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第六章
第二話 ひとつめ
しおりを挟むそして放課後。
時刻としては夕方であり、グラウンドや体育館、および訓練施設や各種部室には部活動や自主練をする生徒達がいた。一年生校舎のなかにも、駄弁っている奴らがちらほらと見受けられる。
「最初の七不思議は、『存在しない地下室』だよー」
一年生校舎の一階廊下、少し先を歩くトパが元気よく言う。
「この校舎は一階から四階まであって、地下室は存在しないはずなんだけど、ふとした拍子に次元が歪んで、ないはずの地下室が現れるっていうんだー」
さて、しょっぱなから変なのがきやがった。七不思議というからには、変なことのほうが当たり前なのだろうが。
「その地下室になにがあるのかは分からなくて、一説には、実はその地下室は生きていて、迷い込んだ人間を食べちゃうらしいんだよー」
「よくそんなもんを探そうなんて思ったな」
「地下室退治よろしくねー、レインー」
人任せかよ。
「地下室は一年生校舎だけじゃなくて、それぞれの学年の校舎に出現するらしいけど、まあ、他の校舎には行きにくいからねー。とりあえず、あたし達の校舎を調べちゃうよー」
「つーか、こういうのって夜中に出るもんじゃねえのか? まだ普通に他の奴らがうろちょろしてんのに、七不思議なんて出んのかよ」
「この地下室に関しては、時間はあんまり関係ないみたいー。出るときはあっさり出て、出ないときは全然出ないんだってー」
「運ゲーかよ。つーか、さっきから聞いてりゃツッコミどころ満載だな」
迷い込んだ人間を食べるというのなら、地下室に行って帰還出来た奴はいないはずなのに、こんなうわさが広がっていたり。
そもそも願いを叶えるためには全ての七不思議を体験する必要があるのに、出くわすのが運な上に、体験したら食われて死ぬやつがあったり。
もはやこの七不思議は創作ですと言ってるもんじゃねえか。
「まあまあ、細かいことは気にしない気にしない。とりあえずいまは地下室を探して、で、そのあとはいまの時間帯でも出会えるかもしれない七不思議を回っていこー」
トパがグーにした手を元気よく上げる。
「やっぱり、おまえも七不思議はウソだと思ってんだろ」
「えー、そんなことないってー」
トパが、にへらと笑う顔を向けてくる。軽い調子で言ってる辺り、やっぱりウソだと思ってるっぽいな。
そうして校舎を歩き回ること約三十分。案の定、地下室への入口とやらはチラ見すらしてこなかった。
ただただ疲れただけだった。くそが。
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