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第三章 最悪な休日
第五話 ごうとう
しおりを挟む「……っ⁉」
とっさに背後にいたラルドの襟首を掴んで店の奥へと飛び込むように回避する。
「えっ⁉ えっ⁉」
ラルドを押し倒すような格好になり、何が起きたのか理解出来ていない奴が驚きと困惑の声を上げている。
しかしそんなことは無視してすぐさま起き上がると、片膝をついて身を低くした体勢で、店内に突っ込んできやがった車のほうに視線を向けた。
……ニュースによくあるような、ブレーキとアクセルを踏み間違えたとか、そんな事故か?
最初はそう思ったのだが、次の瞬間に車のドアを開けて勢いよく出てきた連中を見て、その考えが間違っていたことを悟る。
「死にたくなかったら動くんじゃねえッ!」
車から出てきたのは三人の黒い覆面をかぶった奴らだった。いずれも手に拳銃やライフルといった銃火器を持っており、防弾防刃チョッキと思しき装備を身に付けている。
「こっちに来いラルド」
「わわっ⁉」
「静かにしろ」
奴らに気付かれないように、ラルドの首根っこを掴んで物陰へと身を潜める。顔を少しだけ出して様子を伺うと、奴らは店内の客共や店員に銃を突き付けていた。
「勝手に動いたら殺すからな! おい店員! 死にたくなかったらこの中にありったけの金を詰め込むんだ!」
「は、はいっ」
おそらくは店長だろう、白髪混じりの中年のおっさんが、奴らに投げ付けられたバッグの中に急いでレジの金を入れていく。
「……これって、もしかしてコンビニ強盗ですか……?」
ようやく状況を理解したらしい、そばで一緒に隠れているラルドがひそひそ声で言う。
が、無視する。見れば分かることだ。わざわざ返答するまでもない。
それはそうとして……さて、どうするか。強盗共を潰すのは簡単だが、客共が大勢いる前でそんなことをやれば、嫌でも目立つ。そうなれば、後々さらなる面倒事に巻き込まれそうだ。
…………。
思考を巡らせていると、奴らの一人が男の客に銃口を向けるのが見えた。
「おいてめえ! いま魔法を使おうとしやがったな⁉」
「そ、そんなことはっ! 自分はただ床に手をついていただけで……」
「うるせえッ! ごちゃごちゃぬかすんじゃねえ!」
ズドンッ! 拳銃の引き金が引かれ、男の客が絶叫を上げる。周囲に飛び散った血を見て、他の客達も悲鳴を上げた。
「黙れ! 言うことを聞かねえなら、テメエらもこうなるだけだ!」
今度は天井に向けて撃つ。ライトが破損して暗くなり、いくつもの欠片が降りしきる音が響く。
死の恐怖が勝ったのだろう、
「ひ……っ」
という一瞬の声を出したものの、もう客達はそれ以上の悲鳴は上げなかった。
……ふむ。ライトが壊れて店内は一部暗くなっている。他のライトもどうにかして消せば、あるいは人目に触れることなく動けるか……?
いや、雑誌コーナーのでかいガラス窓があるか。あそこから差し込む外の明かりで、まだ目撃される危険性があるな。
とかそんなことを思っていると、そのガラス窓の向こうからけたたましいサイレンと赤色灯の光が目に入ってきた。
「テメエッ! 警察を呼びやがったなッ⁉」
強盗の一人が店長の胸ぐらを掴んで、その首に銃口を当てた。
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