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#21 勘違い

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 匠真は食堂から出て新しく取った部屋に向かう。 

 今度の部屋は一階の奥の方の部屋だ。

 廊下を進んでいくと、少し歩いたところに匠真の持っている鍵と同じマークの扉があった。 

 鍵を開け中に入ると、部屋の中は1人部屋よりも1.5倍くらい広く、ベッドが2つ置いてある結構いい感じの部屋だった。

 生活魔法のクリーンを使って一応服とか体を綺麗にしてからベッドに座り、ステータスを開いた。


(今の僕のパラメーターは……)


 ざっと確認したところレベルが11に上がり、スキルポイントを新たに手に入れていた。


(スキルポイントも溜まってきたな。 何に使おう?)


 何かあったときのためにある程度は残しておきたいが、それにしてもまぁまぁ余っている。

 そしてこのスキルポイントなのだが、どうやらユニークスキルのレベルを上げる事も出来るらしい。

 しかし、スキルポイントで取ったスキルより多くのポイントを必要とするようで、鍛冶師のレベルを3に上げようとすると残りのスキルポイントが僅かになってしまう。


(うーん、でも鍛冶師のレベルはどんどん上げたいな。 少しは残るし使える内に使っておこう)


 という事で、ショーマは鍛冶師のレベルを上げる事にした。



 鍛冶師 Lv2→3
           ↓
・魔石加工を習得、技術のパラメーター補正上昇



(おお、魔石が加工出来るようになったらしい)


 魔石加工ができるようになったらしいが、魔石の定義が分からなかったので、ステータス欄で調べてみる。

 すると、魔石っていうのは魔物から取ったものもそうだが、この前市場の鉱石屋で見た魔熱石も魔石の部類らしく、一般的な定義としては、魔力を帯びていたり、魔力によって何らかの反応を見せる鉱石が魔石と呼ばれるそうだ。


(魔石かぁ、何に使えるのかな?)


 今のところ、どういう風に魔石を使えばいいか分からない。 

 魔道具のバッテリーみたいな感じで使われてるという事はなんとなくわかっているが、それ以上の知識はないのだ。


(魔石は持ってるけど、単体では意味ないだろうし、また今度、色々と試してみることにしよう。 それと、スキルレベルは上げてみた感じメリットしかないし、今後もポイントが貯まったらどんどん上げた方がいいね。)


 コンコンッ


「……ショーマ、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよー」


 ガチャリと音を立てて、ノアルが部屋へと入ってきた。


(僕が食堂を出てから、30分くらいは経ったかな?)


「おかえり。 ララさん達とはどうだった?」

「……いっぱい撫でられた。 耳とか頭とか尻尾とか」


(あー、耳も触られたのか。 たしかに自分と違うものって何故か分からないけど気になって触ってみたくなるよね。)


「……ショーマは何してたの?」

「僕は今日の戦闘で得たものとかの確認かな。 近い内に遠出するだろうし、所持金とかも確認してたよ」

「……どこに遠出するの?」

「え? 獣人国に行くんじゃないの?」

「……え?」

「あれ、違うの?」


(この前、ノアルは獣人国に行くと言ってたと思うんだけど違ったっけ?)


「……それは、ギルドの依頼とか?」

「違うよ? ノアルが獣人国に戻るって言ってたから僕も行こうと思ってたんだけど、違った?」

「……なんで?」

「なんでって、もしかして1人で行くつもりだったの?」

「……当然」

「当然って…… あんな大怪我して死にかけてた所にまた1人で行くの?」

「……だって、一緒に行く人なんて……」

「僕がいるよ」


(なんか、食い違いというかなんというか、お互いに勘違いしてたみたいだ。 口に出して伝えておくべきだったな)


 ベッドから立ち上がって、ノアルと正面から向かい合い、匠真は話を続ける。


「そもそも、僕とノアルでパーティー組んだのも、そういう考えがあったからなんだけど、ノアルは違った? もちろん、僕と一緒は嫌とかだったら僕は行かないけど……」

「……嫌なんかじゃない。 けど、どうして? 危ないかもしれないと分かっているのに」

「僕が一緒に行けば、ノアルは1人よりも安全でしょ? それに、困ってるならほうっておけないよ」

「……ショーマにとって、いい事は無い」

「それでも、困っている人がいて、それを解決できる力を僕が持ってるなら、僕はその人を助けたいよ。この街とか国、あるいは世界中の人を助けたいとか、そんな事は思ってないし、出来もしないけど、目の前で困ってる人くらいなら僕でも助けられるかもしれない。 他の人に偽善と言われても構わない。 ただ今、僕はノアルを助けたい。 それじゃあダメかな?」


 今、言ったことが匠真が思う全てだ。 

 
(こんなに大きな力を手にしておいて、目の前の困ってる女の子1人助けられないなんて、そんなのは嘘だ)

 
 なにより、匠真がノアルの手助けをしたいと思ったのがノアルに着いていく1番の理由である。

 世の中の困ってる人を全て助けるなんて事は絶対にできない。 

 中には、ある人を助ける事で違う人が不幸になる事だってあるだろう。 


(そういう事にならないよう、僕はこの力を使わなければいけない。今回、ノアルを助ける事は僕がしたい事だ。 せっかく仲良くなった人がいなくなってしまったら、寝覚めが悪いことこの上ないだろう)


 ただそう思うと、ノアルを助けるというのも自己満足みたいなものなので、自己中心的な考えなのかもしれない。

 それでも、ノアルを1人で行かせるという選択肢は匠真の中にはなかった。


「……ほんとに、いいの?」

「悪かったらこんな事言わないよ。 改めて言うけど、僕もノアルと一緒に行っていいかな? 君の助けになりたいんだ」

「……巻き込むのはダメだと思って、1人で行こうとしてた。 でも、本当はノアルもショーマに来て欲しかった……!」

「今日の依頼の時も言ったけど、お互いを守り合おうよ。 そうすれば、無事にたどり着けるだろうから」

「……ん、ありがと、ショーマ」


 そう言ってノアルは、匠真の体に抱きついてきた。 

 嬉しさからか、瞳にはじんわりと涙が浮かんでいる。


「あ、あの、ノアルさん? 急に抱きつかれたりしたらびっくりするんだけど……」

「……嬉しくて」

「……そっか」


 心臓に悪いが、振り払うのも違うと思うので、匠真は優しくノアルの頭を撫でる。

 2人はしばらくの間、そのままの体勢でお互いの体温を感じ合っていた。
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