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最終章 冒険の終わり

たどり着いたその先に

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 山間にある集落のため池を覗き込んだつばさは、そこにうつる自分の顔をじっと見ていた。
 かつて色白で痩せていた顔はよく焼けて、引き締まっていた。
 髪の毛は陽に焼けてかさかさだ。
 これは本当に自分の顔だろうか、と不思議に思った。
 つばさは池から視線を外すと、近くの小さな家に身体を向けた。
 この地に住んでいる障りは、人と木が融合したような感じだった。
 木をテントのように組み合わせた家で過ごしている。
 高度が高く、時折雲が山を包んで不思議な景観を作っていた。
 集落の入り口で子供に話を聞いてみたところ、お父さんなら知っていると言って案内されたのがこの家だ。
 高い子供の声が聞こえ、遅れて木枯らしのような障りが現れた。
 ヒゲみたいなのが顔にあごの下に生えているのが見える。

「おれにようがあるっていうのはあんたらか?」

 男はつばさとカイムの方を見ながら尋ねてきた。
 興味があるのか周囲にはさっき案内してくれた彼の子供や、他の障りが遠巻きに見ている。旅人じたいが珍しいのだろう。

「あなたが霧を場所を知っているお聞きまして」
「ああ、それなら」

 男は一際高い、雲に覆われた山の方を指さした。

「山の向こうに大きな湖があるんだがよ。そこに前からずっと霧がかかっているんだ」

 つばさは肩の上に乗るカイムと顔を見合わせる。そして頷き合った。

「それはどれぐらい前からですか?」
「もう一年ぐらい前じゃないか? この時期にあの湖の側で取れる山菜を採りに行った時だからよ」
「雲がかかっていたのではなくて?」
「雲と霧ぐらいわかるさ。それから二月ぐらいしてからもう一度見に行ったらまだ霧がかかったままだったよ。なんだか薄気味悪くてよ。それからは見ていないがな」

 間違いないと思った。 
 つばさは男が指さした山頂を見上げる。
 あそこに主が逃げ込んだのだ。

「カイム、やっぱり……」
「うむ、主で間違いないじゃろう」

 二人はうなづきあった。
 主を探して長い旅をしてきた。
 ようやくそれが終わろうとしている。

「その霧ってあんたらとなんか関係あるのか?」
「ええ、そうかもしれません」

 男に礼を言うと、二人は村人たちの注目をあびながら村を後にした。

 最後の時が訪れようとしている。
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