてくれよ! そんでもって、またうちの店で色々と買ってくれ!」

「分かりました。 また来ますね」


 そう最後に言って匠真はジストンと別れた。 

 そんな中、ノアルは匠真が鉱石屋を見ている間、反対の通りにある店を見ていた。

 ノアルに近づくと、匠真の接近に気付かないくらいに何やら熱心に商品を見ていた。


「何か、気に入ったものあった?」

「!? ……びっくりした」

「あはは、ごめんごめん。 何かすごい熱心に見てたね? 気に入ったの?」

「……綺麗だから見てた。 けど、ちょっと高い」


 匠真も見てみると確かに綺麗な色や形状をしている指輪やネックレスやブローチなどの装飾品が沢山並べられていた。

 その中でも、ノアルは指輪を見ていたみたいだ。 


(やっぱり女の子だから、綺麗なものとかには惹かれるんだろうか)


 でも、ノアルの言う通り少し値が張るものばかりだ。 

 とても質が良さそうではあるから、妥当な値段だとは思うが。

 買えなくもないが、今のノアルは恐らくそれを望まない気がするので、どういうデザインなのかだけ見てその場を後にすることにした。


「……ショーマは終わった?」

「うん、待たせてごめんね? ノアルは何か買う?」

「……大丈夫。 次は道具屋?」

「そうだね。 それじゃあ、行こうか」

「……ん」



     *



 匠真達は通りを抜け、少し歩いたところにある道具屋に来ていた。 

 かなり大きい店舗で、二階にも商品が売られているみたいだ。


「いらっしゃいませ。 冒険者の方ですか?」


 若い女性の店員さんが声をかけて来た。


「はい、そうです。 明日から遠出しようと思っているので、色々と揃えたいと思って来ました」

「そうですか。 こちらに店内の見取り図があるので、お目当ての品を探す参考になさってください。 なにかご不明な点がございましたら、私どもに声を掛けてくださればいつでも対応いたします」

「ご丁寧にありがとうございます。 色々と見させてもらいますね」

「はい。 どうぞごゆっくり」


(うん、いい店だな。 店員さんの対応然り、店内の雰囲気もいい感じだ)


「それじゃあ、色々と見て回ろうか。 ノアルも何か気になる事とか欲しいものとかあったら教えてね?」

「……ん、了解」


 匠真達は店内を歩き回り、必要なものを揃えていく。

 毛布やタオル、鍋やフライパンにスプーンやフォーク、大小様々なお皿などから、寝袋や雨を凌ぐための組み立て式の屋根みたいなものまで売っていたので、それらをまとめて購入する事にした。

 屋根や簡単な皿などに関しては、匠真も作れるかもしれないが、作るのに沢山の材料がいるだろうし、大きい物を作るとなるとそれなりの魔力を必要とするだろうからという事で値段も手軽だったため購入した。

 あと、衣服などのの修繕用に無地の布を何色かと地球で見たような裁縫道具を一式買っておいた。 

 一階で選んだ物としてはそれくらいで、1度、店員さんにお会計してもらった。 

 値段は占めて金貨4枚程だった。 


(だいぶお買い得なんじゃないかな? 地球で買ったらもう少ししそうなものだけど)


 買った物をアイテムボックスにしまい2階に行くことにする。


「二階は魔道具が売ってるのか」

「……そうみたい」


 階段を上がると一階よりスペースは大分狭いが、所狭しと商品である魔道具が置かれていた。 

 イメージで言うと雑貨屋さんみたいな感じだ。

 商品の前には値札と、どんな効力があるのかなどがざっくり書いてある。

 色々と見て回っていると、朝、ゲイルが言っていた結界石が売られていた。 

 台座に丸い石を置いて、それを結界を張りたい範囲の四方に置き、魔力を流す事で起動するらしい。 

 広さによって消費する魔力が変わってくるみたいだ。 

 鑑定してみると、認識妨害の付与がされていて、結界の範囲内の人間は認識されず、外からは普通の風景に見えるそうだ。

 確かに夜寝る時とかは便利だろうが、値段が金貨3枚という事でかなり高めだ。

 そこで匠真はステータス欄を開いて、認識妨害の付与が出来るか確認したところ、どうやら付与できるみたいなので、これは買わずに自分で作る事にした。


「……ショーマ、これどう?」

「ん? なにそれ?」


 ノアルが指差しているのは、そこそこ大きめの、壁にかかった絨毯だった。 


(えーっと、なになに? 防汚の付与がされているのか……)


「うん、いいかもね。 地面に広げても大丈夫みたいだし、値段も手頃だし買おうか」

「……ん!」


 絨毯の値段は金貨2枚だった。 

 この大きさで、魔法付与もしてあるなら妥当なところだと思う。 

 店員さんに会計してもらって、これもまたアイテムボックスにしまっておく。 


(そういえば、ホイホイ色んな物入れてるけど、アイテムボックスの容量とかは大丈夫だろうか? いっぱいになった気配は今のところないのだけれど……)


 そんなこんなで道具屋から出た頃には時刻は昼を過ぎ、夕方の一歩手前くらいの時間になっていた。


「それじゃあ、宿に戻ろうか。 まだなにか買った方がいいものとかあるかな?」

「……十分だと思う」

「そっか。 それじゃあ戻って、明日からのご飯を作っておこうか」

「……ん、楽しみ」


(久しぶりの料理だな。 楽しみでもあるけど、ちゃんと作れるかちょっと不安だな)
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