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第一章

異世界行ってみたらこんなところだった~お金編~

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 話を戻そう。

 エミリアの乳は偉大という話だった。

 ちがう、休日の話だ。

「こちらの世界では、暦はどのようになっているんでしょうか。太陰暦、太陽暦、それとも独自の物をつかっているのでしょうか。」

 現実世界は太陽暦を使用している。

 昔は太陰暦だったが月だとどうしても実際小地球の公転周期からのずれが大きすぎるので、現在は太陽暦の一種グレゴリオ暦を使用している。1年は365日(閏年は366日)で時間は24時間。時間は60分で1時間。60秒で1分。

 数字の基本も大事だ。10進法ならば現在と同じだが時計のように12進法を使うとややこしくなる。

 もちろん、電子の世界2進数なんて使おうものなら桁が訳わからなくなる。

 暦も数字もそれを発見するためには非常に大変な時間と労力がかけられている。昔の人よありがとう。

「シュウイチ様の世界とは若干異なってはいますが大体は同じような感じです。こちらの世界では暦が一周するのに360日かかります。それを4つの節で分割し、一つの節を3つの期で分割します。期は種期、草期、花期との順で変わります。期は5つの週に分けられ週は5日の労働の日と休日の聖日の6日で構成されます。」

 えーっと、つまりはあれか。

 1年360日を四季にわけて各シーズン3か月。一週間6日で5週回って一か月と。

 週7日で考えてるとややこしくなるな。

 日曜日にあたる聖日で月曜にリセットと。

 土曜が消えてしまったと思うと休みが少ないな。

「聖日のほかに陰日と休息日がありましたね。あれはどのあたりに組み込まれるんですか。」

「3週目の234日目が陰日となります。陰日は世界の地脈や魔力などの見えない力がよどむ時期になりますので、事故など無いように休むように決められています。商売を営む人はあまり関係はありませんが、休むように定められています。そして、5週目の45日目が休息日となっています。最終日の聖日も含めて最後の三日間はお休みとなっていますが、こちらは飲食の方々などは働いても良いこととされています。」

 毎月半ばと最終週に三連休。

 計算すると休みが月10日。

 土日休みの5週間と考えるとあまり変わらないのか。定休日を決めなければならないからむしろ多いと考えるべきだろう。

 ホワイトすぎる。

 まぶしくて目もあけられん。

「陰日は飲食店も含めて休みなんですね。その時は買い物などどうされているですか。」

 休日は商売人の稼ぎ時だ。

 その日を強制的に休めというのはわかるが、それで経済や生活は成り立つのだろうか。

 コンビニが毎日開いている世界にいるせいで、すべての商業が停止するタイミングの理解に苦しむ。

 稼ぐときは稼ぐ。

 それはどの世界でも商いを営む者の定めだと思うのだが。

「陰日はすべてのお店が休みますので事前に準備します。仮に必要になった場合にはあきらめるか物々交換で手に入れますね。皆さんお休みなのが普通なのであまり困ったことはありません。」

 昔は正月はどの店も休みだったと聞いたことがある。

 従業員も人であり生活がある。

 そういういみではすべてが休みであるべきなのかもいれない。

 多少不便があったからと言ってそれに文句を言うような人はいないのだろう。

 当たり前であることの基準が現実世界と違う。

 この不便さがむしろこちらでは当たり前なのだ。

「休息日は営業されているお店もあるわけですね。」

「そうですね、休息日はお給料日でもありますので皆さんこのタイミングでたくさんお買い物をされます。ただ、休息日はダンジョンに潜るのを禁じられていますのでダンジョン商店はお休みになります。」

 休息日だからこそダンジョンの探索も休みなのか。

 逆を言えばダンジョンの整備や改修、召喚などをこの辺りにもってくれば邪魔されることなく作業できるわけだな。

 魔力を溜めるという根本的な部分は止まってしまうが、そうでもしないとすべて刈り尽されてしまう可能性がある。

 このダンジョンへの進入禁止令ははもしかすると昔のダンジョン作成者が作らせた決まり事なのかもしれない。

「休息日は皆さん有意義に過ごされているわけですね。」

 ワーカホリックにはつらいかもしれないが、これぐらいの強制力がないと自分のようなブラック社員は休まないのかもしれないな。

 しかし、休日はただ寝るだけだったから、有意義に過ごす過ごし方なんてわからないんだが。

「私はお買い物に出たり、家の片づけをしたりしますね。フィフティーヌ様はここぞとばかりに甘いものを食べに行かれています。」

 やはり鬼は甘いものが好きなのか。

「休息日が給料日ですか。銀貨20枚に諸経費入れて30枚でしたね。銀貨1枚はどのぐらいの価値があるのでしょうか。」

 銀貨というぐらいなのだから比較的価値があると思いたい。

 しかし、実はこの世界では銀はありふれていて一番価値のない金属ということであれば、銀貨1枚でうまい棒1本しか買えないということも十分考えられる。

 毎月うまい棒30本だけでは生きていけない。

 せめて3千本ぐらいあればカロリーだけで考えれば生きていけるかもしれない。栄養素は皆無だけれど。

「銀貨1枚ですとシュウイチ様の世界でいう1万円ぐらいになると思います。」

 うまい棒3万本でした。十分生きていける。

 つまりは毎月の給料は30万ももらえるということか。

 仕事内容がどんなものかはわからないが、30万ももらえると考えたら十分すぎるほどの給料だ。

 光熱費はないだろうし、家賃も年金も健康保険料も払わなくてもいい。

 そうかんがえると、ものすごい金額をもらうことになるな。

 あとは物価がどのくらいかだ。

 物価が高ければ結局のところ安月給と変わらない。

「通貨は銀貨だけでしょうか。」

「こちらの世界では主に銅貨、銀貨、金貨の3つが流通しています。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚と両替できます。他には琥珀や真珠、翡翠などの宝石類もございますがこちらは1度貨幣に両替しなければ一般のお店では使用できません。亜人種の方々はあまり貨幣を使用されませんので物々交換で持参される場合があります。」

 銅貨が百円で銀貨が一万円金貨が百万円か。

 金貨というだけあってやはり高価だな。

 庶民があまり見ることのない貨幣になるだろう。

 いや、ダンジョンの報酬を考えると金貨10枚ぐらいないと命の危険を冒して入ってくることはないかもしれない。

 破産即死亡の身としてはこの報酬をいかに払わずに稼ぐかが大事になってくるな。

 10枚あれば1000万円。

 年収で考えても十分な金額だ。

 普通に生活して稼げない金額だからこそ一攫千金を狙ってくるわけだ。

 宝くじの億単位に比べるとまだまだかわいい金額に見えてくる。

「物価はどのような感じですか。そうですね、3食食べて宿に泊まるとしたらどのぐらいのお金がかかるのでしょうか。」

 物価の基本は食事だ。

 それに宿の値段もわかれば1日生活するのに必要な金額がわかる。

 冒険者を相手にする商売だからこそ彼らが1日にいくら必要とするのかを把握しておかなければならない。

 安すぎてもぼったくってもいけない。

 ギリギリの金額を攻めて稼ぐことが重要なのだ。

「食事ですが、大体ですけど毎食銅貨10枚ぐらいです。一般的な宿に宿泊するときは3食付いて銅貨50枚ぐらいが相場ですね。食事なしだと30枚で宿泊できます。」

 一泊3食付き五千円か、そう考えると安く感じるな。

 一か月宿泊すると銅貨1500枚だから銀貨15枚。給料で考えるとそんなに高給というわけではないのかもしれないなぁ。

 食事光熱費家賃込みで15万。

 10人宿泊すると一か月150万の売り上げか。

 商店開くよりも宿屋でも始めたほうが儲かるんじゃないか。

 そうか、食費や回すだけの人件費を考えるとあまり効率のいいものじゃないかもしれない。

 畑違いに手を出すよりもまずは自分の足元から固めていかないとな。

 なんせ自分の首がかかっているんだ。

 慎重に、かつ大胆にいかなければいけない。

「なるほど。やはりお金のことがわかっていないと商売になりませんからね。ありがとうエミリア、勉強になります。」

「そんな、お礼を言われるほどのことなんてしてません。まだまだ至らぬところだらけですが何でも聞いてください。頑張ってお店もダンジョンも大きくしていきましょうね。」

 胸元でガッツポーズを作るエミリア。

 あざとい。

 あざといぞこの娘。

 狙ってやっているならば策士だ。

 素でやっているならば小悪魔だ。

 どちらにしろ、可愛いのだ。

 こんなかわいい子が担当でよかった。

 ガチムチのおっさんが担当だったら速攻で現実に帰っているところだった。

「ちなみに、商店で主に販売する商品はどんなものがありますか。」

 序盤ダンジョンといえばやはり薬草だろう。

 薬草、毒消し、麻痺消し。

 武器でいえば銅の剣に革の鎧、革の盾といった感じだろうか。

 入門編アイテムだからこそ序盤の必須アイテムになる。

 必須ということはよく売れるということだ。

 ダンジョンが成長していない段階であればこれが主力商品であり稼ぎ頭になる。

「一番よく売れるのは薬草です。次が毒消しと銅の剣やダガーなんかも扱いやすくて人気ですよ。」

「ちなみにおいくらで販売されていますか。」

「薬草は銅貨30枚で販売しています。」

 薬草高!
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