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第二章

武器は男のロマンが詰まっている。

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 シルビアとは騎士団詰め所の前で解散した。

 さて、現在地はどこだ。

 たしか東の門からそのまま真っ直ぐ来たからそのどこかだとは思う。

 確か中央に噴水があってそこから南に下ると商店連合の事務所があると言ってたっけ。

 とりあえず目的地は噴水だな。

 知らない場所を歩くときの鉄則その1、人通りの多い場所を歩く。

 知らない土地を歩いていて人気の少ない路地に迷い込むことは良くある。

 そこが日本だったら別にかまわない。

 もと来た道を戻るか人に聞けば大抵答えてくれる。

 しかしそれ以外はダメだ。

 路地で人と出会うことはあまりよくない。

 そのときに狙われるのは自分の財布かそれ以外の何かだ。

 もちろん日本でだってその可能性はある。

 しかし、命まではとられないだろう。

 なので人の多い場所さえ歩いていればそういう場所に入り込む可能性を減らせる。

 幸いこの城塞都市は円形をしている中世ヨーロッパの都市と同じ形をしている。

 中央には背の高い建物があるからそれを目印にする手もある。

 知らない場所を歩くときの鉄則その2、ランドマークを決める。

 ランドマークつまり目印だ。

 この場合は、ほら噴水についた。

 噴水の前には教会がありてっぺんには鐘がついている。

 なんていうか丸々中世の都市を持ち込んだみたいだな。

 あまり深く考えないほうが良いかもしれない。

 周辺には高い建物はなく、とりあえずこれを目印にして自分の頭の地図をマッピングしていこう。

 ありがたいことに道を覚えるのは昔から得意だ。

 ゲームの中でもそうだったが、一度行ったことのある道は大抵わかる。

 今回は大きな目印もあることだし、まずは都市を南北に走る大通りをメインに探索すれば良いだろう。

 北側に見えるのは小高い山とおそらく領主の館。

 さっき見た感じだと西は工房などがありそうなエリアで、今来た道が住居が多いエリアだな。

 飲み屋とかもなかったし、比較的静かな場所だった。

 そして、南側。

 人が多く行き交い、活気にあふれている。

 メイン通りから奥の路地までいろいろな店で埋まっているのだろう。

 奥はネムリとエミリアと一緒に行くほうが安全だな。

「さてっと、エミリアはどこにるのかな。」

 周りを見渡しながら南へと下る。

 あれは何だ、剣や盾を置いてる武器防具の店か。

 何があるんだろう。

 銅の剣からはじまって鉄、鋼、ダマスカス、オリハルコン。ファンタジーでおなじみの装備とかあるんだろうか。

 中に入ってもいいけど持ち合わせはあまりないし、買ったところで使えない。

 あー、でも護身用になにか短剣とか装備しておいたほうがいいのかもしれないなぁ。

 勉強ついでに入るか。

「イラッシャイ。」

 無愛想な親父が出迎えてくれる。

 うんうん、こうでなくっちゃね。

 奥からは鉄を打つような高い金属音がする。

 工房があってここで販売しているのか、もしかしたら修繕もできるのかもしれない。

 壁には所狭しと並べられた武器の山。

 おお、本物の武器はこんなに重いのか。

 さも使えますよという体で持ち上げてみたがずしりと両手に重さがかかる。

 さすがにこれを振り回して戦う勇気はないな。

 もう少し軽くて振り回しやすい物がいい。

 モン〇ンでいう双剣か片手剣ぐらいのやつが理想だ。

 こういうときはどうするか。

 プロに聞くのが一番だ。

「この町にははじめてきたんだけど途中で盗賊に襲われましてね、武器を落としてしまったんです。何か私に合うちょうどいい武器は何か無いですか。」

 盗賊に襲われたということで同情を買い、ついでに情報収集も行う。

「盗賊かそれは災難だったな。行商人か何かか、あまり重いのは振り回せないだろうこれぐらいはどうだ。」

 親父はジロリと全身を見た後上のほうに飾ってあった一本の短剣を差し出す。

 銀色の歯は綺麗な波紋を描き、手にすっぽりと収まった。

 うん、重すぎず軽すぎず。

 指から肘位までの長さ。髭剃りように使っていた短刀と比べると長く感じるが、さっき持った剣と比べると短い。

 さすが武器矢の親父、一発でちょうどいいものを提供してくる。

 この親父、できる。

「良い品ですね波紋も綺麗だし重さも程ほどだ。これはここの工房で作っているんですか。」

「奥でな、波紋とは面白いことを言うな。」

「よく打たれ、よく鍛えられた鋼は研ぐと美しい波紋が出来ます。これは非常によく打たれている、さぞ時間がかかったことでしょう。」

 確か日本刀は西洋の鋳造の技術ではなく鍛造で作られている。

 つまり、叩いて鋼を強くしている。

 そしてその硬度によって研いだときに美しい波紋が出来るそうだ。

 日本刀は西洋刀のように叩きつけるとすぐ刃こぼれをしてします。

 刺す、突く、そして切る。

 手前に引くように切ることで、自前の重さと刃の切れ味で人を切ることが出来る。

 ただし、あまり連続して切ると人の油で刃がなまってしまい切れ味が落ちてしまう。

 7人の侍でそういったシーンが再現されていたような気がするな。

「ただの商人かと思ったら面白いことを知っている。その通りこれは他のものと違いダマスカス鋼を何度も打ち鍛えて作った特別製だ。」

 ダマスカス鋼。

 現代では失われた技法で作られた物だ。

 RPGでもおなじみのあの武器が目の前にある。

 これでテンション上がらずして何がオタクか!

 黒いボディもさることながらこの独特の模様。昔博物館で見た本物を思い出した。

「ただの商人ですよ、少し知りたがりなだけです。」

「その知りたがり商人は何を求めているんだ、武器だけじゃないって感じだが。」

「武器を探しているのは本当です、これは非常にすばらしい武器だ。ちなみにおいくらで。」

 値段によってはほしい。

 非常にほしい。

 刀をコレクションしている人の気持ちがなんとなくわかってきた。

 あ、美少年たちの刀ではないのであしからず。

「価値のわからないやつには売るつもりはなくてな、いつもためしで持たせているんだがわかったやつは初めてだ。そうだな、銀貨30枚というところだ。」

 30万か。

 うん、わからん。

 そもそも高いのか安いのかもわからない。

 何せ基準がない。

 これは眠りかエミリアをつれてきてからの方がいいか。

「銀貨30枚ですか。お安いがちょっと手が出ませんね。」

「他ではそれほどの物は手に入らないとぞ、それは俺の自信作だ。」

「そうですか、では少し資金を用立ててまた来ます。そのときに残っていましたらまたおねがいします。」

 それだけの自信作だ、正直惜しい。

 惜しいが手持ちがない。それに、

「なにせ、盗賊に手持ちの商品は全て取られてしまいましたので稼ぎなおしてから参りますよ。」

「そうだったな、盗賊か。最近多くなったと聞いている迷惑な話だ。」

「武器が売れてこちらは儲かるのではないのですか。」

 普通は退治するように武器が売れて儲かると思うのだが。

 もしくは護衛や護身用に買うものも出てくるだろう。

「冒険者の野郎はあまり盗賊を相手にしないんだ、噂では冒険者崩れのやつらがやっているって話だしな。それに、魔物用にはもう少し安い装備を使いまわすのが多いからな。深いダンジョンでもあれば強い武器目当てにうちの店も繁盛すると思うんだが。」

 つまりここは少し高級な武器を扱う店ということか。

 この辺りのモンスターであればさほど強い武器は要らず、安物で事足りてしまう。

「最近大量に武器を買っていったという話を聞きましたか。」

「騎士団が遠征に行くのにうちも世話したが他はそうだな、小汚い割には随分羽振りの良い商人が隊商用に弓や槍、程ほどの剣を買っていった。それぐらいだ。」

「ありがとうございます、またきます。」

「おう、道中気をつけてな。」

 親父に見送られて店を出る。

 ふむ、小汚い商人が武器を大量にか。

 それだけで断定するわけにも行かないな。

 盗賊の噂を聞きつけて隊商を強化しただけの可能性もある。

 しかし、あのダマスカス鋼かっこよかったな。

 次ぎ、行くか。

 通りには他にも薬草のような物を置く店や飲食店、宝飾店、服飾の店なんかもある。

 冒険者だけでなく一般市民も買い物をする場所のようだ。

 まさに商店街というやつだな。

 何軒か中に入り冷やかしながら情報収集をしておく。

 そんなことをしながら、きょろきょろと御のぼりさんのように町を散策していると気づけば城壁の手前南門についてしまった。

「たしか南門の側に商店連合の事務所があるって言っていたけど。」

 辺りを見渡すもそれらしい建物は見えない。

 ちがう、字が読めないから商店連合かどうか読めないんだ。

 しまった。

 何も考えてなかった。

 俺、この世界の文字知らないんだ。

 でもなんでしゃべれるのだろうか。

 会話は通じるという素敵システムか何かなのだろうか。

 それでさっき武器屋で商品名がわからなかったのか。

 なるほどなるほど。

 って、これは非常にまずいのではないでしょうか。

 商売するのに数字読めないで帳簿が付けれるのか。

 商品発注どうするんだ。

 報告書書けって言われても何も書けないんですけど。

 村では全部会話で済ませていたし、不自由もなかったから気にならなかったけどそうか、俺は字が読めないんだ。

 いやー、こまったこまった。

 それで、だ。

 文字は読めないが会話は出来る。

 ならば、することは1つ。

 人に聞いてみる。

 幸いここは門の手前、門番がちょうどいるじゃないか。

「すみません、ちょっとお尋ねしますがスマート商店連合の建物はどれでしょうか。」

「何だお前あんな場所に行くのか。」

 あんな場所ってどんな場所だよ、むしろそこにいきたいんだよ。

「知り合いがそこにいましてはぐれてしまったのでおそらくそこにいるかと。」

「右側の建物4件目だ。ほら天秤のエンブレムが見えるだろあそこだよ。」

 右側の・・・1234あそこか。確かにエンブレムがあるな。

「助かりましたありがとうございます。」

「身ぐるみはがれないように気をつけろよ。」

 盗賊か何かの事務所ですかそこは。

 とりあえず指定された場所に行くしかないよな。

 天秤のエンブレム、間違いない。

 しかし中は薄暗く何も見えないな、今日は定休日か。

 いや、エミリアはそこに行くって言ってたわけだし。

 とりあえず入ってみるか。

「すみません、こちらにエミリアさんはおられますでしょうか。」

 エチケットとしてドアをノックし、開けてみる。

 鍵はかかってないな、でも中は薄暗い。

 受付には誰もいない、やはり休みだろうか。

「すみません、どなたかいらっしゃいますでしょうか。」

 少し大きな声を出す。うむ、反応なし。

「すみませーん。」

「うるさいわね今日はお休みですよ!」

 上から声が飛んでくる。

 見上げた二階部分の踊り場から、メイド服のようなひらりとしたワンピースを着た少女がみえる。

 エミリアよりちょい年下か、いやエルフィーは年齢が若く見えるんだったか。

 栗色の髪がパッツンになってるせいで余計幼く見えるのか。

 そもそもあの子何歳だ。

「こちらにエミリアさんがおられると伺ったのですが。」

「エミリア先輩のお知り合い、でも誰が。」

 いや、独り言大きいな。ここまで聞こえているんだが。

 それに下から見上げると見えそうで見えないワンピースの中が気になってしまう。

 ついつい見てしまいそうになる男の性。

 けしてロリコン趣味ではないのであしからず。

「シュウイチさん大丈夫でしたか!」

 後輩の横を通り過ぎエミリアが階段を駆け下りてきた。

「そんなに慌てなくてもちゃんと足はついていますよ。」

 駆け下りてくるときに見える足がまぶしい。

 いかんいかん、みちゃいけない。でもみたい。

「ご無事で何よりです。それでどうなりましたか。」

「騎士団の皆さんと共に向かいましたが盗賊は逃げた後でした。そして何事もなく帰ってきたんです。エミリアの用事は終わりましたか。」

「はい、事務所の後輩からお給料をいただいてきました。これはシュウイチさんの分です。」

 エミリアから革の袋をもらう。村長のときのようにコインのぶつかる音がする、手渡しで給料をもらうっていいなぁ。振込みだとどうしても機械的になってしまうもんな。

「ありがとうエミリア。」

「中身、確認されないんですか。」

「エミリアを信じていますから、それにここで数えるのも無粋という物ですよ。」

 お金を眼の前で数えるのはさすがに見ていて気持ちのいいものではない。

 ごまかされたところで使う当てのないお金だ。

 多少減っても問題ないだろう。

「あの、エミリア様こちらのお方は。」

「そういえばノアは初めてでしたね。こちらはイナバシュウイチ様、新しい商店の店長をされる方です。」

 エミリアの後ろに隠れるようにこちらを覗いてくる。

 おかしい。

 さっき上から聞こえてきた罵声のような声じゃない。

 もしやこの子、猫をかぶっているのか。

 エミリアも人気者だな。

「はじめまして、イナバシュウイチと申します。エミリアさんとはご一緒に仕事をさせてもらっています。」

「ノアです。」

 ぶりっこ確定。

 あとはどこで化けの皮がはがれるかだ。

「シュウイチ様この通りはもうご覧になりましたか。」

「何軒か見て回りました、ちょっと気になることもあったので情報収集もかねて。」

「それは先ほどの盗賊の件でしょうか。」

「えぇ、気になる程度ですが何せ情報がないものですから。それに、はじめてみる物は何を見ても新鮮でいいですね。」

 何を見ても目新しく、新鮮で面白い。

 単語を聞けばなんとなくどんな物かもわかるし、字が読めなくても意外に何とかなる物だ。

「昼の時間まではまだ時間がありますから、よろしければご一緒に見て回りましょうか。」

「助かります。それに先ほど気づいたんですが、どうやら私は字が読めないようでして。」

「それを忘れていました!村では書く必要もなかったので・・・そうですよね読めませんよね。」

 そうなんです読めないんです。

「エミリアがいれば大丈夫ですよね。少しずつ教えてください。」

「シュウイチさんの為でしたら喜んで、それじゃあノアまた今度。メルクリア様によろしくお伝えください。」

「・・・サン・・・、呼び捨て・・・。」

「ノア?」

 後輩がぶつぶつ何かをつぶやいている。

 エミリアの呼びかけにも反応しない。

 大丈夫かこの子。

「大丈夫、ノア。」

「え、あ、はい。大丈夫です。いってらっしゃいませエミリア様。」

「行って来ます。戸締り忘れないでね。」

 やっと気づいた後輩に会釈をし、商店を出る。

「お一人で大丈夫なんでしょうか。」

「商店の上が住居になってまして、あの子はここに住み込みで働いているんです。休息日ですから他の子は買い物に出ているんでしょうけれどわざわざ私のために残っていてくれたんですよ。」

 住み込みか。

 丁稚奉公のようなかんじだろうか。

 幼い頃から働いて、仕事を覚えていくやつだ。

 もしくは、寮になっているだけかもしれないが。

「それではどこに行きましょうか。」

「エミリアの好きなところで大丈夫ですよ、いろいろ見せてください。」

「喜んで、それじゃあまずは食べ物のお店からですね。」

 いきなり飲食店ですか。

 さすがエミリア。

 でも、これでやっとデートっぽくなるな。

 時間までたっぷり楽しませてもらおう。

「シュウイチ様こっちです!」

 はしゃぐエミリアと共に時間いっぱい楽しむのであった。

 あれ、昼の鐘でどこに行くんだっけか。

 まぁいいか。
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