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第五十七話 わーったわーった

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 そして一通りの説明が終わったところで、サージが自分の頭に手を当てながら。

「なるほど……それでこれ以上の追跡はもう危ないだろうということで、我々に連絡した、と」
「ああ」
「なるほど、分かりました。とはいえ、いくつか確認も兼ねて質問してもいいですかな」
「なんだ? 分かる範囲で答えるぜ」
「ありがとうございます。では……」

 それからサージは二人にいくつか聞いていく。
 本当に通り魔の顔は見ていないのか?
 スモークガスを使ったあとの通り魔の逃走した方向に見当はつかないか?
 通り魔の戦い方や身体の特徴などはなかったか? あるいは似た者に心当たりはないか?
 といった質問を。
 しかしルタもロウも。

「悪いな」
「すみません」

 いずれも心当たりがなかったため、首を横に振るしかなかった。ルタが付け足すように言う。

「まあ、もし分かってたら、そのまま奴を追跡してるしな。心当たりのある奴の居場所を突き止めたり」
「…………」

 彼のその言葉に、サージがため息を吐く。

「やれやれ、ルタさん、一応行っておきますが、我々に黙って独断専行はせんでくださいよ。相手は人を殺そうとしてる通り魔だ、正体がバレたらいったい何をしでかすか分からんのですから」

 自分の息子に言い聞かせるように警告する。年齢的には確かに親子くらいの差があり、出会ってからまだ短時間ではあるものの、サージはルタとロウに親近感を覚えたのかもしれない。
 サージの言葉に、ルタは、そんなこと言われてもな、というように肩をすくめてロウを見る。注意されたとしても、通り魔の行方が分かったら彼は追いかけるつもりらしい。
 それが察せられたので、ロウもまた彼に釘を刺すように。

「サージさんの言う通りです。相手は危険な人なんですから、なにかあっても無茶しないで、官憲に連絡しましょう」
「……やれやれ。わーったわーった」

 二人に注意されて、ルタは仕方なく了承したのだった。
 それから三人は再び馬車に乗って官憲の事務所へと戻っていく。実況見分で少し疲れたのか、ルタもロウもしゃべらず、ただ客室の座席に身体をもたせながら流れていく景色を眺めていた。
 聞きたいことは聞き、二人がしゃべらないこともあり、サージもまた無言のままだった。しかし顔はメモ帳を見つめていて、いままでに得た情報からいろいろと考えているようだった。
 そんなこんなで三人は官憲の事務所に到着し、馬車を降りる。サージを先頭に敷地内を歩いて事務所の入口に到着した。

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