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第七十八話 つじつま
しおりを挟むロウがつぶやくように言う。
「でも、もしそれが本当なら、あの三人を襲ったのも、やっぱり……」
「あんたも察しがついたらしいな。奴はあいつらを殺せなかったんじゃなく、わざと殺さなかったんだとしたら? あいつらはあくまで通り魔だと思わせるカモフラージュで、標的以外は殺さないっていうプロ意識があったとしてもおかしくないんじゃないか」
「…………」
それは以前に推理した内容をさらに補強する考えだった。確かに説得力はある程度はあり、言われてみるとそんなような気もしてくる。
つじつまは合っている……ように思われる。だが、だからこそ、ロウはこうも思ってしまう。
(なんか……つじつまが合いすぎてるというか……都合が良すぎるというか……)
最初と二回目を経て、自分達がこのような憶測に至った理由、根拠、それはただ単に通り魔がロウよりもルタのほうが強いと判断して襲ったから。そしてわざわざ強いほうを先に狙ったのは、そっちが本当の標的だったから。
……というのが、この憶測の柱である。しかし……ロウにはなにか腑に落ちない感覚があった。あまりにも都合良く判断しているような、表出された状況を自分の考えに沿うように解釈しているような、そんな感覚。
そこで、はたとロウは思い至る。もしこの前提条件を間違って認識しているとしたら……?
「ルタさん、ちょっといい……」
ちょっといいですか? ロウがそう口を挟もうとしたとき、ニーサが小首を傾げながら聞いてきた。
「お二人とも、さっきからなにを話しているんですか?」
彼女には聞こえないように小さな声だったとはいえ、不思議には思われたようだ。ルタはニーサのほうを向くと、取り繕うように答えた。
「ちょっとな。事件に関して話してたんだ」
「もしかして、わたしには話せないことなんですか?」
「まあ、な。確証があるわけじゃねえから、下手に人に話すわけにはいかねえんだ」
「むうー」
彼の返答に、ニーサは少しだけ頬を膨らませる。
「ロウさんには話すんですね?」
「ああ、まあ、こいつは一緒に襲われた奴だしな……」
「むうー……」
なおも納得していないような顔をする。彼女のその様子は構ってもらえなくてすねているネコのようだった。
「なんか……ズルいなあ」
「そんなこと言われてもな……」
困ったようにルタはロウのほうを見やる。あんたからもなにか言ってくれ、と助け船を求めているようだった。
しかしロウはなにも答えず。
「…………」
と二人のことを、景色でも眺めているように見つめ返すだけだった。
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