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ライトの約束の日が明日に迫っている。
次第にそわそわしてきたけど、どたんばになっても課題が解決されていなかった。
脚本の方は大丈夫。
すっかりスランプから抜けだし、興奮で寝れないこともあってあっという間にシナリオを書き終えた。
今回のはライトに見せても大丈夫だと自信を持って言える。
問題はまだ松川君に知らせていないことだ。彼に連絡する手段を知らないのだ。
携帯電話を持っていないぼくは、クラスの輪から孤立している。
持っていたところでクラスメイトの輪にはいれる自信なんか無いけども。
ただ彼がサッカー部であることは知っているし、夏休みでもサッカー部は精力的に練習をしている。
だから翌日、ぼくは朝から学校に向かった。
ぼくらの学校は土日で無ければ図書室は空いていて、自習勉強をしたり、本を借りることができるようになっていた。
図書室からはグラウンドは近い。
ぼくは一番窓際の、グラウンドが見える席に陣取ると、いかにも勉強をしていますという振りをしながらサッカー部の練習をうかがっていた。
機会は意外に早くやってきた。
試合形式の練習(たぶん)をしていたみたいだけど、ぽんぽん得点を取っていた松川君がグラウンドから離れたのだ。
交代したらしい。
そしてそのままグラウンドの外れにある、トイレの方に一人で向かっているのが見えた。
これが彼と接触する最後のチャンスだ。
廊下へ飛び出すと、松川君の方に駆けていった。
久しぶりに走ったので息があがる。
それでもなんとか松川君に追いつくことが出来た。
「松川君」
彼の名前を呼んで駆け寄り、上がった息を整える。
それからはたと気付いた。どういう風に話を切り出したら良いのだろう。
元々人に話かけるのは苦手で、下校中にクラスメイトと会ったら隠れるような人間だ。
それにぼくは松川君とはあれから一度も話をしておらず、どこまで彼がぼくが話しかけてきたことを不快に思わないか不安だった。
「どうしたんだ、トヨジ」
ぼくの不安なんか一切気にしないような笑顔をぼくに向ける。
うまく説明できる自信が無くて、逃げ出しだしたくなる。
「は、話があるんだ」
「ああいいぞ。先にトイレ行っていいか?」
何度も頷く。少し間が出来たおかげで少し落ち着くことが出来た。
やがて用を足して戻ってきた彼に、「ライトの事覚えている?」と切り出してみた。
「そういう話はもっと早くしろよ」
もう一度彼女と出会ったことを話すと、いつも柔和な表情を浮かべている松川君が珍しく眉間に皺を寄せた。
「オレ、おまえが何も言い出してこないから、もしかしたら夢だったのかもと思っていたじゃないか」
「ご、ご、ごめん」
ぼくだって同じように思っていたし、確認しようにも松川君はいつも誰かと一緒でそんな話をする機会が無かった。
もちろんそんな不平を口にしたり出来ないけど。
「で、次はいつ来るって?」
「明日だけど」
「なんで早く言わないんだ!」
「ご、ごめん」
怒鳴られてしまうと思わず萎縮してしまう。
松川君はそんなぼくの様子なんか気にもなっていないようで「明日、明日か……」とつぶやく。
ポケットからスマホを探そうとしたのだろう。自分がユニフォームでスマホがないということに気づいて、軽く舌打ちする。
「大丈夫、もちろんいくさ。時間は?」
ライトに指定された時間を告げると松川君は「わかった、じゃあ明日な」とぼくに告げると、彼の名前を呼ぶサッカー部員に手を挙げて練習に戻った。
彼のような人種はこういう何気ない仕草すら絵になるのだなあと、妙な所で感心した。
これで最後の課題は終わった。
ほっと胸をなで下ろすと、今度は期待で胸が膨らんでくる。
明日、またライトと会える。
話したいことがたくさんあった。
今日は果たして眠れるだろうか。
次第にそわそわしてきたけど、どたんばになっても課題が解決されていなかった。
脚本の方は大丈夫。
すっかりスランプから抜けだし、興奮で寝れないこともあってあっという間にシナリオを書き終えた。
今回のはライトに見せても大丈夫だと自信を持って言える。
問題はまだ松川君に知らせていないことだ。彼に連絡する手段を知らないのだ。
携帯電話を持っていないぼくは、クラスの輪から孤立している。
持っていたところでクラスメイトの輪にはいれる自信なんか無いけども。
ただ彼がサッカー部であることは知っているし、夏休みでもサッカー部は精力的に練習をしている。
だから翌日、ぼくは朝から学校に向かった。
ぼくらの学校は土日で無ければ図書室は空いていて、自習勉強をしたり、本を借りることができるようになっていた。
図書室からはグラウンドは近い。
ぼくは一番窓際の、グラウンドが見える席に陣取ると、いかにも勉強をしていますという振りをしながらサッカー部の練習をうかがっていた。
機会は意外に早くやってきた。
試合形式の練習(たぶん)をしていたみたいだけど、ぽんぽん得点を取っていた松川君がグラウンドから離れたのだ。
交代したらしい。
そしてそのままグラウンドの外れにある、トイレの方に一人で向かっているのが見えた。
これが彼と接触する最後のチャンスだ。
廊下へ飛び出すと、松川君の方に駆けていった。
久しぶりに走ったので息があがる。
それでもなんとか松川君に追いつくことが出来た。
「松川君」
彼の名前を呼んで駆け寄り、上がった息を整える。
それからはたと気付いた。どういう風に話を切り出したら良いのだろう。
元々人に話かけるのは苦手で、下校中にクラスメイトと会ったら隠れるような人間だ。
それにぼくは松川君とはあれから一度も話をしておらず、どこまで彼がぼくが話しかけてきたことを不快に思わないか不安だった。
「どうしたんだ、トヨジ」
ぼくの不安なんか一切気にしないような笑顔をぼくに向ける。
うまく説明できる自信が無くて、逃げ出しだしたくなる。
「は、話があるんだ」
「ああいいぞ。先にトイレ行っていいか?」
何度も頷く。少し間が出来たおかげで少し落ち着くことが出来た。
やがて用を足して戻ってきた彼に、「ライトの事覚えている?」と切り出してみた。
「そういう話はもっと早くしろよ」
もう一度彼女と出会ったことを話すと、いつも柔和な表情を浮かべている松川君が珍しく眉間に皺を寄せた。
「オレ、おまえが何も言い出してこないから、もしかしたら夢だったのかもと思っていたじゃないか」
「ご、ご、ごめん」
ぼくだって同じように思っていたし、確認しようにも松川君はいつも誰かと一緒でそんな話をする機会が無かった。
もちろんそんな不平を口にしたり出来ないけど。
「で、次はいつ来るって?」
「明日だけど」
「なんで早く言わないんだ!」
「ご、ごめん」
怒鳴られてしまうと思わず萎縮してしまう。
松川君はそんなぼくの様子なんか気にもなっていないようで「明日、明日か……」とつぶやく。
ポケットからスマホを探そうとしたのだろう。自分がユニフォームでスマホがないということに気づいて、軽く舌打ちする。
「大丈夫、もちろんいくさ。時間は?」
ライトに指定された時間を告げると松川君は「わかった、じゃあ明日な」とぼくに告げると、彼の名前を呼ぶサッカー部員に手を挙げて練習に戻った。
彼のような人種はこういう何気ない仕草すら絵になるのだなあと、妙な所で感心した。
これで最後の課題は終わった。
ほっと胸をなで下ろすと、今度は期待で胸が膨らんでくる。
明日、またライトと会える。
話したいことがたくさんあった。
今日は果たして眠れるだろうか。
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