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第七話 メシ
しおりを挟む心底うっとうしそうな顔をする彼の隣を彼女は歩き続ける。どうしたものかと彼は考えて、なにか思い付いたように彼女に言った。
「そんじゃ、メシおごってくれよ。この先に知り合いのメシ屋があっから」
「ご飯なら、さっきのお肉を食べればいいじゃないですか?」
本当はそうするつもりだったのだが、彼女を早いとこ追い払うためとは言えず。
「いまはメシ屋で食いたい気分なんだよ」
彼女は彼をジッと見て。
「なんか、うそっぽい」
「ソンナコトナイヨ」
「なんでいきなり片言なんですか?」
「とにかく、メシおごってくれたらチャラでいいから。おれ、このあと用事あるし、あんたも早いとこギルドに行かなきゃだろ」
「そんなこと言って、あたしを追い払うつもりですね」
「ギクッ」
「やっぱり」
彼はため息をついて、やれやれと首を振る。
「あのなあ、いくら助けたっつっても、しつこいのもどうかと思うぞ」
「だって……」
「とにかく、これでチャラにしねえってんなら、さすがに官憲に突き出すからな。変な女にストーカーされてるって」
「むう……」
彼女は口を閉ざしてしまう。ややあって。
「……分かりましたよ……あたしもストーカー扱いはされたくないですし……」
「ほんとに納得してんのか?」
「してますからっ」
「だといいけど」
彼女の顔つきは納得してはいないように見えたが、とりあえずはそういうことで話がついた。そしてちょうどそのとき目的の定食屋に到着したらしく、彼が足を止める。
「ついたついた。ここがそのメシ屋」
ガラスのついた木の引き戸を開けて少年がなかに入る。少女も続いて入ると、カウンターの向こうにいた中年の男が、
「らっしゃい!」
と威勢よく声をかけてきた。その男は少年が誰か気付いたらしく、料理をしていた手をいったん止めると。
「おう、ルタじゃねえか!」
「こんちは。昼メシ食いに来たぜ」
「はっはっ、もうとっくに昼は過ぎてるけどな! ん……?」
そこで男はルタのそばにいるロウにも気が付いたようで。
「おいおいどうした、女連れたあ、ルタも隅に置けねえなあ」
「勘違いすんな。森に行ったら偶然この人を助けて、そんで礼をするって言ってきかないから、仕方なくメシをおごらせに来ただけだ」
「なんだ、おめーがおごってもらうのかよ⁉」
「そうだよ! おれは日替わり定食な」
そこでルタはロウに振り返り。
「あんたはなんに……って、そうか、あんたは初めて来たもんな」
「あ、はい」
「ならちゃんとメニュー見ねーとな。そこのテーブルがあいてるから、そこに座ろうぜ」
「あ、はい、分かりました」
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