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第十三章

お嬢様と行く王都観光ツアー(後編)

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 行きかう人の合間を縫うように色々なお店を冷やかしていく。

 冒険者がたむろする武器屋に顔を突っ込み、怪しげな薬を売る店に突入する。

 もちろん買い物するつもりはないけれど向こうも慣れたもので一言二言話しかけるとまた作業に戻ってしまった。

 そりゃそうか、これだけ不買客がいたらいちいち相手していられないもんな。

 声をかけてくれるだけ良心的と思うべきか。

 いやー、面白い。

 見たことないモノばかりでもの凄い新鮮だ。

 外国を旅しても同じ気分は味わえるけど、今俺が見ている景色は世界のどこに行っても見ることはできないだろう。

 見てよ目の前を歩く人の格好。

 ハーフプレートアーマーにガンレットだよ?

 背中に担いでいるのはツヴァイハンダーかな。

 さすがにグリーブまでは履いてないけど、コスプレでも何でもない正真正銘のTHE冒険者って感じは本場でないと出せないよね!

「随分と楽しそうね。」

「それはもう、連れて来ていただいて本当にありがとうございます。」

「いったい何が楽しいのかわかりませんが、喜んでいただいているようであれば何よりです。」

「さっきは薬品の店、その前は雑貨、それで今度は金物屋。何か目的があって歩いているのではなさそうね。」

「特に目的はありませんが、ここの空気、ここの雰囲気を楽しませていただいています。この活気もいいですよね、商人の血が騒ぎますよ。」

「その商人の血というのだけは私にはわかりませんわ。」

「そうですか?」

「お父様もたまに似たようなことを言うけれど男の人にしかわからない物なのかしら。」

 それに関しては何とも言えないなぁ。

 女性の商人ももちろんいるからその人たちの話を聞けばわかるかもしれないけど・・・。

 なんだろう、感覚だから口にするのが難しい。

『お客さんと接したい!商売の話をしたい!』

 そんな気持ちなんだけど、別に仕事がしたい!ってわけではないんだよね。

 わかるかなぁ。

「イナバ様や旦那様のような商人にならないとわからないのですよきっと。」

「そういう物かしら。」

「ラーマ様も今以上にお仕事に携わればわかるのではないでしょうか。」

「別にわかりたくはないけれど、そうよねホンクリー家の将来を考えれば重要な事ね。」

「ですがイナバ様が来てくださるのであればその問題も解決です。」

「貴女、私を焚き付けたいの?それとも揶揄いたいの?」

「私はラーマ様の事を想ってお話ししているだけでございます。」

 はいそこイチャイチャしない。

 まったく、目を離すとすぐこれなんだから。

 俺なんてどうでもいいからさっさと結婚しちゃえよ。

 え、そっちの気はない?

 それは残念だなぁ。

 おっと、次なる行列を発見。

 アレは何かな?

 今までの店と明らかに客層が違う。

 なんていうか若い。

 そして女性比率が半端無く高い。

 一応男性も居るけれど割合は1対9だ。

 って、あれ見た事のある背中だけど・・・。

 行列の中に見つけた小さな男性に向って俺は小走りで駆け寄る。

 一度追い抜き振り返るとお互いに驚いた顔で固まってしまった。

「ネムリ、どうしてここに?」

「それは私が聞きたいですよ、どうしてイナバ様がこんな所にいるんですか?」

 女性の列にまぎれる紅一点ならぬ黒一点。

 そこに居たのはサンサトローズで知らぬ者は居ないジャパネットネムリことネムリ商店の店主だった。

 でもあれ?

 サンサトローズで集められた例の書類にはネムリの名前もあったはずだし俺がどうしてここにいるのかは分かっているはずだけど・・・。

 不思議そうな顔をしているとネムリが別の方向を見てまた口を噤んでしまった。

 あ、なるほど。

 あくまでも俺の状況を知らない体で話しを進めようとしているんだな。

 それはありがたい。

 まさかこんな所で援軍に出会えるとは思っていなかった。

「ちょっと色々とありまして、店をエミリア達に任せて王都に来ているんです。そちらは仕入れですか?」

「えぇ、春に向けて今から準備しておかないと間に合いませんからね。そうだ、今から仕入れに同行しませんか?」

「え、今からですか?」

「ちょうど紹介したい人が居るんですよ。先方も行く度にイナバ様に合わせろと口うるさく言われていましてね。」

「ですが今は・・・。」

 俺の正面には難しい顔をしたラーマさんと不思議そうな顔をしたマオさんが居る。

 この二人を置いて勝手に出かけられる状況では無いんだよな。

 どうしよう。

「あ、ちょうど私達の番みたいですよ。」

「ここなんですか?」

「おや、この看板の紋様お気づきになりませんか?」

 そう言ってネムリが指差したのは軒先に掲げられた工房の看板だった。

 小さな竜が円を描き、自分の尻尾を咥えている。

 どこかで見たような気がするんだけど・・・。

「ここは宝飾品の工房ですわ。」

「それも今王都で一番勢いのある新進気鋭の職人さんです。」

「あぁ!エミリア達が付けてるあの!」

「イニシャルという誓いの名前を彫ってくれるのはこの工房だけ、うちも何度か声を掛けさせてもらったけど話も聞いてもらえませんでしたわね。」

「奥様はともかく旦那さんが恥ずかしがりやで・・・、耐えれなくなると裏に引きこもってしまうんです。」

 そりゃまた大変だ。

 そんなので商売なんてやってられるんだろうか。

 あれか?

 作るのは旦那さん、売るのは奥さんって感じなのかな?

「イナバ様こちらの方は?」

「あ、こちらはですね。」

「イナバの妻、になる予定のラーマです。ホンクリー家と言えば田舎の商人でもお分かりになるかしら?」

「ホ、ホンクリー家ってあの商家五皇の!?」

「その通り田舎の商人にしてはよく知っていますわね、褒めて差し上げます。これからはこの方が私の夫として我がホンクリー家に入りますの、よく覚えておきなさい。」

 若干わざとっぽいネムリの反応だったが、それを見てものすごいドヤ顔をするラーマさん。

 周りの通行人や商人に聞かせることで俺との結婚を形骸化しようとしているんだろうか。

 そうだとしたら中々の策士だ。

「ラーマ様、後ろがつかえておりますのでそういったことは後ほどお話し下さい。」

「私を誰だと思ってるの?そんなこと別に・・・。」

「いいえ、こういう場所だからこそ重要なのです。」

「そ、そうですねとりあえず中に入りましょうか。」

 俺たちは先に並んでいたネムリに便乗する形で中に入る。

 いわば半分順番ぬかしの状態だ。

 ここでグダグダ時間を使うとそれこそ後ろから何を言われるか分かったもんじゃない。

 マオさんに背中を押されるような形で、俺たちはお店の中へとなだれ込んだ。

 どたばたと入ったもんだから店の人が慌ててこちらを振り返る。

 まるで女性の生首がカウンターに乗っているように見えるが、身長が低いせいでそう見えるんだろう。

 幼い感じではないのでホビルトではない。

 確かこういった職人にはドワーダが多いんだったかな?

 見た感じ40代、50は未だ言ってなさそうだ。

「いらっしゃい、おやホンクリー家のお嬢さんじゃないか。頼まれてた品はまだできてないよ、いくら大貴族だからって順番は守ってもらわないと。」

「わかってますわ、別に催促しに来たわけではありませんの。」

「そ、じゃあいいけど。それじゃあ今日は何しに・・・。」

 どうやらラーマさんもここで何かを頼んでいるようだが、大貴族だからって早くなるわけではないそうだ。

 いいねぇ、その媚びない感じ。

 好きだなぁ。

 催促しに来たわけではないと言われて訝しそうな顔をする女店主。

 険悪な雰囲気になりそうな二人の間に小さな人影がさっと割って入った。

「ルーさん、ご無沙汰しています。」

「なんだいネムリじゃないか!久しぶりだねぇ元気だったかい?」

「おかげさまで家族みんな元気ですよ。」

「そいつは良かった、今日は仕入れかい?それともあの人に会いに来たのかい?」

「その両方ですね、やっと約束を果たせそうなんです。」

「約束?」

「言ったじゃないですか『イニシャルを考えた本人を絶対に連れてくる』って。」

 おいおい、俺に黙ってそんな約束をしていたのか。

 確かに王都で有名な職人さんが会いたがっているというのはネムリから聞いていたけど、絶対にとはまた大きく出たもんだなぁ。

 でも俺が攫われて来た事でそれが今叶ったわけで、さすがネムリ、なんだかんだ言って有言実行するんだよな。

「本当かい!ちょっとあんた、大変だよ!」

 こっちがビックリするぐらいに大きな声を出して女主人は店の奥へと飛んでいってしまった。

「ちょっと、イニシャルを考えた本人と言うのは一体どういうことですの?」

「え、イナバ様が発案されたの知らなかったんですか?」

「そうですの!?」

「一応成り行きで、まぁ。正確にはネムリからここの職人さんに伝わって使用して良いか聞かれたんです。」

 エミリアとシルビアの為に無理を言って掘ってもらったんだっけ。

「今や結婚指輪には無くてはならないもの、衰退し始めていた宝飾業に再び命の火を灯したのがまさかイナバ様だとは・・・さすがです。」

「貴方は一体いくつの偉業を成し遂げているのよ。」

「さぁ、そういわれましてもそんな事になっているのは私も初耳でして。」

「宝飾業の人からしたらイナバ様は命の恩人も同じ、取引先としてこれほどの自慢はありませんよ。」

 そしてそれがそんな大事になっているとは思いもしなかった。

 宝飾業の衰退ねぇ・・・、平和になると宝石を買わなくなるのかな?

 今一関連がよくわからんけど、栄えたならそれでいいか。

 話をしていると店の奥からなにやら大きな足音が聞こえてくる。

 足音だけじゃない、どこかにぶつかって何かをぶちまけるような音も聞こえるんだけどそんなに慌てなくても俺は逃げませんよ?

 足音の主が勢いよく店に戻ってくる。

 先程の女性と同じくドワーダのその男性は顔を真っ赤にしてカウンターを拳で叩き付けた。

「ネムリ!どこだ、どこにいる!俺達の命の恩人は一体どこにいるんだ!」

「まぁまぁ落ち着いてくださいジュジュさん、イナバ様がビックリしてしまいます。」

「イナバ、イナバっていうんだな!どこだ、出てこいイナバ!どこにいる!」

 まるで間男を探しにきた旦那さんのようだ。

 いや、断じてそんなことはないよ?

 雰囲気、雰囲気の話だから。

 ともかくご主人が怒鳴るものだから挨拶するタイミング逃してしまった。

 だれだよ 恥ずかしくて店の奥に逃げるなんて言ったやつ。

 むっちゃ攻撃的じゃないか。

「アンタ、いい加減にしな!お客さんが怖がってるだろ!」

「だけどよ・・・。」

 勢いよく後頭部を叩かれたことでどうやら暴走は収まったようだ。

「お初にお目にかかります、シュリアン商店のイナバ=シュウイチと申します。お会いできて光栄です、えぇっと・・・。」

「紹介がまだでしたね、旦那さんのジュジュさんと奥さんのルージェさん。お二人ともこのジュジェ工房で宝飾品を加工販売されています。イナバ様の教えてくださったイニシャルはこの工房だけでしか販売できないよう専売許可を取得してあるんですよ。」

「ジュジュだ、アンタのおかげで倒れかかっていたこの工房も命を吹き返した。それでどうしても顔を見て礼を言いたいと思ってネムリに無理を言ってたんだ、本当にありがとうよ。」

「あの日、何をしても商品が売れなくて困ってた所にネムリが話を持ってきてくれなかったらどうなっていただろうねぇ。面白い話があるんだが乗ってみないかって言われた時はどうしようかと思ったけど、藁にも縋る思いで飛びついたら気づけばこの調子さ。他の工房もこの流れに便乗して少しずつ軌道に乗り始めてる、それも全部アンタのおかげなんだよ、本当にありがとうねぇ。」

 片手ずつ二人にがっちりと握られて旦那さんにはぶんぶん振られるし、奥さんの握る手は痛いし、いや、ちょっとまじで勘弁してください。

「私は何もしていませんよ。もちろん商売のきっかけにはなったかもしれませんが、その後ここまで成長させたのはお二人のお力があってこそです。むしろ使用料を頂いてしまって申し訳ない限りです。」

「何言ってんだい申し訳ないのはこっちの方だよ。あれっぽっちの使用料で専売許可を貰えるんなら安いもんさ。」

「それにうちの商品を大事に身に着けてくれているそうじゃねぇか。美人な奥さんのおかげで遠方からも買い付けに来てもらって本当に助かってるよ。」

「妻たちも喜んでいます。本当は連れて来れたらよかったんですけど・・・。」

「今度来た時は是非寄ってくれ、とっておきを作って待ってるからよ。」

「それは妻である私にも見せていただけるのよね?」

 和気藹々と話している所にお嬢様が空気を読まずに乱入して来た。

 いや、ここはおとなしくしていただけると助かるんですけど。

 それともあれですか?

 エミリア達の話をしたからやきもちですか?」

「なんだ新しい奥さん貰ったのか?今回は随分と年うえ・・・。」

「何か仰いまして?」

「アンタ、この人はホンクリーさんとこの娘さんだよ。」

「なに?あの強欲貴族んとこの娘?イナバさん、悪い事は言わないからこの家だけはやめといた方がいいんじゃないか?」

「失礼ですがそれ以上はホンクリー家への侮辱とみなします、いくら有名な職人とはいえ言っていい事と悪い事がありますよ。」

「そいつは悪かったな、気を付けるよ。」

 マオさんの警告に旦那さんが渋々と言った感じで謝った。

 なんだろう、奥さんもそうだったけどホンクリー家は何かやらかしたんだろうか。

「ともかく、これでこちらの約束は果たしましたからね。」

「おぅ今度は俺が応える番だな。」

「と、いいますと?」

「新作の予約を入れていたんですがあまりの人気でなかなか数が揃わなかったんです。」

「それで、約束を守ってくれたらその足りない分俺が徹夜してでも作ってやるって約束したんだ。」

「まったく、他所様の分もあるっていうのに困った人だよ。」

「それはそれこれはこれだ。大丈夫だって、いつもの分はちゃんと作るから。それよりもお前の方こそ大丈夫なのかよ。」

「私を誰だと思ってるんだい?アタシが納期に遅れるわけないじゃないか。」

 どうやら亭主関白ではなく肝っ玉母さんの家みたいだ。

 力加減がよくわかる。

「イナバ様はまだこの街に?」

「えぇ、今のところは。」

「それでしたら他にもいくつかご紹介したい取引先があるんですが、かまいませんか?」

「イナバさんも忙しい身ですからそう言った事に関しては一度我がホンクリー家を通してもらわないと困りますわ。」

「と、いう事ですのでまた今度お誘いください。」

「わかりました。」

 このやり取り、おそらくネムリは俺を保護するために一計を案じてくれたんだろう。

 だがそれもラーマさんによって阻まれてしまった。

 いや、仮にあそこで受け入れていたとしてもここに居ない護衛の皆さんに連れ戻されていた可能性が高い。

 俺を保護できるとしたらホンクリー家と同等、もしくはそれよりも権力のある人だけだ。

 そうなると選択肢として出て来るのがメルクリア家なわけだけど、接触させてもらえるわけがない。

 商家五皇というぐらいだから後三家あるんだとうけど、残念ながら接点がない。

 いや、仮にあったとしてもホンクリー家のほうが上のような気がするな。

 そうじゃないとここまでブイブイ言わせることなんてできないだろう。

 なかなか難しいなぁ。

「では私達はそろそろ行きましょうか、次は市場を見に行く予定です。」

「そう言えばそうでした。」

「なんだもう行くのか。」

「せわしないねぇ。」

「当分はこの街にいますのでまたご挨拶に伺います。」

「おぅ、アンタならいつでも大歓迎だ。行列を無視して入って来てくれてもかまわないぜ。」

「いやいやちゃんと並びますよ。」

 寧ろならばないと後が怖い。

 どんな時でもマナーは大切に。

「ではネムリまた今度。村に行ったら皆によろしく伝えてください。」

「わかりました、何かあったら遠慮なくご相談ください。」

「頼りにしてますよ、ネムリ商店。」

 何でもそろうジャパネットネムリ、今すぐに何かできるわけじゃないけれど味方がいるのは心強い。

 工房の人たちに別れを告げて俺達は当初の予定通り観光ツアーへと復帰した。

「先ほどの商人とはずいぶん親しいようですね。」

「えぇ、私がこの世界に来てから色々とお世話になったんです。」

「ネムリ商店、覚えておきますわ。」

「先にお伝えしておきますが彼には手を出さない方がいいでしょう。」

「どうしてかしら?」

「昔の彼でしたら別ですが今の彼には多くのギルド、貴族、騎士団などが顧客となっています。そんな彼になにかあったら真っ先に疑われるのがどこか、ラーマ様でしたらお分かりなのでは?」

「・・・別に何もする気はありませんわ。ただ、イナバさんのお知り合いならば名前を憶えておかなければと思っただけです。」

「それは大変失礼いたしました。」

「私が何かすると思われているのであれば心外ですわ。」

 いや、人を攫っておいて何を言いますかねこの人は。

 確かに攫うように指示を出したのはラーマさんの父親だけど、その事情を知ってなお逃がさない時点で共犯なんですよ。

 それを理解しているんだろうか。

「お二人とも夫婦喧嘩はそのぐらいにしてください、予定が詰まっております。」

「夫婦喧嘩だなんてそんな・・・。」

「今日は一日いろいろ見て回るはずじゃなかったんですか?」

 マオさんに夫婦と言われてクネクネと不思議な踊りをし始めたラーマさんは放っておくとして、マオさんの言い方が妙に気になる。

「その予定でしたが先ほど家の者から連絡が入りました、夕刻旦那様がお戻りになられるそうです。」

「え!」

「お父様が!」

「まだ時間はありますが市場の視察は短くなると思ってください、また日を改めてご案内させていただきます。」

 一日観光出来るという軽い気持ちでいたはずなのにここに来て事態は思わぬ方向に動き出した。

 まさか今日俺を誘拐するように命令した張本人に会う事になろうとは。

 明日とかだったらまだ半日かけて心の準備ってものが出来たというのに。

 まったく何事もうまくいかないなぁ。

「やっとお父様と会って頂けますわね。」

「私としては正直に言って会いたくない所ですが、そうも言ってられません。」

 例えるなら彼女の実家に挨拶にいく時のような憂鬱さだ。

 って、残念ながらそんな機会一度もなかったけど。

 お父さん、娘さんはいりません!

 こう宣言できればどれだけ気が楽になるか。

 今日のお嬢様と行く王都観光ツアーはまだ一か所残されている。

 この後に控える一大イベントを前に、楽しみだったはずの市場が全く楽しめないんだろうなぁ。
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