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ようやく映画が完成した。
ライトはかなり頻繁にこちらに来ている。
映画を撮るのがよほど楽しいのだろう。
そんな雰囲気が彼女の全身から伝わった。
彼女の来る頻度が増えたため、ぼくと違って忙しい松川君がなかなか日程が合わない。
その辺りはライトの一人のシーンを増やすように、脚本を書き直して進めた。
「ショウは参加できないこと、かなり悔しいってメールで言っているよ」
ライトは笑いながらそんなことを話した。
元々は一日だけの遊び感覚だったのに、ここまでみんなが熱中しているのは不思議な感じだ。
夏休みの後半から撮り続けていた甲斐もあり、九月の中頃には最後の所を撮り終えた。
これで映画作りは終わりかというとそうではなく、二人の時にぼくが書いた台本を読んだライトが、
「これすごく面白いよ。次はこれにしようよ!」
と早くも次作に意欲的で、三人の協議により次の制作も決まっている。
ちょうどそれはライトと再会した後に書き終えたシナリオで、それを彼女が気に入ってくれたのが嬉しい。
最後の撮影が終わったので、後は編集作業の仕上げだけだ。
ぼくは本で得た付け焼き刃の技術で、一人行っていた。
さすがに最後の編集は家では難しく、いくつかのテレビがある学校の視聴覚室を借りて行うことになった。
担任の加納先生に鍵を借りるのを頼みに行くとき、かなり緊張したけど理由を話すと思ったより簡単に貸してくれた。
加納先生が、アマチュア映画に対して非常に理解があった為だ。
「私も学生時代はよくみんなで集まってやったものだわ」
遠くに眼を向けながら先生は言った。
見るからに堅物のような彼女が、学生時代に仲間内で映画を撮っていたという話は驚きだった。
出来は我ながら上等だった。
ちゃんとした映像作品ならどこかに応募したりで、現実を見せつけられる事になるかもしれない。
でも三人しか視聴者がいないこの作品にそれは無用だ。
編集を終えると、鍵を返して校舎を後にする。
撮影中にシーンの見直しを見たものの、二人には通した映像をまだ見せていない。
二人とも完成作品を、1から見たいとのことだからだ。
明日の日曜日に、上映会をすることが決まっている。
鍵を返すとき、加納先生に「後で私にも見せてもらえる?」と提案されたときは言葉がつかえた。
ライトの姿は映像で映しても、ぼくらにしか見えない。
きっと何を写しているのか、彼女にはわからないからだ。
「冗談よ。下手すぎて人に見せるのが怖いとか気持ちはわかるから」
幸いぼくの沈黙はそう受け取られたようだ。
最後の仕上げだけだったので、すぐに終わると思っていたら、時計を見ると結構な時間が経っていた。
グラウンドでは運動部の部活も終わっているか、片付けに入っている。
サッカー部の練習も終わっているようだった。
松川君のことだから同じサッカー部や、他の部員の友達に囲まれていることだろう。
いくら作品の完成に興奮していても、そんな中に入れるとは思わないのでこの興奮を伝えることはあきらめる。
校舎から出ようとして、突然不安感が起こった。
もしかしたらまだどこか編集に妙なミスがあって、全てを台無しにしているのでは無いかと。
時間が経ったと言っても校舎が閉まるにはまだ時間がある。
どこかで一通り見て、何かあったら加納先生に頼み込んでみよう。
適当な教室のドアを開けると、そこは空いていた。
教室の真ん中ぐらいまで入ってから、カメラを構えて再生を押す。
なにげないことが、あんなトラブルになるなんて、その時は思わなかったんだ。
ライトはかなり頻繁にこちらに来ている。
映画を撮るのがよほど楽しいのだろう。
そんな雰囲気が彼女の全身から伝わった。
彼女の来る頻度が増えたため、ぼくと違って忙しい松川君がなかなか日程が合わない。
その辺りはライトの一人のシーンを増やすように、脚本を書き直して進めた。
「ショウは参加できないこと、かなり悔しいってメールで言っているよ」
ライトは笑いながらそんなことを話した。
元々は一日だけの遊び感覚だったのに、ここまでみんなが熱中しているのは不思議な感じだ。
夏休みの後半から撮り続けていた甲斐もあり、九月の中頃には最後の所を撮り終えた。
これで映画作りは終わりかというとそうではなく、二人の時にぼくが書いた台本を読んだライトが、
「これすごく面白いよ。次はこれにしようよ!」
と早くも次作に意欲的で、三人の協議により次の制作も決まっている。
ちょうどそれはライトと再会した後に書き終えたシナリオで、それを彼女が気に入ってくれたのが嬉しい。
最後の撮影が終わったので、後は編集作業の仕上げだけだ。
ぼくは本で得た付け焼き刃の技術で、一人行っていた。
さすがに最後の編集は家では難しく、いくつかのテレビがある学校の視聴覚室を借りて行うことになった。
担任の加納先生に鍵を借りるのを頼みに行くとき、かなり緊張したけど理由を話すと思ったより簡単に貸してくれた。
加納先生が、アマチュア映画に対して非常に理解があった為だ。
「私も学生時代はよくみんなで集まってやったものだわ」
遠くに眼を向けながら先生は言った。
見るからに堅物のような彼女が、学生時代に仲間内で映画を撮っていたという話は驚きだった。
出来は我ながら上等だった。
ちゃんとした映像作品ならどこかに応募したりで、現実を見せつけられる事になるかもしれない。
でも三人しか視聴者がいないこの作品にそれは無用だ。
編集を終えると、鍵を返して校舎を後にする。
撮影中にシーンの見直しを見たものの、二人には通した映像をまだ見せていない。
二人とも完成作品を、1から見たいとのことだからだ。
明日の日曜日に、上映会をすることが決まっている。
鍵を返すとき、加納先生に「後で私にも見せてもらえる?」と提案されたときは言葉がつかえた。
ライトの姿は映像で映しても、ぼくらにしか見えない。
きっと何を写しているのか、彼女にはわからないからだ。
「冗談よ。下手すぎて人に見せるのが怖いとか気持ちはわかるから」
幸いぼくの沈黙はそう受け取られたようだ。
最後の仕上げだけだったので、すぐに終わると思っていたら、時計を見ると結構な時間が経っていた。
グラウンドでは運動部の部活も終わっているか、片付けに入っている。
サッカー部の練習も終わっているようだった。
松川君のことだから同じサッカー部や、他の部員の友達に囲まれていることだろう。
いくら作品の完成に興奮していても、そんな中に入れるとは思わないのでこの興奮を伝えることはあきらめる。
校舎から出ようとして、突然不安感が起こった。
もしかしたらまだどこか編集に妙なミスがあって、全てを台無しにしているのでは無いかと。
時間が経ったと言っても校舎が閉まるにはまだ時間がある。
どこかで一通り見て、何かあったら加納先生に頼み込んでみよう。
適当な教室のドアを開けると、そこは空いていた。
教室の真ん中ぐらいまで入ってから、カメラを構えて再生を押す。
なにげないことが、あんなトラブルになるなんて、その時は思わなかったんだ。
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