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第五章
第十四話 とりひき
しおりを挟むそんな二人を無視するようにバーベキューをしていた場所へと戻っていくと、農家のほうからおっさんがやってきて。
「いや、遅くなりました。さきほどまで来客がありまして。はい、飲み物や追加の食材ですよ」
「来客……もしかして、女か?」
「ええ」
「…………、学園の制服を着ていなかったか?」
「よく分かりましたね。その通りですよ。クエストの依頼をドタキャンした知り合いに代わって、謝りに来てくれたようでした。もし構わないなら自分が魔物を討伐するとも言ってくれましたが、それはもう無事に終わりましたと伝えると安堵してお帰りになりましたよ」
「…………」
ちっ。まさか、サフィじゃねえだろうな。
持ってきた食材や飲み物を置いていくおっさんがニンジャに気付いて。
「おや? そちらのかたは?」
「あ。彼女はイノさんです。東の国から来たそうで、お腹がすいていたみたいなんで、一緒にバーベキューしてたんです。大丈夫ですよね?」
「ええ。トパさんたちが構わないのなら私も別に構いませんよ。あ、それじゃあ、そちらのかたのお飲み物もお持ちしますね」
「ありがとうございます」「……ありがとうでござる……」
「ござる……?」
そんな会話をしているのを尻目に、通信魔法でサフィに連絡を取ると。
『なに? 休日のこんな時間に連絡してくるなんて。デートの誘いなら遅いんじゃない?』
「とぼけるな。どうせいつもみてえにストーキングしてんだろうが。さっきもクエストの依頼主のところに来たみてえだしな」
『はあ……?』
長方形のウィンドウの向こうのサフィは、心底からわけの分かっていない顔になって。
『言っとくけどね。わたしだっていつもあなたに構ってるわけじゃないからね。今日だって別の用事があったし、あなたがいまどこにいるのかなんて知らないし行ってないわよ』
その顔付きは呆れ気味で、ウソをついているようには見えない。
「なんだと?」
『よく分からないけど、用が済んだのなら切るわよ。いまだって言い訳して抜け出してき……』
「少し待て」
『え?』
おっさんのほうを見て、問い掛ける。
「おい、さっき来た、学園の制服を着た奴の名前は聞いてたか?」
「え? ああ、ええっと、確か、バースさんというかたでした。ユキ=バースさん」
「……そうか」
もう一度サフィのほうに顔を向ける。
「おい、ユキの連絡先は知ってるな? 教えろ」
『…………、もしかして、デートにでも誘うつもり? あなたもやっぱり男の子ね、ユキさん美人だもんねえ、へえー』
最後のほうは白けた顔で棒読み気味だ。
「勘違いすんな。いいから教えやがれ」
『ふーん。ま、別にいーけどー。見返りは?』
「……なにがほしい?」
『それじゃあ、来週末の休日、予定あけといて』
「……ちっ……いいだろう……」
苦々しく了承すると、サフィはニヤリとして。
『取引完了。それじゃあ教えるけど……』
サフィがユキの連絡先を言ってきて、それを通信魔法のアドレス欄に登録した。
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