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blue 3
しおりを挟む☆side-he☆
「息は止めずに、ゆっくり吐きながらやるんだ」
「う、うん…」
「じゃあラスト1回な」
自宅リビングの隣りに設られたトレーニングルーム
普段は俺しか使わないこの場所を、彼女のリハビリのために使う日が来るなんて想像もしていなかったが
「痛みは?」
体が温まった風呂上がりに、傷ついて動かない左腕や入院生活で筋肉の落ちた両足の筋トレをさせること30分
「ちょっとだけ…でも、だいぶ腕が上がるようになったかも」
左手に握った小さなダンベルを見つめて微笑んだ彼女の額には、うっすらと汗が浮かんでいる
「よし、今日はここまでにしよう」
タオルを渡して軽く頭を撫でてやりながら、ずっと言えずにいた言葉を絞り出すようにして口にした
「傷を、見てもいいか?」
「えっ…」
驚いた顔をして俺を見上げた彼女の肩に手をかけると
「ま、待って!」
慌てた様子で背中向けてうつむいてしまった
「待てない」
「な、なんで?」
「なんでって…家でリハビリさせる以上は傷の状態を知っておきたいし」
入院中から頑なに傷を見せたがらない彼女の気持ちは痛いくらいにわかってはいたが
「なんででも…だ」
「見せなきゃ、ダメ?その、けっこうひどい傷だから」
右手で傷の辺りを触りながら、彼女は今にも泣き出しそうな声でつぶやいた
「とりあえず、寝室に行こう」
「えっ?あっ!」
一段と軽くなった細い体を抱き上げて、2階の寝室に連れて行きベッドにそっと下ろしてやると
「ちょっと待って、わたしまだ…」
彼女のパジャマを脱がせ始めた俺の手を、必死で払いのけようとした
「わかってるよ、べつにそういうことがしたいわけじゃない」
心にもないことを言いながら、肩につけられたサポーターをそっとずらすと
「!!」
「ね、すごいでしょ?」
えぐれた皮膚を縫い合わせているひきつれた傷痕が目に飛び込んで息を飲んだ
生まれてすぐに実の父親につけられた背中の傷といい
いったいなぜ
彼女ばかりがこんな目に合わなければならないのだろう
思わず唇を噛み締めた俺の歪んだ表情に気がついたのか
「もういい?」
怯えているような声で言いながら、パジャマを着直そうとした細い指先を握ってそっと唇に押し当てる
「あなた?」
身体に傷痕が残ろうが、髪が短くなろうが変わらずに
「おまえは…綺麗だよ」
「えっ?ちょっと、待って」
無理をさせてはいけない、と頭では理解していても我慢できないくらい
彼女を抱きたくて仕方なかった
※次回に続きます
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