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しおりを挟む⭐︎side-she⭐︎
「姉さん!!」
一般病棟の個室に移されてから数日後
「あのう、弟さんだとおっしゃる方がいらしてるんですけど…」
ずっと付き添ってくれていた彼が着替えを取りに帰ったのと入れ違いで病室に入って来たのは、年配の看護師さんと若くてきれいな男の子だった
「えっと、はい…弟なんです、たぶん」
「え?」
「いえ、なんでもありません!弟です」
昨日お見舞いに来てくれた桜井さんから、だいたいのことは聞いていたけど
「心配したんだよ。姉さんにもしものことがあったら、ボク…」
ベッドで寝ていたわたしの手を取り、大げさ過ぎる演技で瞳を潤ませているサラサラの金髪が印象的な青年は
なんて言うか
彼とは完全に真逆のタイプの、例えて言うなら人懐っこい子犬のような人だった
「はじめ…まして」
まったく似ていないわたしたちの関係を怪しんでいた看護師さんが病室を出て行ってから挨拶をすると
「え~!?きょうだいなんだから、はじめましてはおかしいでしょ?」
自称わたしの弟くんはベッドの端に腰を降ろし、天使のように可愛いらしい顔で笑った
「あの、ほんとにいいんですか?わたしなんかのためにお時間いただいて」
「ナナちゃんのお願いを断るわけにはいきませんから」
「ナ、ナナちゃん?」
「そう、桜井奈々の幼なじみの吉澤海と言います。うみって呼んでください、お姉さん」
あ、ああ
桜井さんの下の名前はナナって言うのね
「よろしくお願いします、うみ…くん?」
意識を取り戻してから、真っ先に心配になったのは子どもたちのこと
あの時、子ども部屋で寝ていたサラと小学校で授業を受けていたハルは無事で、今はわたしの両親の元にいるとわかってほっとしたのだけれど
その次に気になったのは
本番まで1ヶ月を切っていたはずの彼の防衛戦のこと
「試合なんてどうでもいい…ボクシングなんかしてる場合じゃねぇよ」
そう言って、わたしの傍から片時も離れようとしない彼の気持ちはとっても嬉しいかったのだけれど
「でも、今まであんなにきつい減量や練習をして頑張ってきたのに…」
「どうでもいいって言ってんだろ」
そんなやり取りをしていると、ちょうどお見舞いに来てくれていた桜井さんがある提案をしてくれた
「試合を放棄すれば、必ずマスコミが理由を探ろうとしますよ。今まで報道されていないことで事態が落ち着いている可能性もありますし、何も知らないお子さんたちへの影響を考えても普段通りに行動されるのが最善だと思います」
「馬鹿言うな、俺がいない時にまた何かあったらどうするんだよ」
「だったら、奥様にボディーガードをつけましょう。ちょうどいい男を知っているので明日にでも連れて来ます…病院には奥様の弟とでも言っておいてください」
それが、子犬のうみくんだった
※次回に続きます
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