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第十四章
ダンジョンを大きくする理由
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開店と同時になじみの冒険者がなだれ込むようにして店の中に入って来た。
その誰もが俺の帰還と商店の再開を歓迎してくれる。
本当にありがたい話だなぁ。
「イナバ様おかえりなさい!」
「ダンジョンが再開されない間他の所に潜ったんですけど、簡単すぎてびっくりしましたよ。」
「ここみたいに罠が複雑じゃないし、よく見たらすぐわかったもんな。」
「ほんと、ここで鍛えられているおかげだよ。」
俺が留守の間に色々と回って来たみたいだけどそんなに簡単だったのか。
逆を言えばうちのダンジョンが難しすぎるのか?
でも一応初心者向けってことになってるからそこまで難しくしているつもりはないんだけどなぁ・・・。
それともあれか。
他所のダンジョンにはあまり罠とかしかけられてないんだろうか。
魔物が主役で罠はおまけ程度なのだとしたら彼らのいう事も納得だ。
でもなぁ、うちみたいな弱小ダンジョンは魔力が足りないからおいそれと魔物を増やすことが出来ないんだよ。
彼らを維持するのにも結構魔力って使うんです。
ほんと無尽蔵に魔力があれば好き放題出来たのに。
世の中うまくいかないものだ。
「それだけ皆さんが成長されているという事です、自信を持ってください。」
「ありがとうございます!」
「さぁ、休んだ分しっかり還元させてもらいますからこれからもよろしくお願いしますね!」
せっかく復帰をお祝いして来てくれているんだ、お世話になった分しっかりとお返ししないと。
って前もそんなこと言った気がするなぁ。
それも大分前じゃなくてつい最近の話だ。
うん、きっと気のせいだろうからこれ以上は考えないようにしておこう。
午前中は定期便のおかげもあって満員御礼、全員フル稼働で何とかさばき切る事が出来た。
お昼を過ぎたころから交代で食事を回せるぐらいには余裕が生まれ、久々にセレンさんのご飯を堪能する。
うん、やっぱりこの味だ。
王都での食事ももちろん美味しかったけどやっぱりセレンさんの食事が一番美味しい。
え、自分の奥さんじゃないのかって?
もちろん美味しいけれどそれはそれこれはこれ。
この答えは満場一致なので喧嘩になる事もございません。
でもこの食事もこの冬いっぱいで一時休止、春からはガンドさん達が新しく宿の主人として赴任してくれることになっている。
この前は挨拶も程々に大変な目に合ってしまったので今度会ったらお詫びしておかないと。
「あ、イナバ様だ!本当に帰って来た!」
「だから言ったでしょちゃんと帰って来るって。」
「この声はシャルちゃんとティオ君だね、空いてきたから中に入っても大丈夫だよ。」
「「はい!」」
外向きのカウンターで接客をしているとその下から元気な声と一緒にぴょこぴょこと動くウサミミが見えた。
どうやら戻ってきたことは無事村中に伝わったみたいだな。
時間が出来たら村の皆にも改めて挨拶しておかないと。
ウサミミはカウンター前を横切りそのまま商店へと入って来る。
ちょうどお客を捌き終えたので後はニケさんにお願いして二人を迎えにカウンターを出た。
「こんにちは二人とも、寒い中ありがとう。」
「すっごい寒かったけど頑張って来たよ!」
「コラ!まずはおかえりなさいでしょ。」
「そうだった、イナバ様おかえりなさい。」
「はいただいま。心配かけてごめんね。」
「大丈夫です絶対に戻って来るって信じていましたから。」
「ありがとう二人とも。」
ニコニコと無邪気に笑うティオ君と俺の顔を見て安心したような顔をするシャルちゃん。
二人の笑顔を見てまた戻ってきたんだなぁと実感する。
今日はこんな事ばかりだ。
っと、そうだった。
「ごめんね納品が滞っちゃって、大丈夫だった?」
「はい、あんまりお買い物しないしその分いっぱい作ったのでまたお願いします。」
「こちらこそ。そうだ!シャルちゃんのポーションは王都でも大人気だったよ。」
「えぇ!私のポーションがですか?」
「シュリアン商店のポーションだっていうだけでお客さんが群がっていてそれはもうすごかったんだから。」
「でも、このお店のポーションってことは私のじゃないかもしれないし。」
「うちはシャルちゃんからしか仕入れていないからね。それに、商店連合の分は他のあるやつと見分けがつかないから。シャルちゃんの印があるやつだけがうちのやつってわかるんだよ。」
「私の作ったお薬が王都にまで・・・。」
どんな感じで大人気だったかまでは言わなくてもいいだろう。
ただのポーションだし特殊な使い方をされる事も無い・・・はずだ。
「だからこれからもよろしくお願いします。」
「はい!私、もっともっと沢山のお薬が作れるようにしっかり勉強します!」
「僕も頑張るよ!」
「ティオ君もしっかり練習して村一番の剣士になってね?」
「はい!」
シルビア様の話ではティオ君もなかなか筋は良いみたいだ。
一年でどうこうという事はないだろうけど体が大きくなればなるほどその実力も上がってくるだろう。
もしかすると本当にこの村から国一番の錬金術師と剣士が生まれるかもしれない。
先が楽しみだ。
「いい返事です。そうだ、そんな二人にだけお土産があるんだけど・・・いる?」
「お土産!?」
「時間がなくて沢山は準備できなかったから二人にだけ、ちょっとまってね。」
一旦裏に戻りシャルちゃんには小さな包み、ティオ君にはちょっとだけ大きな包みを取って来る。
「喜んでくれるといいんだけど。」
「「ありがとうございます!」」
「あの、開けていいですか?」
「もちろん。」
我慢できないと言った感じでティオ君が包み紙を破り、シャルちゃんは丁寧に包みを開けていく。
この辺が性格出るんだよね。
ちなみに俺はびりびりと破るタイプだ。
あ、もちろんもらった相手がいる場合は断って破るけど、正直に言って破った方が早くないですか?
「あ!手袋!」
「私は・・・本?」
「本当はティオ君には剣を握った時にケガをしない様にガンレットにするつもりだったんだけど、大きさが分からないのと重たくなるのでビッガリガードの革で作った手袋にしてみたんだ。これなら長い事使えるしね。」
「うわぁぴったりだ!」
「シャルちゃんには錬金術の本、あんまり詳しくは載ってないけど初心者向けみたいだからこれでいっぱい勉強してください。」
「いっぱいいっぱい勉強してたくさんお薬作ります!」
嬉しそうにお土産を抱きしめるウサミミ姉弟。
うんうん、そんなに喜んでもらって選んだ甲斐があったってもんだ。
ちなみにお土産が定番の菓子とかじゃない理由は陰日で普通の市場が開いていなかったから。
でも、そのおかげでこうやって珍しい物を手に入れられたわけだし結果オーライだ。
「喜んでもらえたみたいだし、それじゃあシャルちゃんの頑張りも見せてもらおうかな。」
「よろしくおねがいします。」
今日来たのはもちろん挨拶だけではない。
王都で話題のシャルちゃん印のポーションをしっかり買取させていただきましょう。
うちだけの専売契約だし、不逞な輩には定価の三倍で販売する所存でございます。
でも欲しい人は三倍でも買っちゃいそうなんだよなぁ。
一応その辺も考えておくとしよう。
シャルちゃんからの買い付けを終え、再びの来店ラッシュを捌いて一息ついたのは夕方前。
光陰矢の如しとはよくいったものだ。
夏場ならまだまだ明るい時間なのに森に囲まれたここはもう日暮れ。
太陽の動きに合わせて柔軟に営業時間を変えるのもこの世界ならではのシステムだな。
どれ、ダンジョンの様子はどうかな。
「ユーリ、ダンジョン内の冒険者はどのぐらいですか?」
「今日は挨拶に来られた方が多く、潜っているのはそれほど多くありません。それも低層に集中していますので現在は7階層が最深のようですね。」
「となるとやるとしたら今しかなさそうですね。」
「いよいよ拡張されますか?」
「魔力の準備はできていますしこの機を逃せば次の聖日までずれ込んでしまいそうです。今のうちにしておけば今週中にも拡張した階層へ向かう冒険者も出て来るでしょうから、彼らの話を聞きながら改良していきましょう。」
「わかりました、すぐに準備に入ります。」
「と、いうことですのでお店の方はお任せしますね。」
ダンジョンもそうだが店内の冒険者もそんなにいない。
後は任せても問題ないだろう。
それにだ、お店にいてもいなくても俺がいるだけで事件が起きてしまう少年探偵状態なのでできるだけ現場から離れておきたい。
密室であれば自分が被害者になるだけで済むので問題ないだろう。
あ、いや問題が起きてもらっても困るんですが・・・さすがにそれはないとおもう。
多分、きっと、メイビー。
ユーリの背中を追いかけて商店奥の秘密基地へと向かう。
何度やっても床下を開ける時はドキドキするよね。
階段を下りて入り口が閉まる前に魔灯をつければ、はい出来上がり。
やっぱり蝋燭から魔灯にかえて正解だったな。
換気しなくてもいいし火事の心配もなくなった。
「簡易管理装置起動します。」
「おねがいします。」
ユーリが設置してあった装置に触れるとお馴染みの床MAPが起動する。
これでダンジョン内の冒険者の位置、罠の作動状況、魔物の誘導などを行う事が出来る優れものだ。
ただ、あくまでも簡易管理装置なので重要な事はできないんだよね。
じゃあなんで今ここに来たのかって?
何事にも下準備が重要なんです。
「この前話した仮案はもう組みあがっていますか?」
「時間はたっぷりありましたのでもちろんです。」
「展開してください。」
「畏まりました。」
床MAPが淡く光り、先ほどまでと違い何かの設計図のようなものが浮かび上がった。
迷路のように入り組んでおり一見すると何の図かわからないが、これこそが今度拡張しようとしているダンジョンの新改装の図案なのだ。
迷路ぽく見えるも良く見ればちゃんと入り口と出口が繋がっている。
もっとも、今回は前回の実体験を生かし今までと違う感じに仕上がっている。
「罠の配置も表示してください。」
「青が行動阻害、緑が軽微損傷、赤が重度損傷です。」
「いい感じですね。」
「最初にお聞きした時は耳を疑いましたが、本当によろしいのですか?」
「いつまでも初心者向けである必要はありません。ここは練習場ではなく本当のダンジョンであるべきなんです、ですから今まで以上に命の危険がなければならない。もっとも、それに見合うだけの財宝は用意するつもりですけどね。」
「金銭的には大丈夫ですか?」
「突破率が二割を越えなければ大丈夫です。短期間でそれに近づくようであれば難易度を調整する必要があるでしょう。」
冒険者がダンジョンに潜る理由はただ一つ、お金だ。
もちろん名声も無くはないが、それはもっと有名なダンジョンに入る冒険者の話。
まだ駆け出しの冒険者が手っ取り早くお金を稼ぐ方法は、依頼をこなす事でもレアな魔物を探す事でもない。
ダンジョンに潜る事だ。
ダンジョンに潜れば魔物を探す手間が省け、素材を売ればお金になる。
また、一定階層まで降りれば宝箱の中に現金が入っている。
それを毎回無事に回収できれば一応は食べるのに困らなくなるというわけだ。
もちろんその域に達するまでに挫折したり怪我をしたり、命を落とす冒険者だっている。
だけどそこまで行く事が出来れば、最低限の生活は維持できるというわけだな。
もっとも、うちのダンジョンは初心者向けなのでワザと難易度を下げて一定の階層までは到達しやすくなっている。
だけどその分手に入るお金は少ない。
魔物の素材を売ればなんとかやっていけるだろうが裕福にはなれないだろう。
え、なんで報酬を上げないのかって?
上げたらもっと冒険者が来るようになる?
理由は簡単だ。
そんなお金がないからである!
いや、自慢するような事じゃないんだけどこんな辺境のダンジョンにそんなに多く冒険者が来ることはないんですよ。
この前みたいに街の側とかなら冒険者がこぞってやってくるので魔力に困らないし、倒れる冒険者が多ければそれだけ回収出来る道具も増えるので報酬増やしてもトータルで見れば黒字化できる。
でもうちはそうじゃない。
数少ない冒険者が経験を積みどんどん深く潜れるようになる。
そうなれば回収出来る道具はないのに報酬だけ奪われてしまえばすぐに赤字になってしまうだろう。
一応これも商売ですから、お金を稼がなければならないんです。
今の所は冒険者が集めてきた素材を転売して利益を出し、かつそのお金でうちの道具を買ってくれているのでなんとか黒字は維持できている。
他に商売敵がいないので絶対に家で買い物をするという利を最大限に生かしたやりかただ。
でも、ライバル店が出来たりすればすぐにこのやり方では赤字になってしまう。
ちなみに春先にはそのライバル店を自分で誘致する手はずになっている。
え、なんでそんなことをするかって。
全部村の為です。
冒険者が買い物をすれば村にお金が落ち、それがまた村を豊かにする。
うちだけが利益を出すんじゃだめなんです。
俺のノルマはダンジョンの売り上げだけじゃない、村の成長もノルマの一部なんです。
だから一見すると自分の首を絞めているようでも実際はそうじゃない。
ちゃんと未来を言据えた計画なんです。
っと、話を戻そう。
「御主人様がその気なのであれば私が止めることはございません。」
「これも苦渋の決断ですが商店の未来の為ですから。これでも重度の罠はだいぶ削ったんですよ?」
「それはわかります。『冒険者を殺さない』その考えから真逆にいる罠ですから。」
「落とし罠だけでなく今回からは毒ガスに凶暴な魔物を配置します。できれば苦しまずに倒れてくれればいいんですけど。」
「その為の魔物を召喚予定です。魔素の濃さは魔石を直接部屋に配置する事で解決できました、ウンディーヌ様に感謝ですね。」
「魔石の数は揃っていますか?」
「一期は持つかと・・・何か心配事ですか?」
「そんなところです。」
ディーちゃんの名前を聞いた途端に俺の心がざわついたのを感じ取ったんだろう。
今はまだ確証はない。
だから口に出すことはしない。
「最下層は今まで以上に強力な魔物を配置してください、そこに関しては若干消費の方が多くても構いません。」
「それは構いませんが当てはあるのですか?」
「その分ガンドさん達に毎日入ってもらいますから。彼ら二人でそれをまかなえるだけの魔力は発生するはずです。」
「なるほどそういう事ですか。」
「下層に冒険者が増えればそれだけでも十分元は取れるでしょう。まだまだ大きくなってもらう予定ですから、これぐらいの出費は覚悟しないと。」
「そうですね、まだまだ成長してもらわないと困ります。」
目指せ99階層。
その道のまだ五分の一に来た所だ。
ゲームでいうとやっと序盤を抜けた所かな。
「それではこれで行きましょう、明日の朝までに終わりますか?」
「バーチさんもいますから問題ありません。」
「ではよろしくお願いします。」
明日にはいよいよダンジョンも新しくなる。
まだまだここからだけどこれも新しい一歩だ。
さぁ、がんばるぞ!
って、頑張るのはダンジョン妖精の二人なのは内緒だ。
その誰もが俺の帰還と商店の再開を歓迎してくれる。
本当にありがたい話だなぁ。
「イナバ様おかえりなさい!」
「ダンジョンが再開されない間他の所に潜ったんですけど、簡単すぎてびっくりしましたよ。」
「ここみたいに罠が複雑じゃないし、よく見たらすぐわかったもんな。」
「ほんと、ここで鍛えられているおかげだよ。」
俺が留守の間に色々と回って来たみたいだけどそんなに簡単だったのか。
逆を言えばうちのダンジョンが難しすぎるのか?
でも一応初心者向けってことになってるからそこまで難しくしているつもりはないんだけどなぁ・・・。
それともあれか。
他所のダンジョンにはあまり罠とかしかけられてないんだろうか。
魔物が主役で罠はおまけ程度なのだとしたら彼らのいう事も納得だ。
でもなぁ、うちみたいな弱小ダンジョンは魔力が足りないからおいそれと魔物を増やすことが出来ないんだよ。
彼らを維持するのにも結構魔力って使うんです。
ほんと無尽蔵に魔力があれば好き放題出来たのに。
世の中うまくいかないものだ。
「それだけ皆さんが成長されているという事です、自信を持ってください。」
「ありがとうございます!」
「さぁ、休んだ分しっかり還元させてもらいますからこれからもよろしくお願いしますね!」
せっかく復帰をお祝いして来てくれているんだ、お世話になった分しっかりとお返ししないと。
って前もそんなこと言った気がするなぁ。
それも大分前じゃなくてつい最近の話だ。
うん、きっと気のせいだろうからこれ以上は考えないようにしておこう。
午前中は定期便のおかげもあって満員御礼、全員フル稼働で何とかさばき切る事が出来た。
お昼を過ぎたころから交代で食事を回せるぐらいには余裕が生まれ、久々にセレンさんのご飯を堪能する。
うん、やっぱりこの味だ。
王都での食事ももちろん美味しかったけどやっぱりセレンさんの食事が一番美味しい。
え、自分の奥さんじゃないのかって?
もちろん美味しいけれどそれはそれこれはこれ。
この答えは満場一致なので喧嘩になる事もございません。
でもこの食事もこの冬いっぱいで一時休止、春からはガンドさん達が新しく宿の主人として赴任してくれることになっている。
この前は挨拶も程々に大変な目に合ってしまったので今度会ったらお詫びしておかないと。
「あ、イナバ様だ!本当に帰って来た!」
「だから言ったでしょちゃんと帰って来るって。」
「この声はシャルちゃんとティオ君だね、空いてきたから中に入っても大丈夫だよ。」
「「はい!」」
外向きのカウンターで接客をしているとその下から元気な声と一緒にぴょこぴょこと動くウサミミが見えた。
どうやら戻ってきたことは無事村中に伝わったみたいだな。
時間が出来たら村の皆にも改めて挨拶しておかないと。
ウサミミはカウンター前を横切りそのまま商店へと入って来る。
ちょうどお客を捌き終えたので後はニケさんにお願いして二人を迎えにカウンターを出た。
「こんにちは二人とも、寒い中ありがとう。」
「すっごい寒かったけど頑張って来たよ!」
「コラ!まずはおかえりなさいでしょ。」
「そうだった、イナバ様おかえりなさい。」
「はいただいま。心配かけてごめんね。」
「大丈夫です絶対に戻って来るって信じていましたから。」
「ありがとう二人とも。」
ニコニコと無邪気に笑うティオ君と俺の顔を見て安心したような顔をするシャルちゃん。
二人の笑顔を見てまた戻ってきたんだなぁと実感する。
今日はこんな事ばかりだ。
っと、そうだった。
「ごめんね納品が滞っちゃって、大丈夫だった?」
「はい、あんまりお買い物しないしその分いっぱい作ったのでまたお願いします。」
「こちらこそ。そうだ!シャルちゃんのポーションは王都でも大人気だったよ。」
「えぇ!私のポーションがですか?」
「シュリアン商店のポーションだっていうだけでお客さんが群がっていてそれはもうすごかったんだから。」
「でも、このお店のポーションってことは私のじゃないかもしれないし。」
「うちはシャルちゃんからしか仕入れていないからね。それに、商店連合の分は他のあるやつと見分けがつかないから。シャルちゃんの印があるやつだけがうちのやつってわかるんだよ。」
「私の作ったお薬が王都にまで・・・。」
どんな感じで大人気だったかまでは言わなくてもいいだろう。
ただのポーションだし特殊な使い方をされる事も無い・・・はずだ。
「だからこれからもよろしくお願いします。」
「はい!私、もっともっと沢山のお薬が作れるようにしっかり勉強します!」
「僕も頑張るよ!」
「ティオ君もしっかり練習して村一番の剣士になってね?」
「はい!」
シルビア様の話ではティオ君もなかなか筋は良いみたいだ。
一年でどうこうという事はないだろうけど体が大きくなればなるほどその実力も上がってくるだろう。
もしかすると本当にこの村から国一番の錬金術師と剣士が生まれるかもしれない。
先が楽しみだ。
「いい返事です。そうだ、そんな二人にだけお土産があるんだけど・・・いる?」
「お土産!?」
「時間がなくて沢山は準備できなかったから二人にだけ、ちょっとまってね。」
一旦裏に戻りシャルちゃんには小さな包み、ティオ君にはちょっとだけ大きな包みを取って来る。
「喜んでくれるといいんだけど。」
「「ありがとうございます!」」
「あの、開けていいですか?」
「もちろん。」
我慢できないと言った感じでティオ君が包み紙を破り、シャルちゃんは丁寧に包みを開けていく。
この辺が性格出るんだよね。
ちなみに俺はびりびりと破るタイプだ。
あ、もちろんもらった相手がいる場合は断って破るけど、正直に言って破った方が早くないですか?
「あ!手袋!」
「私は・・・本?」
「本当はティオ君には剣を握った時にケガをしない様にガンレットにするつもりだったんだけど、大きさが分からないのと重たくなるのでビッガリガードの革で作った手袋にしてみたんだ。これなら長い事使えるしね。」
「うわぁぴったりだ!」
「シャルちゃんには錬金術の本、あんまり詳しくは載ってないけど初心者向けみたいだからこれでいっぱい勉強してください。」
「いっぱいいっぱい勉強してたくさんお薬作ります!」
嬉しそうにお土産を抱きしめるウサミミ姉弟。
うんうん、そんなに喜んでもらって選んだ甲斐があったってもんだ。
ちなみにお土産が定番の菓子とかじゃない理由は陰日で普通の市場が開いていなかったから。
でも、そのおかげでこうやって珍しい物を手に入れられたわけだし結果オーライだ。
「喜んでもらえたみたいだし、それじゃあシャルちゃんの頑張りも見せてもらおうかな。」
「よろしくおねがいします。」
今日来たのはもちろん挨拶だけではない。
王都で話題のシャルちゃん印のポーションをしっかり買取させていただきましょう。
うちだけの専売契約だし、不逞な輩には定価の三倍で販売する所存でございます。
でも欲しい人は三倍でも買っちゃいそうなんだよなぁ。
一応その辺も考えておくとしよう。
シャルちゃんからの買い付けを終え、再びの来店ラッシュを捌いて一息ついたのは夕方前。
光陰矢の如しとはよくいったものだ。
夏場ならまだまだ明るい時間なのに森に囲まれたここはもう日暮れ。
太陽の動きに合わせて柔軟に営業時間を変えるのもこの世界ならではのシステムだな。
どれ、ダンジョンの様子はどうかな。
「ユーリ、ダンジョン内の冒険者はどのぐらいですか?」
「今日は挨拶に来られた方が多く、潜っているのはそれほど多くありません。それも低層に集中していますので現在は7階層が最深のようですね。」
「となるとやるとしたら今しかなさそうですね。」
「いよいよ拡張されますか?」
「魔力の準備はできていますしこの機を逃せば次の聖日までずれ込んでしまいそうです。今のうちにしておけば今週中にも拡張した階層へ向かう冒険者も出て来るでしょうから、彼らの話を聞きながら改良していきましょう。」
「わかりました、すぐに準備に入ります。」
「と、いうことですのでお店の方はお任せしますね。」
ダンジョンもそうだが店内の冒険者もそんなにいない。
後は任せても問題ないだろう。
それにだ、お店にいてもいなくても俺がいるだけで事件が起きてしまう少年探偵状態なのでできるだけ現場から離れておきたい。
密室であれば自分が被害者になるだけで済むので問題ないだろう。
あ、いや問題が起きてもらっても困るんですが・・・さすがにそれはないとおもう。
多分、きっと、メイビー。
ユーリの背中を追いかけて商店奥の秘密基地へと向かう。
何度やっても床下を開ける時はドキドキするよね。
階段を下りて入り口が閉まる前に魔灯をつければ、はい出来上がり。
やっぱり蝋燭から魔灯にかえて正解だったな。
換気しなくてもいいし火事の心配もなくなった。
「簡易管理装置起動します。」
「おねがいします。」
ユーリが設置してあった装置に触れるとお馴染みの床MAPが起動する。
これでダンジョン内の冒険者の位置、罠の作動状況、魔物の誘導などを行う事が出来る優れものだ。
ただ、あくまでも簡易管理装置なので重要な事はできないんだよね。
じゃあなんで今ここに来たのかって?
何事にも下準備が重要なんです。
「この前話した仮案はもう組みあがっていますか?」
「時間はたっぷりありましたのでもちろんです。」
「展開してください。」
「畏まりました。」
床MAPが淡く光り、先ほどまでと違い何かの設計図のようなものが浮かび上がった。
迷路のように入り組んでおり一見すると何の図かわからないが、これこそが今度拡張しようとしているダンジョンの新改装の図案なのだ。
迷路ぽく見えるも良く見ればちゃんと入り口と出口が繋がっている。
もっとも、今回は前回の実体験を生かし今までと違う感じに仕上がっている。
「罠の配置も表示してください。」
「青が行動阻害、緑が軽微損傷、赤が重度損傷です。」
「いい感じですね。」
「最初にお聞きした時は耳を疑いましたが、本当によろしいのですか?」
「いつまでも初心者向けである必要はありません。ここは練習場ではなく本当のダンジョンであるべきなんです、ですから今まで以上に命の危険がなければならない。もっとも、それに見合うだけの財宝は用意するつもりですけどね。」
「金銭的には大丈夫ですか?」
「突破率が二割を越えなければ大丈夫です。短期間でそれに近づくようであれば難易度を調整する必要があるでしょう。」
冒険者がダンジョンに潜る理由はただ一つ、お金だ。
もちろん名声も無くはないが、それはもっと有名なダンジョンに入る冒険者の話。
まだ駆け出しの冒険者が手っ取り早くお金を稼ぐ方法は、依頼をこなす事でもレアな魔物を探す事でもない。
ダンジョンに潜る事だ。
ダンジョンに潜れば魔物を探す手間が省け、素材を売ればお金になる。
また、一定階層まで降りれば宝箱の中に現金が入っている。
それを毎回無事に回収できれば一応は食べるのに困らなくなるというわけだ。
もちろんその域に達するまでに挫折したり怪我をしたり、命を落とす冒険者だっている。
だけどそこまで行く事が出来れば、最低限の生活は維持できるというわけだな。
もっとも、うちのダンジョンは初心者向けなのでワザと難易度を下げて一定の階層までは到達しやすくなっている。
だけどその分手に入るお金は少ない。
魔物の素材を売ればなんとかやっていけるだろうが裕福にはなれないだろう。
え、なんで報酬を上げないのかって?
上げたらもっと冒険者が来るようになる?
理由は簡単だ。
そんなお金がないからである!
いや、自慢するような事じゃないんだけどこんな辺境のダンジョンにそんなに多く冒険者が来ることはないんですよ。
この前みたいに街の側とかなら冒険者がこぞってやってくるので魔力に困らないし、倒れる冒険者が多ければそれだけ回収出来る道具も増えるので報酬増やしてもトータルで見れば黒字化できる。
でもうちはそうじゃない。
数少ない冒険者が経験を積みどんどん深く潜れるようになる。
そうなれば回収出来る道具はないのに報酬だけ奪われてしまえばすぐに赤字になってしまうだろう。
一応これも商売ですから、お金を稼がなければならないんです。
今の所は冒険者が集めてきた素材を転売して利益を出し、かつそのお金でうちの道具を買ってくれているのでなんとか黒字は維持できている。
他に商売敵がいないので絶対に家で買い物をするという利を最大限に生かしたやりかただ。
でも、ライバル店が出来たりすればすぐにこのやり方では赤字になってしまう。
ちなみに春先にはそのライバル店を自分で誘致する手はずになっている。
え、なんでそんなことをするかって。
全部村の為です。
冒険者が買い物をすれば村にお金が落ち、それがまた村を豊かにする。
うちだけが利益を出すんじゃだめなんです。
俺のノルマはダンジョンの売り上げだけじゃない、村の成長もノルマの一部なんです。
だから一見すると自分の首を絞めているようでも実際はそうじゃない。
ちゃんと未来を言据えた計画なんです。
っと、話を戻そう。
「御主人様がその気なのであれば私が止めることはございません。」
「これも苦渋の決断ですが商店の未来の為ですから。これでも重度の罠はだいぶ削ったんですよ?」
「それはわかります。『冒険者を殺さない』その考えから真逆にいる罠ですから。」
「落とし罠だけでなく今回からは毒ガスに凶暴な魔物を配置します。できれば苦しまずに倒れてくれればいいんですけど。」
「その為の魔物を召喚予定です。魔素の濃さは魔石を直接部屋に配置する事で解決できました、ウンディーヌ様に感謝ですね。」
「魔石の数は揃っていますか?」
「一期は持つかと・・・何か心配事ですか?」
「そんなところです。」
ディーちゃんの名前を聞いた途端に俺の心がざわついたのを感じ取ったんだろう。
今はまだ確証はない。
だから口に出すことはしない。
「最下層は今まで以上に強力な魔物を配置してください、そこに関しては若干消費の方が多くても構いません。」
「それは構いませんが当てはあるのですか?」
「その分ガンドさん達に毎日入ってもらいますから。彼ら二人でそれをまかなえるだけの魔力は発生するはずです。」
「なるほどそういう事ですか。」
「下層に冒険者が増えればそれだけでも十分元は取れるでしょう。まだまだ大きくなってもらう予定ですから、これぐらいの出費は覚悟しないと。」
「そうですね、まだまだ成長してもらわないと困ります。」
目指せ99階層。
その道のまだ五分の一に来た所だ。
ゲームでいうとやっと序盤を抜けた所かな。
「それではこれで行きましょう、明日の朝までに終わりますか?」
「バーチさんもいますから問題ありません。」
「ではよろしくお願いします。」
明日にはいよいよダンジョンも新しくなる。
まだまだここからだけどこれも新しい一歩だ。
さぁ、がんばるぞ!
って、頑張るのはダンジョン妖精の二人なのは内緒だ。
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意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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