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第五章

第十二話 ふうじん

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 ニンジュツは魔法と似ているようだが、それを使う際の力の流れ……魔法でいうところの魔力みたいなものを見ることは出来ないらしい。
 いや、おそらくは正確には、『見えてはいる』が、それをニンジュツの力だと理解および認識が出来ていないのだろう。
 どちらにしろはっきりしていることは、現段階では奴が使うニンジュツを事前に察知することは難しいということ。
 だが、そうだとしても出来ることはある。

「疲れるからあんま使いたくはねえが、この際仕方ねえ」

 両足に魔力を込める。
 奴のニンジュツへの対処法は概ね二つ。力の流れが分からないのなら、奴がニンジュツを使う前に倒すことが一つ目。

「行くぜ」

 魔力を込めた足で地面を蹴り、高速で奴へと迫る。はためには突風のようなスピードに見えるだろうが、視力を強化しているニンジャの目にはさすがに捉えられているようだった。

「さすが速いでござるな。でも拙者も負けないでござるよ。風遁・風刃乱舞!」

 奴が人差し指だけを上に伸ばして手を握り込む。ニンジャ独特のポーズなのかはよく分からないが、そうしている奴の前の空気が揺らいで、多量の刃のようなものが飛んでくる。
 おそらくは、魔法でいうところのエアスラッシュあたりの風系の術なのだろう。空気が揺らいでいるおかげで何とか視認出来てはいるが、この量を捌くのは難しいだろう。
 ……普通のやつならな。

「この程度の風の刃なら、問題はねえな」

 高速で迫ってくる風の刃を、手にする魔力剣でことごとく斬り裂いていく。二つ以上同時に来るものは、その分倍速で動くことで対処して。
 ニンジュツの対処法の二つ目。実際に使われたあとに、それをぶっ壊せばいい。それだけのことだ。
 それを目にしたニンジャは少しばかり驚いたように瞳を見開いたあと。

「すごいでござるな。レインどのは忍者の素質が充分にあるでござるよ」

 うれしくねえな。

「でも、その行動は軽率だったでござる。拙者の風刃は空気の刃、空気そのものでござる。ただ斬っただけでは消えないでござるよ」
「なに?」

 奴の言葉の意味は、すぐ目の前に現れていた。斬り裂いたと思っていた風の刃は、空気中に霧散することも地面に落ちることもせず、再び迫ってきたのだ。
 中には斬られたことなど忘れたかのように、すぐ近くの刃と合体して元以上の大きさになったものもありやがる。

「……やっぱデタラメだな。おまえのニンジュツとやらは」
「ふっふっふっ。今度こそ勝ったでござるな。いくらレインどのでも、この量の斬れない風刃はどうにも出来ないでござろう」
「……ちっ。使うしかねえのかよ。面倒くせえ」

 その瞬間、奴の目には、風の刃の中にいた身体が消えたように見えただろう。いや、実際に、その身体はその場から消えていたのだから。

「……瞬転斬……」

 奴の背後から、その背中に魔力剣の切っ先を突きつける。

「……っ⁉」

 驚愕の顔つきで振り返ろうとするニンジャに。

「動けば突き刺す。殺しはしねえが、気絶するくらいには痛てえぜ」
「……っ⁉」

 そういや、もう一つあったな、ニンジュツの対処法。それを使うニンジャを直接潰せば、何もかも方が付く。
 まあどうでもいいか。二つも三つもそんなに変わらねえ。

「俺の勝ち、ってことでいいな?」
「……うぐぐぅ……でござる……」

 相変わらず天然なのかわざとなのか分からないが、そんな声を出したあと、ニンジャは観念したように両手を上げた。

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