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一章 異世界へ
わたしは一人前だから、と彼女は笑い
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しばらく歩いたところで水場を見つけた。
休憩することにして互いに旅の荷物をいれたかごを下ろす。
そのままつばさは座り込んだ。
朝から歩き通しでクタクタだった。
足はもちろん荷物を担いだ肩も痛くて痛くて仕方が無い。
ただ乗っているだけで目的地へ運んでくれる、自動車や電車がどれだけ素晴らしい乗り物か。
「はい」
革でできた水筒をサギが手渡してくれる。そこの湧水から汲んできたらしい。
つばさは口をつけると半分ほど一気に飲んだ。冷たくてとても美味しかった。
生き返ったとはこういうことをいうのだろうか。
口を離すとサギがそれをひょいと取り上げて同じように飲む。
その動作につばさはどきりとして彼女を見つめる。
「どうかしたのかい?」
「え、えーと……その、木の道具は何かなって?」
慌ててしどろもどろにごまかす。
サギは気にした様子もなく、下ろした荷物を広げて見せた。
「これは分解した機織り機だよ」
「ハタオリ機? それって何をするの?」
「木の皮の繊維を使って服とかを折るんだ」
森の中でそんな話をしていたことを思い出す。
「サギって裁縫なんかできるんだね」
「ナーナイは手先が器用で代々編み物とか木細工の技が伝わっているんだ。それで旅の途中でしばらく滞在してそこの住人達に編み物を編む。代わりに生活をするためにものを分けて貰っているんだ」
「え? じゃあ服とか全部サギが作ったの」
つばさはサギの顔から服、それから胸元の首飾りに視線を落とす。
変わったデザインだけどよくできていて、とても子供が作ったものとは思えない。
「食器やおはしも?」
「そうだよ。靴もね」
「凄いんだね」
「ナーナイだから当然だよ。その代わりわたしはチェロムみたいに動物を狩ったり出来ないから」
当然だというような口調だった。
つばさは感心して彼女が作ったとものをまじまじとみる。
変わったデザインだけど、店で売っているものみたいだ。
とても同じ年ぐらいの子が作ったなんて思えなかった。
「この服とか首飾りの渦巻き状の線もわざわざいれるの?」
「そうだよ。この文様でどこで伝わる技術かどうかわかるんだ」
「へえ、その首飾りをよく見せてもらっていい?」
「ごめん、これはちょっと……大事なものなんだ。代わりに食器をみせてあげる」
そう謝って、かごから食器を取り出して手渡してくる。
受け取った深皿をみると、やっぱり渦巻き状の文様がある。
それに外側上部は他のとは趣が違う模様があった。
「この花と鳥の絵みたいなものも?」
「そうだよ」
「これもサギに伝わっている技術みたいなもの?」
「ううん。絵があったほうがかわいいでしょ」
こっちの世界の女の子も、こういうところは変わらないらしい。
「そういえば伝わっている技術ってことは、サギ。お父さんとかお母さんから教えてもらったんだよね。両親はどこに住んでいるの?」
サギは不思議そうな表情でつばさを見つめ返してきた。
「何を言っているのさ。わたしはもう一人前だよ。一人前のナーナイは一人で旅をするものだから」
今度はつばさが目を丸くした。
「一人で? サギはぼくとそんなに年とかかわらないじゃないか」
「ナーナイに限らず障りはみんなそうさ。親や一族から生きていく術を教えて貰う。それで一人前として認められたら巣立つんだよ」
「でも……」
「わたし、そんなに頼りない?」
逆に尋ねられて返事に困った。
サギは頼りになる。彼女がいないと一日だって生きていけないだろう。
そう、つばさは何もできない。
そのつばさと同じ年ぐらいのサギは当たり前のようになんでもできる。
そのことになんともいえない感情がうずまく。
「その、寂しくはないの? サギも、他の障りも」
「さすがに一人で旅をする障りはそんなに多くないかな。でも旅先でいろいろな出会いがあるから寂しくないよ。つばさだってそれで出会ったんだし」
そのおかげでつばさは助かったのだ。だけど・・・・・・。
「それにつばさだってもうじき一人前なんでしょ?」
「どうして?」
「学校って勉強するところで、いずれ卒業するって。それってつまりつばさが一人前になったから卒業なんだよね」
無邪気に話すサギにどう返事していいかわからなかった。
学校で勉強したところで、せいぜいちょっと知識が増えるだけだ。
とてもではないけど一人で生きていくことなんてできない。
一体なにから卒業するというのだろう。
「そりゃ一人前でないと仕事を任せてもらえないし、悔しい思いをするのは当然だけど、たまたまわたしが少し早いだけなんだ。気にすることないよ」
つばさは答えられなかった。
自分一人でなんでもできるようになる。
そんなこと今まで、考えたことすらなかったのだから。
休憩することにして互いに旅の荷物をいれたかごを下ろす。
そのままつばさは座り込んだ。
朝から歩き通しでクタクタだった。
足はもちろん荷物を担いだ肩も痛くて痛くて仕方が無い。
ただ乗っているだけで目的地へ運んでくれる、自動車や電車がどれだけ素晴らしい乗り物か。
「はい」
革でできた水筒をサギが手渡してくれる。そこの湧水から汲んできたらしい。
つばさは口をつけると半分ほど一気に飲んだ。冷たくてとても美味しかった。
生き返ったとはこういうことをいうのだろうか。
口を離すとサギがそれをひょいと取り上げて同じように飲む。
その動作につばさはどきりとして彼女を見つめる。
「どうかしたのかい?」
「え、えーと……その、木の道具は何かなって?」
慌ててしどろもどろにごまかす。
サギは気にした様子もなく、下ろした荷物を広げて見せた。
「これは分解した機織り機だよ」
「ハタオリ機? それって何をするの?」
「木の皮の繊維を使って服とかを折るんだ」
森の中でそんな話をしていたことを思い出す。
「サギって裁縫なんかできるんだね」
「ナーナイは手先が器用で代々編み物とか木細工の技が伝わっているんだ。それで旅の途中でしばらく滞在してそこの住人達に編み物を編む。代わりに生活をするためにものを分けて貰っているんだ」
「え? じゃあ服とか全部サギが作ったの」
つばさはサギの顔から服、それから胸元の首飾りに視線を落とす。
変わったデザインだけどよくできていて、とても子供が作ったものとは思えない。
「食器やおはしも?」
「そうだよ。靴もね」
「凄いんだね」
「ナーナイだから当然だよ。その代わりわたしはチェロムみたいに動物を狩ったり出来ないから」
当然だというような口調だった。
つばさは感心して彼女が作ったとものをまじまじとみる。
変わったデザインだけど、店で売っているものみたいだ。
とても同じ年ぐらいの子が作ったなんて思えなかった。
「この服とか首飾りの渦巻き状の線もわざわざいれるの?」
「そうだよ。この文様でどこで伝わる技術かどうかわかるんだ」
「へえ、その首飾りをよく見せてもらっていい?」
「ごめん、これはちょっと……大事なものなんだ。代わりに食器をみせてあげる」
そう謝って、かごから食器を取り出して手渡してくる。
受け取った深皿をみると、やっぱり渦巻き状の文様がある。
それに外側上部は他のとは趣が違う模様があった。
「この花と鳥の絵みたいなものも?」
「そうだよ」
「これもサギに伝わっている技術みたいなもの?」
「ううん。絵があったほうがかわいいでしょ」
こっちの世界の女の子も、こういうところは変わらないらしい。
「そういえば伝わっている技術ってことは、サギ。お父さんとかお母さんから教えてもらったんだよね。両親はどこに住んでいるの?」
サギは不思議そうな表情でつばさを見つめ返してきた。
「何を言っているのさ。わたしはもう一人前だよ。一人前のナーナイは一人で旅をするものだから」
今度はつばさが目を丸くした。
「一人で? サギはぼくとそんなに年とかかわらないじゃないか」
「ナーナイに限らず障りはみんなそうさ。親や一族から生きていく術を教えて貰う。それで一人前として認められたら巣立つんだよ」
「でも……」
「わたし、そんなに頼りない?」
逆に尋ねられて返事に困った。
サギは頼りになる。彼女がいないと一日だって生きていけないだろう。
そう、つばさは何もできない。
そのつばさと同じ年ぐらいのサギは当たり前のようになんでもできる。
そのことになんともいえない感情がうずまく。
「その、寂しくはないの? サギも、他の障りも」
「さすがに一人で旅をする障りはそんなに多くないかな。でも旅先でいろいろな出会いがあるから寂しくないよ。つばさだってそれで出会ったんだし」
そのおかげでつばさは助かったのだ。だけど・・・・・・。
「それにつばさだってもうじき一人前なんでしょ?」
「どうして?」
「学校って勉強するところで、いずれ卒業するって。それってつまりつばさが一人前になったから卒業なんだよね」
無邪気に話すサギにどう返事していいかわからなかった。
学校で勉強したところで、せいぜいちょっと知識が増えるだけだ。
とてもではないけど一人で生きていくことなんてできない。
一体なにから卒業するというのだろう。
「そりゃ一人前でないと仕事を任せてもらえないし、悔しい思いをするのは当然だけど、たまたまわたしが少し早いだけなんだ。気にすることないよ」
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