【第二部完結】 最強のFランク光魔導士、追放される

はくら(仮名)

文字の大きさ
上 下
103 / 235
第二部 炎魔の座

第十五話 ……そうだった……師匠が使えるのは……

しおりを挟む
 
 ドゴンッ! バゴンッ! 森のなかのいたるところに、ロリババアが振り下ろした拳骨でできた穴が増えていく。このロリババア、マジで殺りにきてんじゃねえか⁉ と思わず文句を言いたくなる。


「おい! ロリババア! この森を穴だらけにする気かよ⁉」
「おまえが避けまくるからだろうが。そんなこと言うなら、素直に可愛いお師匠さまの拳骨をくらえよ」
「ぜってー嫌に決まってんだろうが! あと自分で可愛いとか言うな! ロリババアのくせに!」
「かっちーんっ」


 ロリババアが振り下ろした拳骨が、しかし今度はいままで以上の大量の土を舞い上がらせて、地面に隕石が落ちたときのようなでかいクレーターを作る。その衝撃に巻き込まれて、周囲の木々がクレーター内に倒れ込んでいった。
 どうやら少しだけ怒ったらしい。


「相変わらずのばか力だな!」
「ただの基本的な強化魔法だよ。まあ、ちょっぴり細工してるけどね」
「くそがっ!」


 その『ちょっぴりの細工』がメチャクチャなんじゃねえか!
 なおも追いかけてくるロリババアの攻撃をかわし続けているとき、腕に抱いていたエイラが言ってきた。


「シャイナっ、わたしを下ろしてっ。わたしなら大丈夫だからっ。そうすれば……」


 より簡単に回避できるようになるだろうし、反撃もしやすくなるだろう。エイラはそう言いたいのだろうが。


「そう言われてもな、そうする余裕がねえんだ」
「……っ⁉」


 拳骨だけではなく蹴りまで繰り出し始めたロリババアが、笑いながら言ってきた。


「はっはっはっ。いつも言ってただろ。戦いに勝ちたければ、相手が本気を出せないときを狙えって」
「うっせーよっ! ただの卑怯じゃねえかそんなの!」
「卑怯上等。姑息上等。いつの時代も勝った奴が正義で、負けた奴が悪なんだよ。歴史を振り返れば分かるだろ?」
「うっせーロリババア!」


 つまるところ、エイラを抱いているからこそ、弱体化してると思われてるわけだ。悠久の時を過ごし、卑怯で姑息なロリババアの考えそうなことだ。
 だが、相手がそう考えているなら、それを逆手に取ればいい。


「エイラ! 魔力強化の魔法を頼む!」
「……! うんっ! マジックアップ!」


 全身にまとっていた光の魔力が一際強く輝き、力がみなぎる感覚。
 それと同時に。


「グロウアローズ!」


 身体の周囲の空中にいくつもの魔法陣を展開させて、大量の光の矢を放つ。
 エイラのサポートがあるからだろう、それらの光の矢は通常時よりも一回り大きく、威力も底上げされていた。


「わあっ。マジかよ。大事なお師匠さまを殺す気かい?」


 とかなんとか言っているが、ロリババアは光の矢の群れのわずかな間隙を縫うようにして、無傷で避けながら迫ってくる。


「ふざけやがって! 殺しても死なねえような奴が言ってんじゃねえよ!」
「なっはっはっ。だてに長生きしてないからねえ」


 楽しそうに笑いながら、ロリババアが拳を振りかぶる。見た目こそ華奢な子供の腕だが、当たったら最後、マジで死にかねない。かすっただけでも、相当なダメージを食らうことは確かだ。
 くそっ! また技を借りるぜ、サムソン!


「瞬身斬!」
「…………!」


 一瞬にしてロリババアの背後へと回り込む。ロリババア自身、初めて目にする技のはずで、少なからず驚いているのが伝わってくる。
 このロリババアに同じ手が何度も通用するはずがない。このチャンスは絶対に逃すわけにはいかない。


「食らいやがれ! ディヴァイングレイ……」


 戦いを終わらせるための魔法を使おうとした刹那。背後からロリババアの声。


「まったく。弟子の成長には驚かされるね。いつの間にそんな技覚えたんだい?」
「……っ⁉」


 マジか⁉ このロリババア、あの一瞬で瞬身斬を真似しやがったのか⁉ いやあり得ねえ! 真似自体はできるとしても、いま、ロリババアの動きを絶対に見逃さないために、瞬き一つすらしていなかったんだぞ!
 その視界のなかに、ロリババアがなにかしたような動きも気配も、微塵もなかった。
 それこそ、時間を止めでもしない限りは……。
 …………っ……そうだった……師匠が使えるのは……。


「わたしを感心させたご褒美だ。痛みを感じないように、一撃で沈めてあげよう。はあああっ!」


 師匠が気合を込めて、拳を振りかぶる。いままでよりもさらに力を込めた、少なからず本気の混ざった一撃。直撃すれば、確かに即座に気絶してしまうだろう。
 回避する時間も、防御する余裕もない。負け……。


「プロテクトバリア!」


 エイラの声。瞬間、目の前に張られる透明な防護の壁。そのバリアが師匠の拳を受け止める。


「「!」」


 師匠の一撃は強力だ。いまのエイラの防壁では、完全に防ぐことはできず、すぐに亀裂が入って粉々になってしまう。
 だが。


「シャイナ! いまだよ!」


 たとえ一瞬でも時間を稼ぐことができるのなら。


「サンキュー、エイラ! ディヴァイングレイヴ!」


 地面から巨大な光の十字架を出現させて、眼前に迫る師匠の身体へとたたきつけて、高い木々が見下ろす空中へと押し上げた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】 (大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話) 雷に打たれた俺は異世界に転移した。 目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。 ──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ? ──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。 細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。 俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...