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幽州戦争編 第一章 挙兵

四 レイ、山賊を求める 一

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 リュウユウの屋敷の近くには滝壺がある。河川から流れてきた水が山を下り、この滝に置いてより大きな河川へと流れていくのである。この滝壺は屋敷の貯水池の役割を担っており、生活用水などは全てここから調達している。冷たくて透明で綺麗な、飲水にも適した上等な水であった。リュウユウや、レイ、クライムはよくこの滝壺で沐浴し体を洗う。レイは水遊びも兼ねているが。この日、レイとクライムは裸になり、共に沐浴を行っていた。クライムは水に浸かり、体を洗う。レイは直接滝を浴びて修行の真似事をしている。しかし沐浴している今は修行ではなく、体を洗う事とリラックスと水遊びが重点であった。
 レイは滝に打たれながら、どうすれば師に一撃を入れられるか考えていた。自分は実力不足でまだまだリュウユウにあしらわれてしまう。しかしあと少しで一撃を見まえるような気もしているのだ。もっと素早く動ければ、相手の隙を誘い、そこに打ち込む機会が作れれば、行けそうな気がする。などと、ぼんやり考えていた。

「むむむ……あとちょっとな感じするんだけどなぁ」

 レイは歩いて滝から離れると体を浮かし背泳ぎする格好になって水に身を浮かせた。そのままクライムの方に向かってスイスイっと器用に泳いでいく。クライムはのんびりと水浴びを楽しんでいたが、レイが近付いてくると自身も彼女の方によっていく。レイが浮いたままクライムをただ見ている。クライムはレイの体に触れてお腹を手でなぞり始めた。レイはくすぐったそうに笑みを浮かべる。

「兄ちゃん」
「何?」

 レイの問い掛けにクライムが返事する。変わらずクライムはレイの体をなぞっていた。
 レイの裸なんてクライムにとって珍しいものでは無い。いつもパンツ一丁で裸のようなものだし、全裸の状態だって日常的に見ている。そもそも赤子の頃から見ていたし、下の世話をした事も沐浴させた経験もあるのだ。
 クライムも大人の女性を見て興奮はする。レイの裸を見てもあまり興奮はしない。見慣れているからだろうがやはり赤子時代から見ているせいもあるだろう。しかし、それでもレイの体は女の子だった。男の子の体とは勝手が違う。三歳児の体とは言え、異性の体に全く興味が無いといえば嘘になる。いわゆるスキンシップに近い行為だが性欲もあったろう。クライムはレイの体を愛でるように撫でている。レイはクライムに身を預けるように何も言わなかった。レイも、触られる事を楽しんでいた。

「どうしたら先生に一撃入れられるかなぁ?」
「……まぁ鍛錬すればいつかは行けるんじゃね?」

 レイは着実に強くなっていっている。いずれはレイの望む結果が訪れるだろうとクライムは踏んでいた。
 今のレイの問題点を上げるとするなら、まだ動きに無駄が多く最適化出来ていない事と、単純に瞬発力など身体能力が足りていない事だ。どちらも鍛錬を続けていれば改善される事柄だ。体が小さく基礎筋力にどうしても限界があるが気による身体能力の向上でカバー出来る。レイがするべきはひたすら鍛錬だ。気の力を高める鍛錬と強い気を纏えるように体を鍛える事。体が小さいため強い気を纏うのはそれなりに大変だ。纏える量が大人より小さいから、コントロールや気の質を向上していくしかない。無論それだけではダメで結局は巨大な気を纏えるように体を鍛える他ないのだ。レイの小さな体ではどうしても不利となるがそこは頑張って鍛えろとしか言えない。そしてその事は何度もレイに伝えているし、レイも理解している。望む結果が訪れるのはもう時間の問題であった。レイは早く結果を出したいと焦っている。クライムは気長に構えれば良いと言っているがすぐに結果を出したがるのは近頃の若者らしいのだろうか。クライムもまだ十二の子供なのだが。
 クライムの手はレイの体をなぞっていく内に不意に陰部に触れそうになった。慌てて動きを止める。レイは特に何も気にしていない様子だった。大の字になって水面に浮いている。股をだらし無く開いていて陰部はこれでもかと自身を主張していた。実は先程からクライムの心にレイの大事な所に触れたいという欲が生まれていた。何気無く、レイの陰部に触れる。レイは驚いたのか体を震わし小さな喘ぎを零した。クライムも驚いて手を離す。恐る恐るレイの顔を見てみると嫌がる素振りは無く、物欲しそうな顔でクライムを見ていた。

「……兄ちゃん」
「な、何だ?」
「別に触るなとは言わないけどいきなり股間を触られるとびっくりするよ」
「……すまん」
「謝らないでいいよ。それじゃあ続き、して良いよ」

 はにかむような表情で告げるレイ。その頬はほんのり赤くなっていた。レイから正式な許可が降りた。クライムは熱くなっていたのを抑えていた心のたがを外した。クライムはレイの体に飛び掛かった。子供ながら、まるで獣のような姿であった。クライムも男なのである。妹同然のレイであっても、レイが誘うような真似をするから手を出してしまうのだ。事実レイもそれを望んでいた。
 二人はまだ子供でありながら随分とませた事をやっていた。これは二人の沐浴中によく行われている恒例行事だった。今回はクライムが攻めだったが逆の場合もある。遊びと性欲を兼ねた、男の子と女の子の、ませた遊びなのだ。
 レイとクライムはまるで恋人同士の男女のように体を重ねてお互いに触りあった。陰部はもちろん、胸や腕脚、体、顔に至るまで。クライムはレイの体に口づけし、レイもクライムの陰部に口をつける。まるで、生々しい、大人の情事をする子供達の姿がそこにあった。二人共、体が熱くなり、とても興奮していた。二人は恋人のように愛し合った。
 かたや三歳児の子供、かたや十二歳児の子供。身長百センチメートルと百四十センチメートル。まるで大人と子供程離れた体格差。それを関係無いとばかりに二人は愛し合い体を重ねた。それでも本番だけはしなかった。あくまで前戯だけ。本番には至らない。そこはクライムの心の中での線引きだった。不変幼のレイには出来無い事。それは子供を宿す事。先天的な病気の為に、それだけは叶わない。クライムは間違いが起きないようにそこだけは線引きをしているのだ。レイは本番というものを知らなかった。そもそもこれが前戯と言うことも知らなかった。レイにとっては、義兄とのスキンシップ、遊びでしか無かったのだ。しかしとても親密な遊びだ。男女の仲でしかやらない行為であることは理解している。クライムは妹同然のレイに対して男女の交わりをする事について、快感と同時に罪悪感を感じていた。レイがそれを望んでいて、それを拒否しない自分が少しだけ嫌だった。それでも止められない、止められない。二人は思う存分、愛であった。
 と、そこに老父リュウユウがやってきた。レイとクライムが二人で抱き着いているのを見てまたかと呆れていた。滝壺で体を洗う度にそう何度も戯れ合うのは如何なものかと。二人が愛し合っているのはわかるがいつまでも抱き合っていてはこちらも困るとリュウユウは思っていた。しかも滝壺の前まで接近していると言うのにレイもクライムも自分に気付いていない。武を修める者としては失格である。リュウユウはゴホンと、二人に聞こえるように咳払いをした。レイとクライムは驚いて飛び上がり、音のする方を見る。そこにいるリュウユウがいつからかこちらをずっと見ていたと気付くと二人は言葉を失った。ジワジワと恥ずかしくなっていき、二人は頬を赤く染めて水面にまで顔を隠した。

「あのさ、二人が仲良しな事は結構な事じゃ。戯れ合おうが何も言わん。しかし周囲の変化に気付かないのは武を修める身として如何なものかな?」
「すみません」

 クライムはそれを口にするのが精一杯だった。レイは言葉が出てこず無言のままだ。

「体を洗うのが済んだなら早く上がれ。修行するなり自由にせよ」
「わかりました」
「……はい」

 リュウユウはその場を去った。クライムとレイは互いを見合ってはにかむように笑い合うと滝壺から出ていった。
 その後レイはマイクロビキニパンツを身に着けて一人で稽古をしていた。大きな木の幹に向かってパンチやキックの連打を放つ。そうやって木の幹に穴を開けてへし折れるまで続けるのだ。
 レイは木の幹を相手に取りながら、この先の事を考えていた。リュウユウから挙兵の許可を受けて、その後どのように挙兵するか? 独立するのか何処かの軍に属するのか? レイは独立希望だ。兵士を従えて複数の郡を制圧し、他の勢力と渡り合えるような関係になりたいと思っている。
 レイの居住は幽州福郡福県福市。幽州は霊王朝の外れにある田舎であるが、それ故に何処からも攻められずにいた。幽州の牧は独自に軍を作り、霊王朝には服属しながらも半分独立したような体制を立てていた。妖鬼族の大男、ガルという者だ。
 各郡はガルの支配下にある手下のような者達だった。レイは福郡と各県を支配下に置いて、郡太守になろうと思っていた。もちろん最終的には皇帝となって天下を支配するつもりだ。しかし小規模勢力の内から皇帝を名乗っても名ばかりになるし世に笑われる。順調に上に行くべきである。その為の最初の足がかりはどうするか。レイは目星がついていた。レイが住むリュウユウの館のある山の隣にある別の山は山賊が拠点としている。規模は三百とかなり多い方だ。首領はバギーという男。これを倒し、三百人を支配下に置きたい。山賊はこれまで略奪を繰り返し、金も馬も武器もたくさん持っているだろうし、山賊を叩けば人からも称賛される。まずは山賊を支配下に置き、そのまま福郡太守にでもなってやろう。
 幸いな事に福郡太守は人望が無い。山賊から金を貰って山賊を放置していたりして政治を疎かにしているという噂だ。平和な世では困り物だが、乱世に置いては武器を向ける正当性が生まれやすいので好都合だ。それに役人の多くは金に乗せられて私腹を肥やし、民を軽んじる輩ばかり。前から力ずくで懲らしめてやりたいと思っていたので好都合。山賊を支配下に置いたら福郡太守の城に攻め入って滅ぼしてやろうと思っていた。昔は無理だったが、今のレイの戦闘力なら一人で山賊を懲らしめるくらいは出来る。準備は出来ているというか、レイに武器は要らない。殺すつもりは無いので身一つで乗り込めば良い。後はいつ行動するかだった。まだリュウユウから挙兵の許可は下りていない。しかし、いつでも挙兵出来るように山賊を今のうちに叩いておくのは得策だ。出来る事は早い内に済ませておくべきとレイは思っていた。それに山賊は民から略奪する。これを早く叩いて取り締まるのは悪い事ではない。世に出るための第一歩だ。リュウユウからは目立った行動は取るなと言われている。しかし、レイはもう待つのは疲れたのだ。

「よし。明日、山賊どもを叩きに行こう」
 
 翌日、レイは一人で山賊の住む山へと向かった。
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