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第三章 最悪な休日

第二話 がっでむ

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 次の休日。自宅にて。
 チリリーン。
 玄関のベルの音がして、覗き穴を覗き込む。

「おはーっ。レインー、遊びに来たよー」

 私服姿のトパだった。無視して家の中に戻る。
 チリリーン。

「レインー、もしかしてまだ寝てるのー? もうお昼過ぎてるのにー?」

 無視。
 チリリーン。

「これはあれかなー、居留守ってやつー? 駄目だぞー、可愛いクラスメイトが休日にわざわざ遊びに来てるのに無視するなんてー」

 無視。
 そうやって無視し続けていると、ついに諦めたのかベルの音も声もしなくなる。
 一応、念のために覗き穴から確認するが、そこにトパの姿はなかった。どうやら本当に諦めて帰ったらしい。
 しばらくして。再び玄関のベルが鳴る。

「ちわー。魔法通信販売会社でーす。ご注文の品をお届けに参りましたー」

 声の低めな女の声。覗き穴から見てみると、帽子を目深にかぶった黒いローブ姿の人間。帽子からはトパーズ色の髪の毛がはみ出ている。
 その手には、確かに注文していた、通販会社のロゴのある段ボールが持たれていた。

「……てめえ、トパ、どうしておまえがそれを持ってやがる」

 詰問気味に言うと、トパは顔を上げながら。

「あははー、バレちゃったー? もう、レインは全然騙されてくれないなー」
「おまえの変装が雑すぎるからだろ。そんなことより、質問に答えろ。どうしておまえがそれを持ってやがる?」
「さっき帰ろうとしたらねー、配達の人にレインの部屋はどこですかって聞かれたのー。それで機転を利かせて、あたしの部屋なんでここで受け取りますよー、って言って受け取ったんだー。ちゃんとレインの名前でサインしといたからねー」
「それは機転じゃなくて悪知恵って言うんだ! そんで配達の奴、あっさり騙されてんじゃねえ! あとでクレーム言ってやる!」
「まあまあ、配達の人を責めたら駄目だよー。他人を疑わない素直で善良な人ってことなんだからさー。あたしみたいにー」
「てめえが言うな!」
「だいたい通販頼むんなら、部屋に直接転送してもらえば良かったのにー」
「それだと追加料金が掛かるんだよ! 転送魔法陣を一々用意する手間もあって面倒だしな! くそがっ! こんなことなら転送してもらえば良かった!」
「後悔先に立たずだねー」
「だからてめえが言うな!」

 トパがニパーッと笑顔を咲かせる。

「それでどうするの? あたしを追い返して荷物を諦めるか、あたし共々受け入れるか、選ぶのはレインだよー」
「くそがっ!」
「もし受け入れなければ、この炭酸ジュースとスナック菓子はあたしの胃袋へと消えていきまーす。ごっつぁんです」
「ガッデム!」

 勢いの余り玄関のドアに拳を叩きつける。
 ドゴオッ!
 力を込めすぎたのだろう、その勢いでドアが破壊されて、ばったーんっと向こう側の地面に倒れていった。
 上手いことドアを避けていたトパが、空いた四角の横から顔を出す。笑いながら。

「お邪魔しまーっす」

 嬉しそうに、倒れたドアを乗り越えて入ってきやがった。

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