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第五章

何事もタイミング次第です

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武闘派メイドマヒロは諸事情により打ち切りとなりました。

期待していた皆様には申し訳ありませんがご了承下さい。

宜しくお願いいたします。

さて、話は戻ってニケさんの買受けについて説明に来たわけです。

急遽始まったシルビア私設軍法会議によって話がややこしくなったようにも見えるが、簡単に言えばニケさんの護衛を頑張れよという事らしい。

シルビア様曰く、昔からこの感じなので放っておいてもいいそうだ。

まぁ本人がそれで納得してやる気を出してくれるのであれば別に構わないんですけど。

無事にニケさんを猫目館まで運んでくれれば十分です。

本人のやる気を見れば、間違いなく成功するだろう。

だって、近づいてくるものは全て殺すみたいな雰囲気出してるし。

発見即殺サーチ&デストロイの勢いです。

お願いだから無関係な人には手を出さないでくださいね。

宜しくお願いします。

「と、言う事でニケさんを買受ける資金の準備が出来ましたので迎えに来ました。遅くなってしまい申し訳ありません。」

「こちらこそかくまってもらっただけでなく買受けまでしてもらえるなんて、一生あそこで暮らしていくんだと諦めていたので夢のようです。」

「ただ、いくつか問題が発生しているのでそこもふまえてお話をしようと思っています。」

「問題、ですか?」

「そうなんです。再度確認なんですが、ニケさんが自分の金額について問い合わせたのはいつでしょうか。」

まずはここから確認しておかなければならない。

いつ、幾らと言われたのか。

これが分かればいつ値上げしたのかという目星をつけることができる。

出来れば基準日のようなものがあれば助かるんだけど。

「春節最後の陰日前日に値段を教えられました。奴隷市が立つのでその時に売り出す金額を娼婦全員に告知したんです。」

「わざわざ全員にですか。」

「贔屓にしてくれている人に値段を伝える事で、その日までに買受けてもらえるように発破をかけるためです。奴隷市に出してしまえば二度と手に入りませんし、娼館も手数料を市に支払わなければならないので出来るだけそれまでに買受けてもらえるように事前に知らせています。もっとも、私はそんな人がいませんでしたのでこれで買受されなければ次の奴隷市に売られるという話をされました。」

なるほどな。

手数料を払いたくない娼館と、お気に入りを手放したくない人間の思惑が見事に一致する時期なわけか。

ニケさん自身も奴隷商人に買われてここに来たって言われていたし、待遇を保証されたいなら男を誘惑して買受けてもらえという脅しなわけか。

奴隷商人の手元ってあんまり良い扱い受け無さそうだしなぁ。

「その日に聞いた金額が金貨20枚だったわけですね。」

「そうです。」

もうすぐ夏節最初の陰日が来るから約一ヶ月前の金額というわけか。

その後休息日の初日に俺たちが助けて逃げ出したから、約半月。

この間に金額が変更になったと見るべきだろう。

あの時俺に文字が読めればどのような内訳か確認できたのだが、残念ながらエミリアにしか確認してもらっていないので詳細は分からない。

昨日聞くつもりだったのだが、別のことを考えてすっかり忘れていた。

はてさて、どうしたもんかなぁ。

でもまぁ、どんな金額であれ内訳であれ金貨20枚が30枚になった事実に代わりは無い。

賞罰は含んでいないという言質をとった上で値段が変更になっているのだから、向こうが何かしら細工をしていると考えるべきだろう。

今回はそこを狙ってガッツリ交渉していけばいい。

そして、その交渉を有利に進めるために必要なのが、ニケさんというわけだ。

「実は昨日猫目館にニケさんを買受けると言いに行ったところ、金貨30枚と請求されまして・・・。」

「金貨30枚だなんてそんな!ついこの間まで金貨20枚だったのに。」

「恐らくはここにかくまっている間に値段を吊り上げたのだと思っているのですが、向こうに確認すると賞罰での値上げではないとの事でしたので、もしかするとこっちにわざとふっかけてきている可能性もあります。昨日はずいぶんと派手な格好で行ってしまったので。」

「確かにその可能性はあるだろうな。取れる時に取る。強欲な商人ならば考えそうな事だ。」

「そうなんですよね。もしそうならニケさんの証言を突きつければ済む話なんですが、おそらくそううまくは行かないと思います。」

間違いなく何かしら理由をつけて正当化してくるだろう。

「そこで、あくまでもニケさんの金額が正しいという前提の元交渉してみようと思っています。」

「交渉で安くなるものなのでしょうか。」

「恐らくそのまま交渉するだけでは難しいでしょう。しかしこっちには特別な手札が用意されています、それがニケさんというわけです。」

「私がですか?」

驚くのも無理は無い。

買受けてもらう立場にいる自分が交渉のカードになるだなんて思いもしないだろう。

「ここで話す内容でもあるまい、奥で腰をすえて話をしないか?」

「それもそうですね。」

少々話しを急いてしまった。

ここでミスしてしまっては作戦が全くの無駄になってしまう。

しっかりと話をするべきだろう。

「では応接室の方へどうぞ。」

「うむ、飲み物も頼む。」

「かしこまりました。」

飲み物は別に、と思ったがシルビア様が家主なんだしここはありがたく頂戴しよう。

マヒロさんが飲み物を準備しに行き、ニケさんの案内で応接室へ移動する。

先頭を歩くメイド姿のニケさんのお尻がなんともいえないわけですが、シルビア様がいる手前がん見するわけにも行かず、なんとももどかしい。

シルビア様のお尻も素敵ですよ?

キュッと締まった小ぶりなお尻がキュートです。

ニケさんに案内された応接室はこれまた立派な部屋だった。

さすがというか何と言うか。

ここに招かれるだけでもえらくなった気分になるよな。

「どうぞこちらにお掛け下さい。」

「シルビアもどうぞ。」

猫目館同様後ろで控えていようとするシルビアを横に誘導する。

ここはあなたの家なんですから自由にしていいのに。

「マヒロさんがきてから具体的な話をしようと思いますが、現在、猫目館では今もニケさんがそこにいて昨夜は別のお客を取っているという話になっています。」

「わ、私がですか?」

「ここにニケさんがいる以上向こうの嘘であるのは分かっているのですが、こちらもあえてそれに乗っかって話をすすめています。今回ニケさんに来ていただく一番の理由はその嘘を一番大事な部分で見破ってやる為なのです。」

恐らく何かしらの理由をつけて買受けを拒んでくる。

向こうが嘘をどんどんと塗り固めてこれ以上ないというところでニケさんが登場し、これまでの嘘を逆に交渉材料にしようって言うわけだ。

「私はどうすればいいんでしょうか。」

「ニケさんにはこの後猫目館に戻っていただきます。」

「猫目館に戻るだけですか?」

「先に戻ってしまうと何をされるか分かりませんし向こうの思う壺になってしまうので、戻るのは私が向こうと話をしている最中にお願いします。」

「だがその途中でニケ殿を探し回っている猫目館の連中と遭遇する可能性は高いだろう。」

「追われる身ですので見つかれば連れ戻されてしまうと思います。」

「そこで先ほどの話だ、マヒロにニケ殿の護衛をしてもらうことでその連中から守りつつ向かってきてもらう事になる。なに、マヒロがいれば問題ない。あのなりだが、我が騎士団の中でも中々の実力だったのだぞ。」

「あのなりだなんて、いくらシルビア様とはいえ聞き捨てなりません。」

いつの間にかお茶を準備してきたマヒロさんが帰ってきていた。

でもまぁ確かにそうだよな。

見た目にはどこにでもいるメイドさんにしか見えない。

誰もが強そうとはおもわないだろう。

「違いあるまい?」

「確かに私は体も小さくか弱い見た目ではありますが。」

「魔物を一瞬で葬り去る実力をもちながら自分でか弱いとはよく言ったものだな。」

そんなに強いの!?

それはもう安心だわ。

「それはもう恋するか弱い乙女と同じでございます。もっとも、人の恋路を邪魔するような輩は実力で排除いたしますが、それは正当な理由あってこそです。」

「確かに邪魔なものを排除するには十分な理由だな。」

「今回の護衛もそのように理解しております。せっかくの身請けを邪魔する者は容赦なく排除いたしますが構いませんね?」

「殺さないのであれば大目に見よう。」

「ありがとうございます。」

いやまぁ、殺さなければいいとは思いますが。

やりすぎないでくださいね。

あくまでも逃げてきたという設定なんですから。

このあたりをしっかり把握してもらった方が良さそうだな、うん。

全員血まみれにして追われてきました!なんて説得力なさ過ぎる。

「では具体的な話をしていきましょうか。」

エミリアたちが戻ってくるまでの間、綿密な打ち合わせを行う。

今回のこの作戦さえ成功すれば買受け作戦第二幕は成功したようなものだ。

残すのは衣装の問題ぐらいか・・・。

話し込むこと一刻程、玄関のほうから声が聞こえマヒロさんが応対に向かう。

エミリアたちが帰ってきたのかな?

「先ほどの話ですが大丈夫そうですか?」

「私は守られて猫目館へ戻るだけですので大丈夫です。あの、本当に私なんかを買受けしてくださるんですか?」

何をいまさら。

この話は全て貴女の為なんですよ?

「もちろんです。」

「私なんて何も出来ないのにどうしてそこまでしてくださるんですか?買受けのお金だって決して安くないはずです。」

まぁたしかに安くはないですけど。

「あの日助けてくれとお願いされたからですよ。」

「それだけで何の身寄りのない私を引き取って、返すあてなんてありませんしこんなに素敵な奥さんまでいるのに・・・。」

「別に返してもらわなくても構いません。返してほしくて買い受けたわけではありませんから。」

元をたどればニケさんから始まって手に入れたお金なワケだし、こっちのお金は一切使っていない。

そういう意味では自分で稼いだ金ともいえるだろう。

「ニケ殿、シュウイチは助けたいと思って助けただけだ。別にそなたが気に病む必要はない。」

「でもでも、私はどうやって恩返しをしていけばいいんですか・・・。」

「別に無理に返さなくてもいいですよ。」

「それはダメです!」

うーむ、どうすればいいだろう。

どうすれば納得してくれるだろうか。

「ニケさんは元々商人の家に生まれたんですよね。」

「はい、父が商売をしていましたのでその手伝いをしていました。」

「では読み書きや数字の計算、お客さんとの折衝は出来ますよね。」

「もちろん出来ます。」

「それだけ出来れば私よりもうんと役に立ちますよ。私なんて読み書きできませんからいつも皆に助けてもらっています。そういう部分でお手伝い頂ければ十分返していただけます。」

これからやらなければいけないことがたくさんある。

読み書き計算商売が出来れば言う事無しだ。

俺やエミリアがいないときに店を回せる人間がいるのは心強い。

「そんな、それだけで十分だなんて信じられません。」

「それは困りましたねぇ・・・。」

「では、ニケ殿はどうやって恩を返そうと思っているのだ?」

そうだな、本人からそれを聞くのが一番だ。

「私は娼婦です、私に出来る事といったら体でお返しする事しかできません。私を好きにしてください!」

「シルビア様お客様をお連れしました。」

「シュウイチさん遅くなってもうしわけありませ・・・。」

ちょ、なんてタイミングで帰ってくるんですか。

一体どこから聞きました?

決して淫らな事を強要してるんじゃないですよ?

「ご苦労だったな二人とも。」

シルビア様がねぎらいの言葉をかけるもエミリアの表情は固まったままだ。

アカン。

これ絶対誤解している。

このままでは阿修羅エミリアが降臨してしまう。

誤解を解かねば。

何としてでも誤解を解かねば。

「綺麗な体ではないですけど、精一杯頑張りますのでどうか私を受け取ってください。」

ちょっとニケさん、このタイミングで貴女なんて事を。

それじゃあ火に油どころか火にジェット燃料ですよ。

「シュウイチさん、どういうことか説明してくださいますよね。」

「どうしたエミリア怖い顔して。」

状況を飲み込めていないシルビア様と、怒りマックスのエミリア。

そして。

「私なんかじゃダメですか?確かに綺麗な体じゃないですけど、奥様には出来ないような事とかしてもらっても大丈夫ですし、他の事も精一杯頑張りますし・・・」

周りが見えず、頑張って自分を受け入れてもらおうと必死なニケさん。

あ、俺ここで死んだ。

「エミリア話せば分かります。誤解です。」

「何が誤解なんですか?」

「これには深いワケがあるんです。」

「どういうワケかたっぷり教えてくださいますよね。」

だめだ、話が通じない。

「ユーリ、エミリアはどうしたんだ?」

「先ほどまでは特に何もありませんでしたが。」

そうじゃない。

ここに来るまでに何かあったんじゃない、今でしょ!

今問題が起きてるんでしょ!

誰か助けて。

「買受けてもらった分以上にお仕事も頑張りますので、宜しくお願いします!」

深々と頭を下げるニケさん。

「え、お仕事・・・?」

それを聞いて事情が違う事に気付いたエミリア。

そう、そうなんだよ。

これには深いわけがあるんだよ。

「えっと、これはどういう。」

「最初から話をしますのでどうか聞いてくださいね。」

なんとか阿修羅エミリアが降臨する前に鎮める事ができた。

間一髪だった。

「皆様お茶が入りましたよ。」

そしてナイスタイミングでマヒロさんがお茶を持ってきたところでこの場はひとまず収まるのだった。

あぁ、生きているって素晴らしい。

お茶をのみ一息ついたところで話を戻そう。

「すみませんシュウイチさん。」

「いえ誤解が解けてよかったです。」

「私こそすみません、紛らわしい事言ってしまって。」

「ニケさんも納得してくれて何よりです。」

「まったく、罪な男だなシュウイチは。」

「困ったものですね、ご主人様は。」

ひどい言われようだが今は何も言うまい。

無事にこの場にいられるだけで十分だ。

「魔術師ギルドの方お疲れ様でした。」

「フィリス様よりひとまずの代金を頂戴してきました。ただ、残りの代金に関してはギルド内でもだいぶ紛糾しているそうで詳しい金額が決まるのは先になるそうです。」

「ご主人様宛に『仕事が増えた責任をどう取るのか楽しみだ。』と言付かっています。」

どう取るのかって言われても、知らんがな。

「とりあえず聞きましたが、それに関しては私はどうすればいいのやら。」

「フィリス様の冗談ですから気にしないで下さい。」

「あの方が言うと冗談に聞こえないんですよね。」

本気でなにかしないといけないような気がしてきた。

お茶菓子だけじゃ足りないかも。

「こちらが代金です、確認してください。」

「お預かりします。」

エミリアに渡された袋を開けて中身を確認する。

金貨が15枚入っていた。

予定通りだ。

「こちらの話はもう終わったんですか?」

「打ち合わせは終わりましたので後は衣装の問題を残すだけですね。」

「まだ見つかってませんでしたか。」

そう、まだ衣装が見つかっていない。

「シルビア様、衣装とはどういうことでしょうか。」

「買受に行くのに必要だったんだが昨日着たものは使えなくてな。代わりが見つかっていないのだ。」

そういえば衣装の件は話してなかったな。

これがないと話が始まらないんだけど、困ったなぁ。

「それはどのような衣装でも構わないのでしょうか。」

「派手でなくても構わんが出来れば上品なものがあればいい。」

「この家にあるものではダメなのでしょうか。舞踏会用のドレスが何着かございますが。」

「私が着るのではなくエミリアが着るのだが・・・そうか!シュウイチはあいつのを使えばいいな。」

え、俺ドレス着るの?

女装はちょっとまずい気がするんだけど。

「確かに背格好も似ておりますので恐らくは大丈夫かと。ですが、エミリア様では少々窮屈な部分がございますよ?」

そういって全員がエミリアのほうを見る。

うん。

確かに一箇所窮屈な場所があるよね。

シルビア様も決して小さくはないんだけどエミリアのは規格外というか何と言うか。

ボインちゃんだから。

皆の視線を受けてエミリアがさっと胸を隠す。

隠さなくたっていいのに。

「シュウイチはいいとして後はエミリアか、今から衣装屋を呼べば何とかなるか?」

「街中の物を探せば見つかるかもしれませんが、時間はかかるかと思います。」

「すみません、私の胸が大きいばかりに・・・。」

おっぱいは正義です。

大きくても小さくてもいいんです。

胸のサイズで女性が悲しむ世の中なんてクソくらえだ。

「とりあえずシュウイチの衣装を先に準備するとしよう、マヒロ案内してくれ。」

「かしこまりました、イナバ様どうぞこちらへ。」

マヒロさんに案内されて別室へと向かう。

「勝手に衣装をお借りしてもよろしいのでしょうか。」

「一着ぐらい無くなっても気付かない人ですから大丈夫です。」

そういうものだろうか。

むしろ兄弟の扱いがひどいように思えるのだが.

まぁ先方がいいというんだからいいか。

遠慮なくお借りしよう。

問題はエミリアの服だな。

用意できないとなるとやっぱり俺独りで行くしかないか。

俺は別に構わないんだけど。エミリアたちがなぁ・・・。

ニケさんもここにいるんだし、そういうことしないんだけど。

それじゃあ認めてくれないんだよな。

不可抗力とはいえ前科持ちはつらいよ。

「イナバ様こちらへどうぞ。」

マヒロさんに案内された部屋に入ると、そこは部屋中が衣装だらけの部屋だった。

男性向け女性向け問わずたくさんある。

なんでお金持ちってこんなに衣装があるの?

一回着たらもう着ない系ですか?

それで経済が回っている事実はあるけどエコじゃないよね。

まてよ、この世界にエコの概念はあるのか?

無いなら別に構わないのか?

なるほどわからん。

まぁいいや、とりあえず適当な奴を着ていけばいいか。

「私は先に戻らせていただきますが・・・。」

「一本道ですので大丈夫ですよ。」

迷子になるような場所ではない。

マヒロさんが部屋を出たのを確認して衣装を探す。

この前は紺だったしなぁ。

今回はド派手に赤とかどうだろう。

うん、ないわ。

白はおかしいし、黒って感じでもない。

でも黒が一番しっくり来るのは社畜のなごりだろうか。

黒のスーツが戦闘服でした。

あ、これ良い感じ。

グレーだけど決して暗くないし、かといって明るすぎない。

良い感じのジャケットだ。

あとは中のシャツを明るめにしたら合うんじゃないの?

しらんけど。

まぁいいやこれでいこう。

適当に服を選び応接室へと戻る。

後はエミリアだけど、どうしようかな。

「私すぐにとってきます!」

部屋に戻ろうとしたその時、急に扉が開き中からニケさんが飛び出してくる。

おっと危ない。

「すみません!」

そんなに急いでどこ行くの?

「遅くなりました。」

「シュウイチ、戻ったか。」

「ニケさんが飛び出していきましたがどうかしたんですか?」

「エミリアの衣装が見つかったのでなニケ殿に取りにいってもらったのだ。」

お、見つかったのか!

これで買受け作戦第二幕も実行できる段取りが出来たわけだ。

いやーよかったよかった。

「よかったですねエミリア。」

「あ・・・はい、そうですね。」

心なしか元気がない。

というか少々挙動不審だ。

なにかあったんだろうか。

「とりあえずこれで何とかなりそうですね。」

「そうだな、後はシュウイチに任せるとしよう。」

「頑張らせていただきます。」

後は俺の仕事だ。

この為に来たんだから何が何でもやり遂げてみせる。

がんばりまっしょい!

っと、そういえばエミリアの服ってどんなの?

俺の選んだ服でういたりしない?

「エミリアの衣装はどんなものになったんですか?」

「それなんだが、後でのお楽しみだ。」

え、教えてくれないの?

楽しみにするけど、別に教えてくれてもいいんじゃ・・・。

「さぁ皆さん、良い時間ですのでお昼にしましょう。」

もうそんな時間か。

この後のためにもしっかりと食べて元気を充電しないとな。

エミリアの顔が浮かないような気もしないではないが、とりあえず今はこの後のことに集中するとしよう。

さぁ、ニケさん買受大作戦第二幕の始まりだ!
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