天使がねたあとで

marble 4

☆side -he⭐︎




「ずいぶん浮かない顔してんな、チャンピオン」


ジムのスポンサー主催の食事会のあと、旧知の先輩ボクサーから声をかけられドキリとした


「俺はいつもこんな顔です、すみませんね仏頂面で」


「体調でも悪いのか？」


「だから、なんでもありませんて」


「じゃあ嫁さんと喧嘩か、あんな可愛いらしい嫁さん泣かせるなよ」


勝手にそう決めつけられてムッとしたものの、情けないことに思いあたるフシがないともいい切れない


結婚してもうすぐ７年


2人の子どもにも恵まれ幸せそのもの、と言って間違いないのだが


プロボクサーという特殊な職業の俺の体調管理と幼い子どもたちの育児と家事全般を365日手を抜かずに頑張っている彼女は当然


「疲れてる、よな」

　
ほんとうは


試合前でもない限り、毎日でも透き通るように白く柔らかい体を抱いて眠りたいと思っているのに


気がつけば


子どもたちを寝かしつけたあとも細々とした家事に追われている彼女を誘うことに、気が引けてしまうようになっていた


だけでなく


以前のように肌に触れるだけで体中に電流が走ったような反応を見せることもなく、無理して抱かれているような感じさえしていることに


どうしようもない焦りを覚えて狼狽えてしまうなんて



情けない、以外の言葉が見つからなかった




※次回に続きます