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第二部 炎魔の座

第百三十九話 【第二部 炎魔の座】 【完】

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 そして一通りの契約作業が済んだとき、エイラが俺に言ってきた。



「あれ? シャイナは契約しなくていいの?」

「あ、いや俺は……」



 俺が答える前に、アカが言った。もしかしたら、なにかしら察していたのかもしれない。



「申し訳ありませんが、シャイナさまとは契約出来そうにありません」



 エイラが疑問の声を漏らした。



「え……?」

「シャイナさまは光魔の神格魔法を、一部ではありますが与えられています。その影響によって、他の種類の魔法とは契約出来ないのです」

「そうなんですか……?」

「はい。神格魔法を与えられているシャイナさまは、位階こそ光魔導士ですが、一部的には光魔継承者と同様の扱いになるからです」

「光魔の継承者……」

「はい。よって、申し訳ありませんが契約出来ません」



 俺はアカに言った。



「気にすんな。エイラも気にしなくていいぞ。俺なら光魔法だけで充分だからな、わはは」

「「…………」」



 そして俺達は再び人間界……帝国へと戻っていった。



 

 その後。とりあえず各人がそれぞれどうなったかというと。

 まずフリート一味だが、帝国領内のどこかに新たな隠れ家を作って、そこにいるらしい。帝国との協力態勢の対話を続けていくには、そうしたほうが都合が良いとのことだ。皇帝側もそれについては了承していた。



 次にサラは、帝国の街に居留することになった。フリートの動向を見張るのには、そのほうが好都合とのことだった。それで安い宿を探していたので、それならということで俺の紹介でルナの孤児院に居候することになった。

 サラのことを孤児院の子供達は喜んでいたし、ルナや院長も歓迎していた。サラ自身は世話になってばかりでは済まないといって、孤児院の家事を手伝ったり、ギルドでクエストを受けてその報酬の何割かを孤児院に入れているようだった。



 ライースはというと、何故だかフリート達と一緒にいることにしたらしい。最初は行く当てがなくて居候していたが、なんか雑用をこなしているうちにいつの間にかそうなっていたらしい。フリート達は正直面倒な奴が増えたと思っていたようだが、取り立てて追い出そうとはしなかったみたいだ。追い出そうとするのも、疲れて面倒なだけなのかもしれない。



 ザイに関してはもっと不思議なことに、帝国騎士団の雑用係にされていた。リダエルやウィズの弁では、ザイは帝国を襲撃した前科があるため、それに対する処遇ということでそうなったらしい。身体がデカく、それなりに強いため、色々な雑用や魔物の処理などをこなしているそうだ。いまでは騎士団の連中とも馴染んでいるらしい。



 アカとアオとクロはというと、魔界の以前の炎魔の領域に戻って、領域内の再統治をおこなっているらしい。また日々炎魔法の契約希望者が後を断たないため、それへの対応もしているとのことだった。



 そうそう炎魔法に関してだが、人間界に戻ったサムソンが、アカが炎魔代行になったことを帝国に報告した。それから帝国のお触れを介して、人々に炎魔法が復活して再契約可能になったことが知らされた。帝国や俺の目的の一つが炎魔法の復活だったので、それが達成されたことになる。



 またさっき少し触れたが、帝国とフリートの協力態勢についてはいまだに決まっていなく、対話が続けられている状況だ。まあこれに関しては、フリートの性格上すぐに決まるとは思ってはいなかったから、半ば予想通りではあった。とりあえずはこのまま対話を続けていって、時間は掛かるとしても協力態勢に持っていくつもりだ。



 そして俺はというと……。



「シャイナー、お風呂の時間ですよー、お背中流してあげるからねー。ついでに身体の隅々まで洗ってあげるよー、ぐふふぅ」



 エイラの声。邪悪な笑いが込もっていやがる。俺はいまだに車椅子に乗っていた。



「あれ、シャイナー? んもー、どこに行ったのー? 照れなくてもいいんだよー」



 車椅子のハンドリムを操作してエイラの捜索から身を隠す。いま俺達はサラと同様、ルナの孤児院に居候していた。

 と、廊下の陰で息を潜めていたとき、トントンと誰かが肩をつついてきた。びっくぅ! 恐る恐る振り返ると、子供達……男の子のルドと女の子のチルがいた。



「な、なんだ、ルドとチルか……」

「「なにしてんのー、シャイナー?」」

「いいからおとなしくしてろ。あとでうまいお菓子やるから」

「「え、本当ー⁉」」

「ああ、本当だから……」



 二人がニンマリとした。ぞくり。悪魔的な笑み……っ。



「「エイラーっ! シャイナならここだよーっ!」」

「あ、おい……っ!」



 ざわっ。背後に不気味な気配。またも恐る恐る振り返ると……。



「シャイナぁ、見ぃつけたぁ~」

「ちょっ、やめっ、今日は風呂はいいから……っ」

「溜まってる汚れもなにもかもすっきりさせてあげるからねぇ~」

「やめっ、車椅子を押していくなぁ……っ!」

「「シャイナー、お風呂から出たらお菓子ちょうだいねー」」

「鬼畜かおまえら……っ⁉」



 廊下の向こうでサラやルナや院長の声が聞こえてくる。



「やれやれ、今日もシャイナどの達は元気ですね」

「……エイラどのは積極的だなぁ……」

「ルナどの?」

「い、いや、何でもないっ!」

「ルナ、サラさん。エイラさん一人では大変でしょうから手伝ってあげなさい。あと当院で間違いが起こらない為にも」

「あ、はい、分かりました院長」

「はっ、院長どののご命令とあらばっ!」

「サラさん、敬礼はしなくていいですよ」

「はっ! 私は当孤児院にお世話になっている身ゆえっ」



 ある意味、俺史上最大の危機が訪れようとしていた。



 

 ……………………。

 これは炎魔の座を争奪した、壮絶な戦いの記録と記憶。

 そしてとある魔族と国が手を取り合うのは、もう少し先の話。

 ……………………。



 

【最強のFランク光魔導士、追放される】

【第二部 炎魔の座】

 

【完】



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