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第二章 ゾディアックにまつわる面倒な連中

第八話 ちょうさ

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 第二校舎の階段を上り、屋上へ。途中、すれ違った何人かの二年生から奇異な視線を向けられたが、無視して通り過ぎた。
 屋上に出て、まずはさっきの授業の時にいた訓練施設を探す。フェンスのある屋上の縁伝いに歩いていき、その場所を見つける。

「…………」

 訓練施設の上部にある窓ガラスから、内部の様子が確認出来た。さっき討伐したオーク達は既に片付けられており、床には血の跡は残っていない。
 視線をいまいる足元に移す。足跡などは残っていない。やはり解析魔法を使うか。足元にかがみ込み、コンクリートの地面に手をかざす。

「アナライズ」

 解析魔法。その場に残る魔力を解析し、一番最近に使われた魔力データを抽出する。

「…………」

 解析完了。メッセージウインドウに表示されたデータに目を通す。
 またもう片方の手元に、さっき既に解析しておいた、オーク達を呼び出した魔法陣の魔力データのウインドウを出現させる。
 二つのデータを見比べて、その二つが同一のものであることを確認する。

「…………」

 おもむろに立ち上がり、階段のドアのあるほう、いわゆる塔屋へと声を掛ける。

「いるんだろ、ストーカー女」
「…………」

 塔屋の陰からサフィ=ルーブが姿を見せる。相変わらずあとをつけてきやがっていた。

「さっきのオーク達が出たトラブルについては知ってるな?」
「……友達から聞いたわ。誰かが既に討伐したことも。友達は先生達が倒したんじゃって言ってたけど、あなたがやったんでしょ?」
「……」

 答える義務はない。代わりに、いま調べた魔力データのウインドウをサフィへと飛ばして見せる。

「右が、そのオークを出した魔法陣の魔力データ。左がいまここに残っていた魔力データだ」
「……一致してるわね」
「その魔力データに見覚えはないか?」
「……魔力データなんて、魔法絡みの事件の捜査でもない限り、普通調べたりしないからね。見覚えなんてないわよ」
「……」

 まあ、そりゃそうだわな。

「なら質問を変える。オーク達を出せるくらいのその魔力の質に、心当たりはないか?」
「……その質問もあまり意味はないわね。オークくらいの召喚魔法なら、ランクはBかCくらい。ある程度の実力があれば使えるわ。この学園の中なら、それこそ何人も」
「……」

 それも、その通りだ。
 そこでサフィはジッと見つめてきて、言ってくる。

「このくらいのこと、レイン君ならわたしに聞かなくても分かるはずよね。なのにわざわざ聞いてきた。……はっきり言ったらどう? わたしの知り合いにオークを呼び出した犯人がいるんじゃないかって」
「なら単刀直入に聞こう。ゾディアックか、その関係者の中に、今回のトラブルを引き起こした奴がいるんじゃないか?」
「…………」

 ある程度予期していたのだろう、言葉を聞いたサフィは笑い飛ばしたりせずに、真剣な顔だった。

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